【ネタバレ配慮】アニメレビュー『グランベルム』(感想・評価)

【ネタバレ配慮】アニメレビュー『グランベルム』(感想・評価)

グランベルム』をネタバレなし評価(未視聴の方向け)とネタバレあり感想(視聴済みの方向け)でレビューします。

※ネタバレあり感想は、ページ最下部に掲載。

 

おすすめ度:★★★☆☆(67点)

 

一言感想 :少女たちの想いが剣に宿る。「感情」を重視したロボバトルは新鮮でした

 

  グランベルム

評価(5段階・要素別)

カテゴリ:ファンタジー・ロボット

総評価:★★★☆☆(67点)


シナリオ:★★☆☆☆

キャラクター:★★★☆☆

演出:★★★★☆
(音楽:★★★★☆ 映像:★★★★★ アイデア:★★★★☆)

※評価の理由は、ページ下部に記載しています。

 

『グランベルム』レビュー「感情が燃え盛る、少女たちの”グランベルム”」

 

”なにもない”少女は、戦いの果てに何を得る。

 

今回紹介するのは『グランベルム』。

『Re:ゼロから始める異世界生活』の監督等のスタッフによるオリジナルアニメーションです。

 

超あらすじは次の通り。

なにもない事が悩みの平凡な少女、小日向満月。

ある日、満月は、魔女たちが世界で唯一の魔術師になるために戦いあう「グランベルム」に巻き込まれてしまう。

 

なすすべのない満月を助けてくれたのは、謎に包まれた少女・新月。

 

新月との出会いは満月に、そして「グランベルム」の行く末にどのような運命をもたらすのか。

 

今回は、この作品がどんな作品なのかを3つのポイントで紹介します。

 

◎ポイント1「作風」:グランベルムは少女たちの価値観と想いがぶつかる場

まずは、作風から紹介します。

あらすじで書いたとおり、この作品で重要となるのが「グランベルム」です。

 

魔力を持った9人の少女たちが、アルマノクスというロボットに乗り戦うバトルロイヤル。

勝者は膨大な魔力が与えられ、世界で唯一の魔術師になれるという。

物語の尺の内、1/3程度はこのグランベルムに割かれることになります。

 

▼SDロボ風の人形「アルマノクス」に搭乗して、少女たちは戦うグランベルム

迫力の映像で描かれるグランベルムですが・・・単なる戦いの場ではありません

 

9人の少女たちは、それぞれに因縁を持った相手がいます

それは、過去からの幼馴染だったり、様々です。

そんな因縁の相手が敵となり、ただ戦い合うだけで終わるわけがない。

戦いは次第に、お互いが相手に感じていた”想いのぶつけあい”へと転じていきます

 

だからこそ、グランベルムの場はセリフに支配される

攻撃と共に繰り出される想いの乗ったセリフの応酬が、見応えを増幅させていきます。

 

物語が進むにつれて想いと価値観の削り合いは加速していく。

終盤のバトルは特に見ごたえがあり手に汗握りました。

 

▼キャラ紹介 左:アンナ・フーゴ(CV:日笠陽子)、右:新月 エルネスタ 深海(CV:種崎敦美)グランベルム (2)

セリフが重要となる作風ですから、キャスト陣も実力派揃いです。

キャスト表には日笠陽子さん、悠木碧さんなどの色々なアニメで見かける方々が並びます。

 

個人的に特に好きだったのが「新月 エルネスタ」役の種崎敦美さんの演技です。

過去の役柄は『響け!ユーフォニアム(鎧塚みぞれ)』、『青春ブタ野郎はバニーガールの夢を見ない(双葉理央)』など。

 

基本的にはクールな役なのですが、時々、隠しきれない感情の発露がある。

そういったシーンでの「取り繕いながらも取り繕いきれない」といった難しい表現がぐっときました。

 

▼新月はクールだけれど冷たくない、優しい少女グランベルム-11話 (11)

◎ポイント2「キャラ」:満月と新月、2人の出会いがもたらすもの

続いてはキャラクターです。

当然ながら、作中ではグランベルムに参加している9人の少女たちが主に描かれます。

 

ツンデレ、クーデレ、ヤンデレ、得体のしれないなにか。

バリエーションに富んだキャラクターたちが登場します。

 

なかでも注目したいのは、やはり主人公である満月と新月でしょう。

 

満月は、自分に”なにもないこと”を悩みのタネとしている平凡な少女です。

それが新月と出会い、グランベルムに参加し、考え方が変わっていく。

”なにもないこと”を満月がどのように捉えていくのかが見所です。

 

▼左:主人公・小日向満月(CV:島袋 美由利) 髪色は派手な少女2話_私服

一方で、新月。

新月は魔力の扱いが上手いという魔力に愛された少女です。

平凡からはおよそ遠い立ち位置の新月ですが、私生活などのプライベートは全て謎。

 

謎に包まれた彼女が、グランベルムという戦いに参加した理由

それが彼女というキャラクターを見る上での核になっています。

 

そして、満月と新月が出会う。

似ているけれど”最も遠い名前”を持った2人の少女が出会うことで、物語が動き始めます。

 

注目すべきは2人の関係性の変化です。

ただ助けられるだけの存在だった満月が、新月と言葉をかわす中で特別な存在へと変わっていく

満月にとっての新月もまた同様です。

 

変化した関係性は、2人の内面にある価値観へも影響していく

新月と満月の交流が生む変化の過程がとてもエモい作品でした。

 

詳細は本編をご覧ください。グランベルム-8話 (11)

 

◎ポイント3「映像」:行間に込められた少女たちの感情

最後に紹介するのは映像です。

とても多くの情報がつまっている点が魅力だと思います。

 

日常パートもバトルパートも同じなのですが・・・

画面に様々な意味が込められているんです。

 

キャラの立ち位置の対比や、感情の動き。

少女たちの絶えず変化する内面を、映像が巧みにすくい取っています。

 

例えば、次の画像。2話_光と影

グランベルムという陰の戦いに身を置く新月

対照的に、平凡でささやかな幸せを感じる日常に身を置く満月

二人のあり方の違いをコントラストで鮮やかに表現しています。

 

このような、映像に込められた想いを追っていくのが楽しい作品です。

追っていたらいつの間にかほぼ全話の感想を書いてしまいました・・・結構ハマリます。

 

続いて、ロボットアニメの華であるバトルシーン

こちらも見応えがありました。

 

キャラの内面を反映した舞台背景。

セリフやBGMとタイミングが合ったロボットの動き。

想いのぶつかり合いであるグランベルムを盛り上げるために、バトルシーンもまた、少女たちの感情に寄り添っていたと思います。

 

▼中華系少女・寧々の当番回で舞台となる背景。雄大な自然が印象的グランベルム (1)

 

光線や煙などのエフェクトを多用していることで派手な映像となっている点も見過ごせません。

総じて、映像面は非常に楽しい1作だと感じました。

 

▼エフェクトも力が入っており、バリエーション豊か。下はどこかで見たような攻撃グランベルム-12話 (12)

△気になった点:エピソード不足による描かれるテーマの腹落ちしなさ

ここまで書いてきたように、この作品は多くのことにチャレンジしています。

テーマを描くこと。

ロボットバトル。

9人の少女の因縁の消化。

 

ただこの作品、1クールしかないんです

チャレンジの結果は・・・「魔女たちの闇鍋」といったところ。

 

見ごたえのある映像や、要所要所で光るシーンは多くあります。

 

しかし、根底を流れるテーマや主人公2人の価値観の部分。

ここについては、ちょっと描写不足やエピソード不足が否めない。多くを描こうとしすぎて、一つ一つが希薄になっているんです。

 

言いたいことは分かるけど、どうしてそんな心境になったの?

といった感じに、あまり共感が出来ない部分がありました

 

積み重ねたエピソードと共にテーマが描かれていれば、また違った感想になったと思います。

 

総評価と感想

少女たちの感情のぶつかり合いをロボットバトルに乗せる。

設定の作り込みもされている。

オリジナルアニメらしくアイデアは良かった作品です。

映像も素晴らしい。

 

一方で、これもまたオリジナルアニメらしいですが、色々やろうとしすぎてまとまりきれてないところがちらほらと・・・

風呂敷を広げたがまとめきれていない。そんな印象を受けました。

 

おすすめしたいのは、変わった作品が見たいというオリジナルアニメが好きな方や、ロボットバトルが好きな方

あとは感情のぶつかり合いによるバトルロイヤルということで『舞-HiME』シリーズが好きな方

魔法少女の戦いと舞台設定の考察ということで『魔法少女まどか☆マギカ』が好きな方も合うように思います

 

評価(5段階・要素別)の理由

カテゴリ:ファンタジー・ロボット

総評価:★★★☆☆(67点)


シナリオ:★★☆☆☆

記事の通り、多くをさばくチャレンジは成就せず。

テーマ性に共感しきれなかったのが厳しい。

要所要所のセリフの美しさやアイデアは光る。


キャラクター:★★★☆☆

主人公2人の関係性は好き。

サブキャラでは寧々姉が良きツンデレかつお姉さん属性ありという素敵なキャラだった。


演出:★★★★☆
(音楽:★★★★☆ 映像:★★★★★ アイデア:★★★★☆)

音楽は重厚な作りで作品の雰囲気に格を与えていた。

映像面は記事の通り。

情報を整理する技術とアイデアの光る非常に見応えのあるものだった。

 

ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想)

ここからは、徒然にネタバレありで感想を書き連ねます。

未視聴の方は、バックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

では内容に入っていきます。

 

第2話 感想「私がここにいるために 」

【シナリオ・キャラ面の感想】

1話では見えなかったシナリオ面の深掘りがようやく始まりました。

満月のバックボーンである「何者かになりたい」という想いが提示

今後、戦いを通じてどのように変遷するかが気になるところです。

 

新月はポンコツ要素が良い感じで出てきて、とても可愛かったです。髪型やら戦いへの思いやらが『リゼロ』のエミリアと似ている気がします。

 

さて、1話で破れたロサは、まさかの出番あり。

同系統の作品、『魔法少女まどか☆マギカ』や『仮面ライダー龍騎』などと異なり、即退場にならなかったのは気になるところです。

 

正直、キャラが多くちょっと渋滞を起こし始めている印象

今後は、オリジナルアニメらしい大胆な整理を期待したいところです。

 

【印象的なシーンなど】

・OPより。宝石の透き通ってる感と映り込みの表現が美しいです。

2話_OP

 

・私服が大変可愛い。特に新月。

2話_私服

 

・終盤のシーンで光→影への演出があるためか、光の使い方に気を配られていた印象。このシーンでは、光の差し込みや机の反射光が丁寧に描かれており、満月の順風満帆な世界が表現されているように見えました。

2話_光の表現

 

・ローアングルのショットが多めの回となっていました。個人的にはもう少しふとももが見たかった・・・

2話_ローアングル

 

・シンメトリーな構図となっているのが印象的。まんなかに鳥居を置いてその色を強めているあたりに、意図的なものを感じます。

2話_シンメトリー

 

・2話最カワシーン。種崎さんの演技と相まって完璧な可愛さ。

2話_可愛い

 

・「こんな心のきれいな人が、魔術師など目指すべきではない。」最近の花田先生の作品では、こういった上手いなと思わせる演出が入っている作品が多いように思います。こういうセリフは好きです。

2話_黒板

 

・意味の強い構図でした。影の側に踏み込もうとする満月がどのような運命に翻弄されるのかは期待です。

2話_光と影

 

第3話 感想「満月に鐘は鳴る」

【シナリオ・キャラ面の感想】

各キャラクターのバックボーン掘り下げが行われた回でした。

新月とアンナ、寧々と満月(妹の希望)は因縁があるようです。

 

一方で、関係性の外にある魔術師の九音の立ち位置が気になります。

基本的に他の魔術師との絡みが意図的に排されている彼女がどのように物語に組み込まるかは注目どころ。

 

ただ、いよいよもってキャラの渋滞が顕著になってきました。

各キャラの背景説明の順序に論理構成が見えず、整理されていな印象を受けます。

単発的な描写となっているような・・・

今後の持ち直しに期待したいところです。

 

【印象的なシーンなど】

映像的な面白さは控えめな回だったと思いますが、印象的なシーンをいくつか。

 

・単発的な背景のわりに書き込みすごすぎでは。びっくりです。

スクリーンショット (10)

 

・嬉しさが抑えきれず帽子が飛ぶというのは、良い演出でした。

スクリーンショット (11)

 

・おねロリとでも呼ぶべき斬新な組み合わせ。尊い。

スクリーンショット (12)

 

・閉塞感漂う構図。籠の中の鳥的な印象を受けます。

スクリーンショット (13)

 

・背景の雲、不気味さを醸し出す紫色がよく効いています。良い背景です。

スクリーンショット (14)

 

・ヒステリアンナおばさん。幼女戦記と出る番組間違えてませんか・・・?

スクリーンショット (17)

 

・煙エフェクトが冴えている。このカット以降のエフェクトは見応えあり。戦闘シーン前半はアップが多用されすぎていて見にくかったのですが、後半はいいバランスが取れており良いシーンになっていたと思います。

 

第4話 感想「風水師リンフェンフェン」

【シナリオ・キャラ面】

前半はバトル、後半は次回へのつなぎといった構成でした。

 

前半のバトルシーンは、参加人数が多いため群像劇形式。

トリックスター・遠隔攻撃・万能など、各機体の個性が見えてきました。

 

今回のバトルはエフェクトは美しいのですが、映像的にはやや物足りない印象でした。

人数が多いため、どうしても決めシーンの積み重ねだけとなり、フリが欠けているように思います。

なぜ満月がビームを察知できたのか。なぜ九音が寧々の場所を見つけられたのか。

それらの映像的説得力が少し弱かったです。

風景描写で間延びするカットが多かったのも少し気になりました。

 

後半は猛威をふるった寧々ビーム対策と、寧々の過去が描かれていました。

構成的には、今回と次回が寧々の当番回なのでしょう。

 

寧々の心情描写については、短い時間でよくまとまっていたと思います。

幼少期から魔術師としては忍ぶことを母から教えられてきた寧々。

しかし、結局は魔術師であることが明らかになってしまい、母は連れ去られてしまう。

そのような背景があっての最後の名乗りは、響くものがありました。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

・良エフェクト。幻想的サーチライトといった感じで、面白かったです

グランベルム (5)

 

・今回はコンテの解釈が所々変なカットが多い印象。↓具体例(握りこぶしが目立ってない)

グランベルム (1)

 

・歯茎フェチがいるんでしょうか。個人的にはナシ

グランベルム (3)

 

・怠惰ですね・・・

グランベルム (4)

 

第5話 感想「小さな少女の小さな願い」

【シナリオ・キャラ面の感想】

濃密なバトル回。

完全に主人公は寧々でした。

 

お母さんへの強い想いを力にして戦う寧々はとても応援しがいがありました。

前半では、寧々自らの才能により良い戦いを繰り広げる。

中盤では、まさかのアルマノクス第二形態も出現し、主人公ムーブ。

そして終盤では、満月の謎覚醒により無残に打ち破られる。

 

寧々が負けたのは残念ですが、一連の流れが美しく、キャラとしてはとても美味しい回だったと思います。

その姿により、満月にグランベルムの残酷さという楔を打ち込んだわけですが、これが物語後半にどう響くか。

気になります。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

総括して、非常に見応えのある回だったと思います。

特に良かったのはテンポ感と回り込み作画。

映像に上手く流れが作られており、心地よさの感じるバトル回でした。

 

・とても中国

グランベルム (1)

 

・九音の「しっ」というポーズがとても可愛い。衣装も可愛い

グランベルム (2)

 

・アルマノクスへの回り込み~満月回り込み~ラストは瞳にフォーカスしたバストショット。流れが美しいシーンでした

グランベルム (3)

グランベルム (4)

 

・土埃舞う舞台での戦いということでブラーをかけたのはハマっていたと思います

グランベルム (5)

 

・うざかわいいを体現する水晶。悪女も良いですよね

グランベルム (6)

 

・アルマノクス第二形態。シンプルに強さの比較が伝わるレイアウト。衣装も変わってお得です。短い命でしたが

グランベルム (7) グランベルム (8)

 

・今回は乗り手の描写にもこだわりを感じました。姿勢に存在感を覚えます

グランベルム (11)

 

 

・あ、負けたというシーン。空綺麗

グランベルム (13)

グランベルム (14)

 

第6話 感想「魔石」

【シナリオ・キャラ面の感想】

シナリオつなぎ回。

今回の見どころは、次の3点でした。

・設定の解説

・シナリオ構造の提示

・衝撃のラスト

 

まず、設定で明らかになったのは「ザ・ウィッチ」の存在と人形劇の童謡。

数々の魔女が目指す終着点である「ザ・ウィッチ」は今後物語にどう絡むのか。

人形劇の童謡によれば、グランベルムは継続するよう仕組まれている呪いのような戦いなのかも知れません。

童謡シーンの悠木碧さんの歌は良かったですね。今期放送中のシンフォギアでの歌とは真逆で妖艶な声色は、ぞくっとしました。

 

さて、そんな設定周りから派生するのが、シナリオ構造です。

今回の中盤では、新月と満月の対話により、二人の関係性がグランベルムの終結と継続を願う者という構造になりつつあるのが見えてきました。

 

なにもない満月が、グランベルムに価値を見出しつつある。それは、人形劇の童謡のように仕組まれていることなのかも知れません。

それに対し、新月が満月の内面にある思いやりという価値を見出すのは綺麗な対立構造でした

新月の語る、自分の理想像があるから成長していけるという価値観が満月に伝わっていくのかどうか。

それが今後の見どころでしょう。

 

そして、そんな新月が成長するきっかけとなったアンナが暴走する最終盤。

ED途中切りCパート演出、大好きです。

狂気に魅入られたアンナがどのように散るのか(確定事項)、期待しかありません。

そして、真面目な声色で遊ぶ次回予告・・・ストーキングという名のライフワークは名文だと思います。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

・夏服きた!なのに露骨に曇り空なAパート。あっ(察し)

グランベルム (1)

 

・九音ちゃん可愛い。あざとい

グランベルム (2)

 

・これは湯豆腐検定合格

グランベルム (3)

 

・コマ数多めな投げ技シーン。いい味を出す水晶さん流石です

グランベルム (5)

 

・何処と無く『宇宙よりも遠い場所』を思い出す対話シーン。この星空から、アンナに真実を伝える決心が固まったことがわかります

グランベルム (6)

 

・一瞬でこの存在感。水晶のラスボスムーヴは報われるんでしょうか

グランベルム (7)

 

・露骨な対比描写。個人的にはアンナを記号的に描きすぎている気がして少し苦手

グランベルム (8)

グランベルム (9)

 

第7話 感想「ミス・ルサンチマン」

【シナリオ・キャラ面の感想】

アンナの当番回。

彼女のの狂気を全面に出した戦闘がほとんどの尺を締めていました。

アンナの狂気と、新月の葛藤。それらがぶつかり合う様はまさに死闘。

見ごたえのある回だったと思います。

 

しかし、個人的にはナシな回でした。

気になったのは6話感想でも書いたとおり、アンナを記号的に書きすぎていると思います。

記号としては理解できるんです。

アンナが狂気に囚われた嫉妬も、新月の過去への憧憬からくる葛藤も。

 

ただ、それに共感ができない

全体的に作中での掘り下げ不足を感じます。

二人のすれ違いが生まれた過去が、視聴者には断片的な回想でしか伝わってこない。それは、物語ではなく単なる理由の説明にしかなっていないと思います。

 

こういった掘り下げ不足に、キャラの渋滞が響いているように思います。残りの尺で、九音と満月の物語を描ききれるのか。注視です。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

エフェクトと印象的な構図と動く作画が乱舞する力の入った回でした。

ただ、点で見れば凄いのですが全体の完成品としてみるとイマイチ物足りない

音楽や物語と一体になった演出、整理された映像のつながりの方向性といった「流れ」の部分がいま一歩だったように個人的には感じました。

 

・普通というセリフに笑顔で返せるようになったのは今後の展開に影響しそう

グランベルム (1)

 

・月が強調される構図が多い回。暗喩的側面があるかも知れません

グランベルム (2)

 

・毎回、舞台の描きこみが非常に凄い。今回はやはり火山

グランベルム (4)

 

・このカットのエフェクト(煙)はいい味を出していました

グランベルム (5)

 

・このシーンの演舞も美しい。この機体ならではの動きです

グランベルム (9)

 

・メ○ローア。反属性はロマン

グランベルム (10)

 

・帰れないあの頃。こういった描写が物語として提示されていればぐっと来たんですが

グランベルム (11)

 

第8話 感想「魔術師になるということ」

【シナリオ・キャラ面の感想】

次回への布石と種明かし回。

今回は、次の内容をさばく濃密な回でした。

・水晶と九音の因縁

・新月と満月のチームワーク向上

・寧々姉による世界の秘密探り

 

まず、新月と満月の描写は良かったと思います。

アンナの喪失という十字架を背負う新月と、なにもないことを水晶に指摘された満月。

 

夜の街をバックに、二人がそれぞれの胸の内を話すシーンはロマンチックで良い。

涙の跡にお互いが気づき、認め合う関係性に絆を感じました。

このシーンの満月のセリフも良い

「なにもないけどとても重い、なにもないを背負っている。新月ちゃんたちと同じ。それをなんとかしたくて戦ってきたの」

グランベルムで魔術師たちの想いを目の当たりにした満月。

しかし、それに圧倒されるのではなく「同じ」と言い切るところに彼女なりの信念を感じました

そして、それを瞬時に開き直りと見抜き、断じる水晶は、底知れなさがよく出ていたと思います。

 

一方で、寧々姉周りの描写も良かったです。

ここにきてまさかのサスペンス要素。

好きなキャラなので活躍してくれ何よりです。『鋼の錬金術師』でいうヒューズ中佐のように危険な橋を渡っていそうですが。

 

ノイズキャンセリングから始まり、親友に終わる。

世界に潜む得体のしれないものに翻弄されるさまは非常にスリリングでした。

今回、数回使われていた無音演出は上記の描写を盛り上げるのにうまくハマっていたと思います。

少しずつ明らかになりつつある満月の正体。

終盤に向けて満月にどのような解が示されるのか、期待です。

 

それにしても、当たり前と思っていたものが崩れていくカタルシス。

良い描写だったのですが、1話からの積み重ねがもっと適切であったなら更に素晴らしい回になった気がして惜しいと思います。

 

次話はいよいよ因縁の水晶戦。楽しみです。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

監督コンテ回。

印象的な構図のカットが多く、見ごたえのある回でした。

 

・九音ちゃん、食べられる。衝撃シーンです

グランベルム-8話 (1)

 

・今回一押しの、水晶と満月の視線がぶつかり合うシーン。カメラ固定で視線のみが動く水晶と、目が動き動揺が隠せない満月。

お互いの心理状況がよく表現された良シーンだと思います

グランベルム-8話 (2)

 

・シュールな状況。良いサービスカット

グランベルム-8話 (4)

 

・影絵風のカット。インパクトが強く好みですが、なぜこの構図を選んだかは読み取れず

グランベルム-8話 (5)

 

・久しぶりに見た魚眼レンズ風カット。否応なしに引き込まれる良いカットです

グランベルム-8話 (6)

 

・涙の跡。お互いを想う気持ちと理解の深まりが伝わる良い演出でした

グランベルム-8話 (8)

 

・ちょうど二人の真ん中に視点が誘導される構図。二人の距離の近さに絆を感じます

グランベルム-8話 (11)

 

第9話 感想「ノクターン、染め上げて」

【シナリオ・キャラ面の感想の感想】

バトルと種明かしな回の第9話。

 

前半は、バトルで回収する2つの伏線について描かれていました。

①九音の姉はなぜ水晶に食べられたのか

②満月の正体とは

描写としては、水晶と九音の絡みがやたらと色っぽいのが良かったですね。

色っぽさ=水晶の優位性として表現されているんだと思います。

後半でそれが覆されるので、カタルシスに繋がっています。

 

満月と新月の買い食いシーンも良かったです。

「買い食いは癖になるといけませんね」

というセリフがとても可愛い。

こういうふとしたセリフにも、「聴かせる味」を吹き込めるかに声優さんの実力が見える気がします。

 

あとは、精霊という設定について深堀りがされました。

深夜アニメで少年漫画のように設定が追加されていくのは新鮮な感覚です。(ワ○ピの覇気とか、ナ○トの属性的な感じですね)

ライブ的な作り方がされてるんでしょうか・・・脚本家さんが大変そうな気がします。

正直、その設定いる?と思いました。

 

後半は、バトル回。バトルをしながら上述の伏線が回収されていきました。

九音の方は部分的な提示にとどまっていました。

あまり予想はしない派なのですが、九音の姉はグランベルムに留まるためにあえて水晶に食べられたというようなことなのかも知れません。

ただ、この回で物語を見せきらなかったのは悪手だと思います。

ここがぼやけているので、九音ちゃん覚醒シーンのカタルシスについていけませんでした。

 

ラストでは、満月の正体の一端が描かれました

手が人形に変わっていくカット。ぞわっとしましたね・・・

正体は見えました。

あとはなぜ生まれたのか。そして、物語の中で何を見つけるか。

満月の今後が気になる終盤戦が始まります。

 

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

個人的に気に入っている5話と同じ布陣となった9話。

今回も映像のつながりが綺麗な良い回でした。

 

・九音のスマホ。登録名がかわいい

グランベルム-9話 (1)

 

・コマ数多めの押し倒しカット。どっちにもなりたい(小声)

グランベルム-9話 (2)

 

・非常に美しい今回の背景。湖と霧と城はファンタジーの鉄板です

グランベルム-9話 (3)

 

・水晶の精霊。見るからに悪役なカラーリング+造形

グランベルム-9話 (5)

 

・九音ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!こういうワイプ芸的なのは好きです

グランベルム-9話 (6)

 

・イメージはピアノなのか琴なのかが気になります

グランベルム-9話 (7)

 

・今回のピックアップ、終盤の追い詰めシーンです。軌跡が2重になっているのは姉妹の共闘をイメージしているのでしょうか。

ロボの突撃~目の鍔競合いという熱い流れでした

スクリーンショット (268)

スクリーンショット (269) グランベルム-9話 (8)

グランベルム-9話 (9)

 

・鋼の錬○術師。一体誰に手繰られているのか、気になります

グランベルム-9話 (11)

 

第10話 感想「もの思う人形 」

【シナリオ・キャラ面の感想】

九音ちゃん散る、そして・・・な第10話。

一言であらわせば、混線な回でした。

 

前半は、前回に引き続いてのバトルシーン。

九音と姉・四翠の共闘により水晶を破った・・・と思ったのもつかの間、逆に九音は水晶に負け、命を散らせました。

一方、人形であるという真実が告げられ動揺した満月は何もできませんでした。

 

ここで一つ目の混線が見えます。

主人公の話と九音の話。

同時並行で大きな内容を10分にまとめているため、話についていけませんでした。

特に、四翠が何をしたのかが見えきれなかったのがイタイ。

また、水晶がなぜ短刀で刺されて無傷なのかがわからないのもイタイ。

おかげで、せっかくの九音の散り際にカタルシスを覚えられませんでした。

残念です。

 

後半は、マギアコナトスの正体。そして、傷つく満月が描かれました。

ここで、2つ目の混線。

こちらもさばく内容の割に時間が短すぎて、忙しい印象を受けました。

満月が家族に忘れられている絶望感は、もっとじっくりと見たかったところです。

 

しかし、一つ一つの演出は良かったと思います。

新月を追い込んでいく水晶の得体のしれなさはゾクゾク来ました。

人形の腕を折る時の音が効いてましたね。

 

満月をフォローする寧々姉の暖かさも良い。

作中で一番おいしいポジションだと思います。

 

そして、終盤の満月の落涙シーン。

「生きてもないのに・・・!」

そう叫びならも痛みに恐怖してしまう満月の姿の悲しさは刺さりました。

同じセリフを重ねながら、それぞれに違いを作っていく。

キャストの島袋美由利さんの演技が光るシーンだったと思います。

 

引きも面白い。

まさかの四翠、復活です。

九音の決死の攻撃により還ってきた四翠が満月に何をもたらすのか。次回が気になります。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

・シンプルにかっこいい。月光に照らされる、霧と鎌の反射光が幻想的です

グランベルム 感想 10話 (4)

 

・貴重な水晶の苦しげなカット。なお

グランベルム 感想 10話 (6)

 

・いつぞやと逆マウントなカット。勝ったな、風呂行ってくる

グランベルム 感想 10話 (8)

 

・知 っ て た。でもちょっと可愛いのがくやしい

今週のピックアップシーンです。倒れ込む九音と同じ場所に起き上がる水晶。

立場の逆転と、水晶の得体のしれなさが両立する面白いシーンでした

グランベルム 感想 10話 (10)

グランベルム 感想 10話 (31)

グランベルム 感想 10話 (32)

グランベルム 感想 10話 (33)

 

・圧倒的な立場の差を感じる構図。雨なのにその位置?というのも水晶なら自然に感じる

グランベルム 感想 10話 (18)

 

・マギアコナトスの意思に反する水晶とは何者なのでしょう。

舞台照明に照らされるようなカットですが、彼女は舞台の役者なのか、もっと別の何かなのか

グランベルム 感想 10話 (23)

 

・寧々姉ピックアップ。1枚目はふとももがイイ!

2枚めは光に照らされる寧々と暗闇に向かう満月の対比が印象的でした

グランベルム 感想 10話 (17)

グランベルム 感想 10話 (24)

 

・島袋さんの演技も光るが、このカットの涙は素晴らしい味を出していました

グランベルム 感想 10話 (27)

 

・九音が去り、四翠が蘇る。浮世離れしたいい表情ですね

グランベルム 感想 10話 (28)

 

 

第11話 感想「たとえさよならが届かなくても 」

【シナリオ・キャラ面の感想】

決意と別れと、決意。

第11話は決断が続く、ラストに向けて飛翔する回でした。

勝負回なので感想は長めです。

感想の前半は演出面後半はシナリオ面(辛口)を書いてます。

 

前半は、新月の想いと満月の決意が描かれました。

 

自分の夢が、満月という存在を生んだ。

「私は生まれないほうがよかったのかな?新月ちゃんは、私がいないほうが良かった?」

満月の切ない問いに対して、新月は夜の街を走り抜ける。

 

グランベルムでまさかこんな青春っぽいシーンが見れるとは思いませんでした。

感情の爆発は、走らせる。

これは、昔からの約束事ですね。

 

このシーンで良かったのは挿入歌と台詞回しです。

 

まず、挿入歌。

タイミングが抜群でした。特に、新月が抱きつく時の音量アップは盛り上がりを際立たせています

夜の街に映える曲調もグッドです。

 

続いて、台詞回し。

 

新月が走っている時の独白は、本当に種崎さんは上手いなぁ・・・という感想です。

感情の流れが芝居に落とし込まれてました!

①語り前半の、自分を分析する理性的で冷静な感じ。

②それがだんだんと声に震えが交じる。

③そして、語り後半の満月に向けた情念の演技に変わる。

息遣いがどんどん大きくなり、満月への「ごめんなさい」につながる

一連の流れが出来ている、今期の中でもトップレベルの名演技だったと思います。

 

そんな「ごめんなさい」に対して、満月が返すのは「ありがとう」。

新月と満月の考え方の違いが際立つ素晴らしいセリフでした。

 

それに続いていく、満月の無垢なセリフも良い。

「なくならないんだよ、なくならない」

「美味しいってすごいと思わない?~~なんにもないように見えて、世界にはすごい素敵なものがたくさんあるって」

長台詞なうえに、この台詞は一つ一つの言葉に感情をとことんつめこまないと説得力が薄れてしまう。

そんな難しい台詞を島袋さんもよく演じていたと感じました。

特に、途中の「あ~、眠いとか・・・」の変化球が大好きです。

 

後半は、思い出づくりのキャンプパート。

こういう日常パート、もっと見たかったなぁ・・・

血みどろな戦いで有名な『舞姫』なんかはこういうパートに力を入れたからこそカタルシスがあったと思います。

まさかの四翠が歌う、驚きました。

 

ラストシーンは、遂に新月が魔力を無くすと満月が消えることを知る。

駆け寄る新月に対して、満月はもう一度言う。

「忘れないようにもう一度言うよ、魔力をなくして」

 

満月の覚悟が完了した姿と、新月のまだ迷う姿。

そして、お構いなしにドーンと現れる赤い月が印象的なシーンでした。

 

 

さて、ここからはシナリオ面です。

正直、辛口です。

 

まず、満月の悟り(魔力を消してほしい)について。

このシナリオでは、次の通り整理されています。

◆魔力=月=世界を歪める存在=世界の持っているありのままの美しさが損なわれる

◆損なわれた代表的なものとしては、

・九音の存在

・アンナの存在

ありのままが美しいと悟った満月は、新月に改めて魔力を消してほしいと願うわけです。

ここに1つ目の問題があります。

ありのままが美しいと満月が感じるエピソードってなんかあったっけ?

その悟りに至った流れがなく、突然出てきた思考になってしまってます。

 

満月が魔力を消してほしいと願った理由はもう一つあります。

それは、たとえ魔力により存在が消されても残るものはあると満月が知ったからです。

それは、九音の名前を良いといった四翠の台詞や、弁当つながりの友達など。

 

個人的な感覚ですが、軽いと思います。

過ごしてきた家族や友達から忘れられる恐怖で前回、非常に取り乱していました。

それが、その描写だけで悟りに至られてもあまり共感できません。

下手したら、新月にすら忘れられる可能性があるわけです。

それを受け入れるエピソードとしてはちょっと力不足に感じました。

 

そもそもグランベルムの中盤までは、満月のエピソードは「自分の存在理由を手に入れる旅」だったはずです。

それをグランベルムという戦いに求めたり、新月の想いに求めたりしてきました。

それが、ここに来ていつの間にか変わっている

世界の美しさを保ちたい。また、なにもないなんてない。世界に居た痕跡が少しでも残れば良い程度の思いに落ち着いてしまっている。

新しい何かを得たわけでない。ただ、今を受け入れるだけに終わっているんです。

全体的なシナリオ構成として、ゴールが行方不明になってしまっている印象を受けました。

 

続いて、作品の設定と情報の提示について。

この作品では色んな設定が跋扈しています。

ただ、その設定を視聴者に伝えられてないように思います。

もっといえば、途中で変わっていないか・・・?という疑惑すらあります。

 

今回の例で言えば、魔力もない友達がいきなり満月のことを弁当つながりで思い出すシーン

え、それで思い出せるレベルなのか?

しかもその後、満月の方を見て微笑む。ただし満月は見えていない

一体このシーンでどのようなことが起きているのかさっぱりわかりません。

世界の論理が行方不明になっています。

 

新月が、「魔力を消せば満月が消えること」を知らなかったのも謎です。

あれだけ魔術に詳しいアピールをしていた新月が、寧々姉だけでなく1視聴者ですら気づきそうなことになんで気づいていないのか・・・

 

設定変わってる疑惑は、グランベルムで負けた人の末路についてです。

かなり前の回では、負けたものは魔力を失い魔術師としての道を絶たれると描写されてました。

しかし、最近ではグランベルムに挑む資格を無くすだけになっている。

また、負けた後も寧々はバリバリ魔術にもグランベルムにも絡んでいるが、ロサはその世界からは離れている様子。

何が起きているかいっちょんわからん。

 

このような感じで、設定まわりの情報管理がちょっとさばけてない印象があります。

それが大きく出たのが今回だったように思いました。

 

演出満点、シナリオは及第点・・・?な作品になってきています。

最終的な帰結はどうなるのか、見守ります。

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

・猫柄のホーム画面。意外と女子力が高い新月

グランベルム-11話 (1)

 

・ありのままの世界=星と捉えた今回。星の描写はこだわりを感じました

グランベルム-11話 (2)

■今週のピックアップシーン(Aパート:新月が満月のもとへ駆けてゆくシーン)

独白が続くシーンなので、平坦にならないよう画面に変化を生んでいたのが印象的でした。

また、新月の必死さを表現するために手を変え品を変え、色々な工夫が散りばめられています。

 

①スタートは足のアップから。走るシーンの王道

グランベルム-11話 (5)

②吸い込まれるような構図、必死さが伝わる

グランベルム-11話 (6)

③静止画では伝わりませんが、手ブレ効果がかけられてます

グランベルム-11話 (7)

④魔力の暴発。新月の余裕の無さが伝わる

グランベルム-11話 (8)

⑤メリハリの効いた力の強い画面。松の木を多めにして黒を増やしているのが後の伏線

グランベルム-11話 (9)

⑥ここまで顔を極力写さない。セリフが内省から、満月に向けたものに切り替わるここで初めて顔を写す

グランベルム-11話 (10)

⑦抱きつきシーン。先ほどのカットからは黒の割合が減り、画面が開けた印象に変わる

2枚めは、背景にブラーをかけて二人の世界であることを強調

グランベルム-11話 (12)

グランベルム-11話 (13)

⑧たどり着いたラストカット。文句なしにかわいい新月(かわいい)

グランベルム-11話 (15)

 

・病み上がりを山に連れて行くスタイル。嫌いじゃない

グランベルム-11話 (17)

 

・ポンコツ新月、もっと見たかった・・・!とりあえず包丁をナイフと呼ぶのやめよう

グランベルム-11話 (19)

グランベルム-11話 (21)

 

・今週の寧々姉ピックアップ。こういうところはお姉さん感ある。

あと、火をCGで書いていたのが印象的。照り返しでできる陰も丁寧に描かれてました

グランベルム-11話 (25)

 

・満月の複雑な表情が何より印象的なシーンでした

グランベルム-11話 (26)

グランベルム-11話 (27)

 

■今週のピックアップシーン2(Bパート:満月が新月の手を取りに行くシーン)

満月の表情、そして、初めて満月が新月を導いていくという描写が印象的でした。

 

①向き合う二人。満月の決意に満ちた表情からこの優しげな表情に変わるのが好き

グランベルム-11話 (30)

グランベルム-11話 (31)

②おずおずと手を伸ばす新月の手を、取りに行く満月。二人の感情がよくあらわれたシーン

グランベルム-11話 (35)

グランベルム-11話 (32)

 

・「散れ!少女たちよ!」ときどき嘘を混ぜてくる次回予告に負けるな!

グランベルム-11話 (33)

 

第12話 感想「マギアコナトス」

友への愛に散る。

一つの物語が終わった第12話でした。

 

いやもう、わりと心にダメージが来る回でしたね・・・

 

前半は、水晶VS満月・新月の激闘

それと同時に、水晶とマギアコナトスの背景が描かれました。

 

謎のヴェールに包まれた水晶の正体。

グランベルムの参加者とはまた違うかたちでマギアコナトスを目指すもの。

契約により1000年の間、人間への試練として戦ってきました

グランベルム-12話 (3)

 

一向に振り向いてくれない片思いが1000年続く。それは性格も歪むというものでしょう。

今回は、その歪みっぷりを表現する悠木碧さんの演技がすごく良かった。

高笑いや叫びに人から外れた感が見え、ゾクゾクしました。

グランベルム-12話 (8)

 

後半に描かれたのは、水晶と満月の死闘

文字通り、死闘でした。

 

どこまでも真っ直ぐな満月の想い。ありのままの美しさ、人が抱く希望。

満月が過ごしてきた人生の中で知った希望の価値を武器に載せ、戦い続ける。

 

1000年を過ごした水晶を持ってしても、満月の「世界と友を愛する心」は最後まで捉えきれませんでした。

 

そして、その時が訪れる。

満月の最後の言葉は、

「すごい・・・”月”」

グランベルム-12話 (36)

 

正直な話、ここまでは、11話の感想で書いた「ゴールの見えなさや構成のエピソードの足りなさ」とか”理屈面”が頭を流れてました

 

今でもそれは消えません。

でも、このシーンだけはガツンとやられました

万感の想いが込められたこの台詞は理屈じゃなく、情念のインパクトがありました。

満月の生きた証が世界に残ってほしい、そう思います。

 

このシーンの台詞の意味を考えていました。

 

理屈で考えれば、この作品における月は魔力の象徴なんです。

11話では、月がない夜でも星はきれいだという人の価値を示すセリフがあった。

月はなくていい。それが満月の立場のはずです。

 

満月の最後のセリフ。

月を肯定するようなそのセリフは12話の直前までおこなっていた水晶との問答、それと相反します

 

ただ、よく11話のシーンを思い返すと満月の台詞はこうでした。

 

「星はある。新月だから見える星、満月だったときには見えなかった星が・・・だから、満月がなくてもきっと大丈夫」

 

確かにこのシーンでは月を魔力にたとえている。

ただそれと同時に、自分がいなくても大丈夫だと新月を励ますセリフでもあるんです。

満月は月に自分自身も重ねている。

 

そう見ていくと、満月の最後のセリフには、自分のことを覚えていてほしいという心底の想いが込められているんだと思いました。

グランベルム-12話 (44)

次回はついに最終回です。

満月が果たした最大の時間稼ぎはどうなるのか。

新月の選択はどこへ向かうのか。

注目です

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

▼セピア調+ノイズにより古い映像であることを表現

グランベルム-12話 (2)

 

▼基本的に色っぽい水晶さん。このカットもS字な曲線が女性感ある

グランベルム-12話 (6)

 

▼Aパート終盤の新月苦戦シーンは、2コマ打ち※のカットが多く状況の緊張感がよく出ていた

※ざっくり言うと、1秒あたりの絵の枚数が通常より多めということ=ぬるぬる動くグランベルム-12話 (10)

 

▼ゲー○・オブ・バ○ロン。一足早い秋です

グランベルム-12話 (12)

 

▼ロボに泣かせるという演出。ロボが操縦士の文字通りの分身である今作ならではな表現

グランベルム-12話 (27)

 

▼花飾りが消える。『ゆゆゆ』シリーズの散華に似た表現

グランベルム-12話 (45)

 

▼正面から見据える満月と、見上げる水晶。お互いの心境が表現される構図

グランベルム-12話 (22)

グランベルム-12話 (46)

 

▼上の直後のカット。真面目なシーンだけどでかいとか思ってしまった自分を誰が責められよう

グランベルム-12話 (24)

 

■今週のピックアップシーン(Bパート:満月、散る)

丁寧に描かれた満月の表情の移り変わりに注目したいシーンです。

 

①当事者の満月と同時に危機に気づく。二人の絆を感じる始まりのカット

グランベルム-12話 (49)

②満月も、死期に気づく。ハッとした表情が切ない

グランベルム-12話 (31)

③上と同じカット。諦めと悔いと満足感。

想いが混じり合った表情が素晴らしい一連の流れ。全てのカットに想いがつまっている

グランベルム-12話 (47)

グランベルム-12話 (50)

グランベルム-12話 (51)

グランベルム-12話 (32)

④距離があっても目が合う新月と満月。満月の優しげな表情が印象的で切ない

グランベルム-12話 (52)

グランベルム-12話 (53)

⑤先ほどのカットと違い、本当に満月が消えてしまうことを痛感した新月の表情。哀しい

グランベルム-12話 (54)

⑥最後まで新月のために微笑む満月。心優しい主人公

グランベルム-12話 (55)

グランベルム-12話 (56)

⑦大きく輝く月。満月のセリフの意味は記事本文の通り

グランベルム-12話 (57)

 

▼貫禄の絵コンテ+一人原画。大変お疲れさまでした

グランベルム-12話 (58)

グランベルム-12話 (59)

 

第13話 感想「世界で唯一のふたりのために」

懸命に生きたその日々を、忘れない。

新月と満月の戦いが成就した第13話でした。

 

前半は、水晶と新月の最後の戦いが描かれました。

人類の試練として立ちはだかった水晶。

最後まですごいインパクトでした・・・

 

まず、前回に引き続き悠木碧さんの演技が凄すぎる。

「平穏平穏平穏・・・力を求めるものが平穏だぁ・・・!?それで魔術師になれると思っているのか!」

魔力への純愛と狂気が入り交じる、濃いセリフの数々を情感豊かに演じていました

それでいて、セリフ一つ一つが聞きやすい。

プロの技を見た気がします。

グランベルム 13話 (6)

 

水晶というキャラの正体も印象的

人を試し、人を見下し、人を否定し続けた水晶。

しかしその正体は、満月と同じくマギアコナトスに手繰られる人形でした。

マギアコナトスから生まれた存在だからこそ、彼女の最後の台詞は後半の展開を見事に暗示する。

作品内で常に印象を残し続ける、良い敵役でした。

グランベルム 13話 (16)

 

一方で、バトルシーンや魔力に関する問答はちょっと乗りきれない。

魔力の是非を通じて、人間の在り方論を問うわけですが・・・

やっぱりピンとこない。

グランベルムという閉じた世界の戦いから、広い概念の問答に広げるのは少しむずかしい気がしました。

まだ、日常の有り難さという10話の問答のほうが作品に寄り添っていたかなぁという感想。

 

グランベルム 13話 (10)

 

閑話休題。

 

後半は、最後の試練とその後の世界が描かれました。

情報量が多すぎる、後半数分!

 

大人寧々姉かわいい!いや綺麗!!

ギャップは消えましたが、これはこれでありです。

 

記憶や記録が消えても、寧々姉と希望の関係性は消えない。

満月の「消えない」が真であったということの表現でしょう。

寧々姉の成長は、魔力が消えたことで幼き日の母の面影から解き放たれたということの暗示なんだと思います。

グランベルム 13話 (37)

 

四翠の普通?の女子っぽさや、気づいてくれるクレアの純真など・・・

見所の多いエピローグでした。

グランベルム 13話 (40)

 

そして考えなければいけないのは、

水晶との問答中に描かれた「満月の涙」と新月の最後のセリフ「だから、私は・・・」の意味でしょう。

 

作中では明言をされないものの、読み解くための手がかりが描かれています

①「私が見えていた未来は・・・」と伝えた後の満月の涙

②マギアコナトスは試練として、”満月は新月の心の写し鏡じゃない”ことを伝えた

③ラストに教室に入ってくる転校生はおそらく、満月

④「だから、私は・・・」のあとに描かれたラストカットの花

⑤「だから、私は・・・」の背景で歌われる歌詞「偽りだらけの世界ならいらない」

グランベルム 13話 (23)

 

結論から言えば、新月の愛した満月が失われたということなのだと思います。

 

新月と共に戦ってきた満月。

彼女は元々、新月の想いからこの世に生まれた存在。偽りの世界の産物です。

そのため、魔力を消せばその存在自体は正しいあり方。

すなわち、新月と過ごした記憶も想いも持っていない、本来あるべき満月に戻る

 

本来あるべき満月とは・・・

普通に考えれば人形に戻ること。しかし、どうやらそうではない。

既に自我を獲得し、新月とは別の存在となっていた彼女は、ラストシーンで新たな「小日向 満月」として蘇っています。

 

マギアコナトスが課した最後の試練の内容。

それは、満月により支えられた新月の決意が、新月の愛した満月の存在を消し去る

それどころか、新月の写し鏡から離れた満月自身が存在を上書きする。

それでも魔力を消すのか?という最後まで底意地の悪い決断を迫っていたんです。

 

だからこそ、満月の涙や歌の歌詞。

そして、水晶との問答における、新月のセリフがつながってきます。

「満月のことを思い出します。みなさんのことも思い出します」

 

そんな新月のセリフと決意が真であることを示すのが、大きく映し出された花。

”勿忘草”の花言葉は、真実の愛。

 

あるべき形に還った世界にて、消えてしまった少女たちは新月の中で生き続ける。

そんな意味が込められた、ラストシーンだと解釈しました。

グランベルム 13話 (46)

グランベルム 13話 (45)

 

さて、考察を終えたので総括です。

端的に感想は3つ。

①描きたいテーマが散らばってたり大きすぎて、乗りきれない!

②マギアコナトス性格悪すぎる!しかも消えるという自分の願いを成就してんじゃねえ!!

③ちょっと新月と満月に救いがなさすぎません・・・?

 

因果応報が真逆に働いているのは13話を追い続けた身としては、なんとも言えない。

テーマ性を優先した帰結だとしても、そもそもテーマに乗り切れていないし・・・

正直、ちょっと充実感低めな視聴後感でした。

 

しかし、映像に込められた情報の多さやバトル、声優さんの演技など・・・

オリジナルアニメらしい熱量と見所のつまった素敵な作品であることは間違いない事実。

1クール、しっかりと楽しませていただきました!

 

【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】

▼パロディとパクリの境界線は、リスペクトと信頼に存在する

グランベルム 13話 (1)

 

▼読みきれないときと読みきったとき、対比が美しい構図

グランベルム 13話 (2)

グランベルム 13話 (3)

 

▼水晶さんよくばりセット、欲しい!・・・欲しくない?

グランベルム 13話 (4)

 

▼最終回特有の主人公機パワーアップ。イケメンロボとか新しい

グランベルム 13話 (8)

グランベルム 13話 (9)

 

▼水晶もまた、人形であることを如実に示した構図。色っぽい

グランベルム 13話 (13)

 

▼時々カメラに写しちゃいけない顔をする水晶さん。今回は特に壮絶

グランベルム 13話 (15)

 

▼やりたいことは分かるけど、凄いゴテゴテ感。某SRPG最新作のニルヴァーナ並み・・・

グランベルム 13話 (17)

 

▼更に耳と羽まで生えてもう何アニメかわからなくなる濃いカット

グランベルム 13話 (32)

 

▼なんども書いてますが、ポンコツ新月は可愛い。これは真理

グランベルム 13話 (34)

 

▼ポニテ新月が可愛いのもまた、真理

グランベルム 13話 (35)

 

▼真夜中と月が去り、光が指す。2人の願いが成就した世界

グランベルム 13話 (42)

 

■今週のピックアップシーン(Bパート:水晶と新月の問答)

水晶の真摯な表情が見所のこのシーン。

上の感想で書いたことを当てはめると、このシーンの水晶の優しさが見えてきます

 

「みんなのことも思い出します」

新月の言葉に対して水晶が返すのは、

「それだけ?」

 

新月の「やりたいことはたくさんあります」という言葉を聞き、

そして、新月の微笑みを見てようやく席を譲る。

 

新月に与えられた運命(満月の喪失)を知っているからこそ、厳しくも優しい声色で覚悟を問う

戦いあってきた新月と水晶の心がつながった、最終回にふさわしい良いシーンでした。

 

①向かい合う2人。他者への思いだけでは水晶は微笑まない

グランベルム 13話 (47)

グランベルム 13話 (48)

グランベルム 13話 (49)

グランベルム 13話 (50) ②「やりたいことはたくさんある」満月に教わった当たり前の日常を楽しむ覚悟。

水晶は真摯に心を見定める。新月の表情が素敵です

グランベルム 13話 (51)

グランベルム 13話 (52)

グランベルム 13話 (53)

③このカットの間が素晴らしい。欲を言えば、前のカットと表情の変化が欲しかったところ。

グランベルム 13話 (54)

④最後に微笑む水晶。試練としての存在を貫く良いキャラクターでした

グランベルム 13話 (56)

 

以上、グランベルムの感想でした。

読んでくださった方、ありがとうございました。

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