ゲーム『幻影異聞録 ♯FE』をネタバレ無しの評価と感想で、未プレイの方も読めるような内容でレビューしていきます。
おすすめ度:★★★★★(87点)
一言感想 :「芸能界が舞台」という新鮮さと共に、「王道な青春物語」が展開されるJRPGの良作
評価(5段階・要素別)
カテゴリ:JRPG・ファタジー
総評価:★★★★★(87点)
シナリオ:★★★★☆
キャラクター:★★★★★
演出:★★★★★
(音楽:★★★★★ 映像:★★★★☆ アイデア:★★★★☆)
※評価の理由は、ページ下部に記載しています。
『幻影異聞録 ♯FE』レビュー「予想外の発見- 芸能に賭ける青春の輝き」
祝!『幻影異聞録 ♯FE Encore』(Switch移植版)発売決定!
今回は、上記を記念し、移植元の作品『幻影異聞録 ♯FE』をレビューします。
さて、『幻影異聞録 ♯FE』は2015年12月に発売されたWii U専用のRPG。
当時、この作品が最大のウリとしていたもの。それは…
・『ペルソナシリーズ』等で知られる人気ゲームメーカー「アトラス」
・SRPGの名作シリーズ『ファイアーエムブレム(FE)シリーズ』
それら2つの”夢のコラボ”でした。
■『FEシリーズ』最新作・風花雪月(2019年)。魅力的なキャラとドラマティックなシナリオがウリ
ただこの作品。正直いって、FEシリーズの要素はあまり感じられません。
ざっくりいうと、使われる用語やキャラの名前に『FE』シリーズの用語が散りばめられてる程度。
FEシリーズの特徴である「奥深いシミュレーションRPG要素」などはありません。
しかしこの作品は、ウリとして期待されていた部分とは異なるところに強みを持っていました。
本作のウリは、「芸能」をテーマに描かれる熱く、輝かしい青春の物語。
芸能がテーマというのは、プレイするまでは少しわかりにくいと思います。
かんたんに解説すると…
まず、この作品で描かれる「芸能」とは、「歌・踊り・演技」などの芸能界で活躍するためのスキルを指します。
そんな「芸能」を本作では、次のようなゲームを構成する各要素、”全て”に取り入れています。
・メインストーリー
・キャラクター
・バトルシステム
・演出
例えば、登場するメインキャラたちは芸能事務所に所属するアイドルや俳優の卵たち、といった具合です。
芸能という切り口の新鮮さ、そして物語の面白さ。
軸がしっかりしているからこそ色々な要素がシナジーを発揮し、ゲーム全体の魅力を高めている。
これらがウリのゲームだと思います。
長くなりましたが、ここからは、ゲームの各要素を紹介していきます。
◎ストーリー:大人と子供による「想いの衝突」が気持ちいい!
『幻影異聞録』のメインストーリーは、一言で言えば「芸能への想いのぶつかり合い」です。
今作のあらすじはこんな感じ。
芸能に宿る強力な力”パフォーマ”。
パフォーマを悪用しようとする異世界からの侵略者”ミラージュ”。
日本の芸能界は、パフォーマを狙うミラージュたちの侵略により、徐々にその輝きを失い始めていた。
芸能人の卵である少年少女たちは芸能の輝きを取り戻すため、「自らの輝き」と「仲間との絆」を武器にミラージュたちとの戦いに挑む!
作中では、ミラージュという敵によって、大人たちが操られます。
その対象は、芸能界の第一線で活躍しているが、少し心にスキがある者。
疲れ始めた大人たちの、彼らが持つ芸能への価値観が捻じ曲げられてしまう。
そんな大人に対し、若く真っ直ぐな主人公たちがぶつかっていく。
それぞれが持つ「芸能」へのこだわりを、歌や演技(あとバトル)で叩きつける。
戦いの中で、大人たちは失いかけている「芸能への情熱」を取り戻していく。
主人公たちも、敵である大人から「芸能の新たな輝き」を見つけて成長していく。
想いの衝突により両者が磨かれていくというのが、気持ち良いシナリオです。
■敵となるミラージュ。芸能人に取り憑き心を操る。モチーフはFEシリーズのキャラ。
敵が単なる「悪」ではないという点が良い。
敵となる大人は、実力と芸能への想いという点では一本の筋が通っている。
対して、メインキャラである芸能人の卵たちも、若さあふれる瑞々しい輝きを持っている。
それらが衝突し、互いに磨き上げられていく姿は熱いものがありました。
ネタバレにならない範囲でシナリオイメージの1例を。
敵として登場するドラマ監督「鱈知乃 九炎」。
ヒットメーカーであり、ものすごくこだわりが強い。
少しでも上手く行かないとメチャクチャ切れる。
そんな鱈知乃のドラマ作品に、新進気鋭のタレントで今作のヒロイン・つばさが出演します。
しかし、つばさの演技はかなりの棒。
当然、鱈知乃はつばさをこき下ろします。
そんな鱈知乃に負けず、つばさは演技を磨き自分なりの魅力を見せつけて彼を納得させていく。
■真ん中の人:鱈知乃 九炎、右手前:仲間キャラ① 織部 つばさ(CV:水瀬 いのり)
そんな王道なストーリーを今作は「日曜朝の特撮番組」いわゆる”ニチアサ風”なタッチで描いています。
ニチアサ風とは…。
普段はギャグが多めで明るい。
しかし、時々見せるキャラの真剣さによるギャップが、視聴者を引きつける熱さを生む。
作品のテーマにあった良い雰囲気だと感じました。
芸能に賭けるキャラたちの、熱く、そして明るい物語。
今作ならではのストーリーに、どんどん引き込まれました。
◎キャラクター:「芸能人たちのオフショット」ギャップが生む魅力
今作で仲間となるメインキャラは人気芸能人ばかり。
そんな彼らと主人公・樹は同じ芸能事務所に所属し、日常生活でも触れ合うことになります。
テレビで輝く彼らも、私生活ではただのひとです。
舞台に立つ凛々しい姿とは違った、ゆるい1面を持っています。
舞台上の姿とオフショットでのギャップ。
それこそが、芸能界を舞台にした今作ならではのキャラの魅力だと思います。
■仲間キャラ②:弓弦 エレオノーラ(CV:佐倉綾音)。人気女優で演技は天才的。見ての通りツンデレ
例えば、弓弦 エレオノーラというキャラクター。
人気女優である彼女は、カメラの前では完成した演技を見せます。
しかし、私生活での彼女はかなりのポンコツっぷりを発揮。
ツンデレ風味で恋愛には経験不足という等身大な姿を見せてくれます。
そのギャップが非常に可愛い。
彼女のポンコツで可愛い姿は、「サイドストーリー」でじっくりと見ることができました。
■サイドストーリーのワンカット。「演技の稽古に付き合って」と樹を誘い・・・?
キャラを掘り下げていくサイドストーリーの存在
サイドストーリーが充実しているのも今作の魅力です。
先ほど紹介したような、キャラクターの内面に迫る物語が一人ひとりにきちんと用意されています。
数章仕立てで、一人あたり1~2時間程度。
樹と仲間が楽しい掛け合いをしながら話が展開されていき、絆が深まっていきます。
ストーリーの中で、各キャラたちは色々な経験をする。
あるキャラは歌を磨き、あるキャラは演技を磨き、それぞれの芸能力を高めていくこととなります。
なお、サイドストーリーのクリアは、今作のバトルにも大きな影響を与えていきます(後述します)。
■仲間キャラ③赤城 斗真(CV:小野 友樹)。特撮ヒーローを目指す俳優志望な熱い男。
サイドストーリーではヒーローショーに出演することになる
◎システム:「ステージ風味」なバトルの斬新さ
今作のバトルシステムを簡単に紹介します。
形式はターン制のコマンドバトル。
通常攻撃や、EPを消費したスキルで相手と戦います。
ポイントとなるのは、「弱点」。
スキルにより敵の弱点となる属性をつくことで、連携攻撃を重ねていけます。
■敵の名前の下にある弱点をつくことで連携攻撃が発動する
ここで、先ほどのサイドストーリーが生きてきます。
芸能のお仕事であるサイドストーリーをクリアすることで、新たなスキルが獲得できる。
結果、幅広に敵の弱点をつけるようになり、延々と連携攻撃が可能になります。
しかも、このスキルの演出が派手で良い。
サイドストーリーで積んだ経験をそのままバトルシーンで見ることができます。
例えば、サイドストーリーでライブをすれば、ライブで使った楽曲と演出が取り入れられたスキルが使えます。
■サイドストーリーで演じた役の技を使えるようになる。ただ、この衣装は少しダサい
そんなシステムの結果、バトルシーンはまさに主人公たちの舞台と化します。
歌って、踊って、敵は倒れる。
芸能にフィーチャーした今作だからこそ出来る、一風変わった戦闘がとても面白かったです。
■エフェクトが多く、技を使うと衣装も変わる。とにかく派手で楽しいバトルシーンになっている
◎演出:アイドルアニメ顔負け。超豪華なアニメーション
バトル演出もさることながら、ストーリー上の演出も見ごたえがありました。
ストーリーの中では、アニメーションによるライブパートが用意されています。
それも1~2回程度ではなく、かなりの数がつめこまれています。
映像の質も良いです。
一つ一つの映像に盛り込まれている演出が、キャラを輝かせるアイデアがつまっていて普通におもしろい。
『ラブライブ!』などのアイドルアニメで見られるライブパートとも勝負ができる、良い映像でした。
■シリアスからカワイイまで。キャラにあった幅広い映像が作られている
また、楽曲が素晴らしい。
歌うのはキャラを演じる声優さんたち。
歌手としても活躍している水瀬いのりさんや南條愛乃さんの歌を何曲も聞くことができます。
楽曲を手掛けるのがエイベックスということもあり、聴き応えのある楽曲でした。
総評価と感想
このように、この作品は芸能を軸に全てが繋がっているのが魅力だと思います。
それぞれの要素がシナジーをうみ、芸能界を舞台にするという挑戦的な設定を見事にゲームへ昇華させていました。
作風は明るく熱い物となっているので、ゲームで言えば『ペルソナ4』のような作品を好きな人にはおすすめできます。
アニメで言えば、芸能界+アイドルつながりで『THE IDOLM@STER』や『ゾンビランドサガ』。
ノリの良さ、熱さ、楽曲と戦いの合体ということで『戦姫絶唱シンフォギア』のような作品を好きな人にはあうと思います。
芸能を中心に据えるという唯一無二なテーマを持った今作。
真っ直ぐに芸能界を走り抜ける少年少女たちの冒険は、清々しくとても爽やか。
プレイしてから数年がたった今でも、すらすらとレビューが出来るほど記憶に残った一作でした。
シナリオや楽曲の追加がある『幻影異聞録 ♯FE Encore』で、再び彼らと出会えるのが非常に楽しみです。
■参考まで、紹介映像を置いておきます
・短め(あらすじ、作風、移植版の追加要素紹介)
・長め(あらすじ、作風、戦闘システム、ダンジョン、日常パート、メインシナリオ紹介)
その他、良かった点と気になった点
ここからは、本文で書ききれなかった部分を紹介します。
◎キャラクターの幅広さ
レビューでは、「弓弦 エレオノーラ」にフィーチャーしてキャラを紹介しました。
しかし、他のキャラクターもみんな個性的でおもろいキャラばかり。
特に、キャラの幅広さが魅力です。
■パーティメンバーとその属性
○織部 つばさ:アイドル・ヒロイン・正統派美少女・ドジっ子
○赤城 斗真:俳優・熱血・ヒーロー好き・愛すべきバカ
○黒乃 霧亜:歌手・クールビューティ・意外と面倒見が良い
○源 まもり:子役・妹属性・趣味は渋い・まさかのメイン盾
こんな感じで属性多めなキャラたちが登場し、とても濃いです。
さらに、ここでは書いていないようなギャップのある内面まで持っていて、楽しいキャラばかりでした。
■メインキャラクター達。この他、ライバルポジの「剣 弥代」もいい味を出している
中でも、特に気に入ってるのはつばさと斗真です。
まず、つばさは見かけどおり正統派美少女・・・なのですがかなりドジっ子。
天然な発言をしたり、セリフを噛んだり美味しいシーンが多い、優等生な外見とのギャプが魅力キャラでした。
それでいて、がんばり屋で芯は強いものを持っていてどんな逆境でもへこたれない。
まさに、応援したくなるアイドルなキャラクターです。
続いて斗真。
周りが濃いメンバーが多い中で、非常にわかりやすいキャラです。
シンプルに愛すべきバカ。
パーティの盛り上げ役を一人で買って出る、ギャルゲーの親友ポジのような感じでした。
メインストーリーでは芸能事務所の新人である「主人公の樹とつばさと斗真」が一緒に行動する機会が多いです。
この三人の漫才みたいな掛け合いが結構面白く、三馬鹿っぽい良いトリオとなっていました。
■公式のキャラ紹介映像(代表してつばさと斗真編のみ)
・織部 つばさ編
・赤城 斗真編
◎FEキャラとメインキャラのコンビ感
ここまで、わかりやすさを重視して、あえて書いてこなかったことがあります。
実は、メインキャラには一人ずつ、相棒となる正義側に属するミラージュがいます。
各ミラージュは、『ファイアーエムブレムシリーズ』のキャラクターたちがモチーフとなっています。
そのミラージュたちとメインキャラのコンビ感が絶妙でした。
全体的に、メインキャラの足りないところを補うようなかたちでミラージュたちが割り当てられています。
別作品で例えるなら、デジモンと選ばれし子どもたちのような位置づけです。
■平成初期の名作アニメ「デジモンアドベンチャー」。子どもたちとデジモンの相棒感が魅力
例えば、源 まもり。
まもりはしっかりとした子なのですが、内気で少し気弱なところがあるのが弱点です。
そんな彼女を補うミラージュが、「ドーガ」。
原作では貴重なアーマーナイトとして活躍するドーガですが、今作でもずっしりとした重みのある存在感で活躍します。
まもりの気弱さが出たときには、父親のような安定感でまもりを支える。
姫と忠臣のような関係性が光る、いいコンビだったと思います。
◎ダンジョンの凝りよう
今作のダンジョンは、作りが凝っていたと思います。
基本的に、メインストーリーで敵となるキャラの価値観が反映されたものになっています。
また、ギミックも凝っており、パズル的な面白さもあるダンジョンとなっていました。
こういったダンジョンの作りこみは、『ペルソナ5』に近いものがあると感じました。
△ファイアーエムブレム要素とのかみ合わせ
記事冒頭で記載したように、ファイアーエムブレム要素はフレーバー。
ですが、実は、それ以外にもファイアーエムブレム要素が一部メインストーリーにも組み込まれています。
詳しくはネタバレにつながるため割愛します。
ただ、芸能を中心としているこの作品のシナリオに、思いついたようにファイアーエムブレム要素が投入されるのでシナリオのバランスが崩れています。
このFE要素投下により、感情移入しきれないシーンが発生してしまうのは惜しいところだと思いました。
△楽曲数の少ないキャラクターが居る
メインキャラの中でも、楽曲数の多いキャラとそうでないキャラがいます。
もちろん、後者には別の見せ場が与えられているのですが少しさみしいところです。
その分、一つ一つの楽曲のクオリティは高いのですが・・・
今回の移植では楽曲が増えるそうなので、救済に期待したいです。
参考:評価(5段階・要素別)の理由
カテゴリ:JRPG・ファタジー
総評価:★★★★★(87点)
シナリオ:★★★★☆
本記事の通り。
ただし、終盤がややごちゃつくのはマイナス点。ボリュームもメインシナリオは少し少なめ。
キャラクター:★★★★★
本記事の通り。
また、女性キャラだけでなく、男性キャラに魅力があるのは高評価。
普段とのギャップで笑わせてくる良い男性キャラたちはいいキャラをしていた。
演出:★★★★★
(音楽:★★★★★ 映像:★★★★☆ アイデア:★★★★☆)
本記事の通り。
アニメーションや戦闘演出は非常に見応えあり。
一方、グラフィックは据え置きにしては少し粗く気になるときがあった。
以上、『幻影異聞録 ♯FE』のレビューでした。
なお、スイッチ版をクリアした後、ネタバレあり感想を追記していきます。