【シャニマス感想・評価】『ノーカラット』のストーリーや演出面の気づき

【シャニマス感想・評価】『ノーカラット』のストーリーや演出面の気づき

アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)のイベントシナリオ『ノーカラット』をプレイした感想です。

※ネタバレ注意!!

 

『ノーカラット』感想など

良かった点

記念すべき、新ユニット『シーズ』の初シナリオ!
期待通り、予想の斜め上をゆく読みのごたえのあるシナリオでした。

にちかがユニットの在り方に悩みながら、少しずつ自分なりに美琴との距離を縮めていく。そんな王道な展開からの…。

今回のシナリオで良かった点はやはり、ラストの展開でしょう!
きっとこれからは上手く進んでいく。
にちかは幸せになれる。

そんな未来が見え始めた所から一転。
予定調和の如く、生まれかけた景色が崩れ去っていく。

終盤までの積み重ねとラストの落差で魅せるために、色んな仕掛けが施されているのが、今作の特徴でしょう。 

ここからは、そんなラストのための工夫について気付いた点を紹介していきます。

 

まず、テーマ性の印象付けがラストに効いています

シーズのテーマはやはり、『完璧さVS想い』という概念。
この点は、美琴とにちかのWingコミュで描かれていましたが、今作でもそれを印象付ける工夫がされています

ひとつは冒頭のお笑い芸人との対比
技量はないが絆はある芸人(=想い)に、にちかが口撃することでそこに憧れている感情を描き出している。

ラストでは、にちかが芸人の関係性を認めながらも自分は完璧になることを決心することで、にちかの成長を描いていました。

だからこそ、ラストでにちかが評価されることが皮肉に映ります。

さて、もうひとつもっと直接的な描写でした。
物語の中盤で、社長とはづきさんの会話で明確にテーマを描いています。

やはり、この2人の掛け合いは否応なしに注目してしまいます。
更に『明るい部屋』での社長とにちか父との関係性も使いながら、テーマ性を強く印象付けていました。

ここまで見てきたように、完璧さVS想いの構図を明確にする。

それにより、今回のシナリオでにちかに感情移入すればするほど想いの強さが発揮される終盤の展開に納得できるようになるという…うーん、巧み。

 

次に伏線の使い方も絶妙でした。

中盤、ライブハウスで美琴とにちかがニアミスするシーン。

ここで、にちかは一瞬でライブハウスの人気者に上り詰めています。この描写があることで、ラストでにちかの人気が出ていく展開を補強しています。

ラストの奈落に関する描写も上手い。

普通のシナリオの構造ならOPではすれ違っていたシーズの二人が、ラストでは声がそろうという演出が鉄板。
ところが今回は、敢えてラストでも二人の声をバラバラにすることで、今作の二人の関係性を浮き彫りにしていました。

タイトルがノーカラットというのも伏線的です。

シナリオを読み終わってから見るタイトルが味わい深く悲しい。
何かが生まれたように見えた今作ですが、中身はまだ詰まっていない。そんな暗喩を感じました。

 

最後に雰囲気作りが上手いのもラストの展開に効いていました。

物語中盤まで描き続けられるにちかの疎外感、必死さ。
そこから終盤でホーム・スイート・ホームを使って描かれる多幸感。
この落差があってるからにちかに感情移入する。

だからこそ、終盤の更なる落差はたまらない。

にちかは追い詰められてこそ輝くアイドルだなぁなんて思いました。

話が横にそれますが、ホーム・スイート・ホームの使い方が上手いのがとても好きです

完璧さを求める美琴は、音楽の趣味がクラシックに寄っている。そのため、原題である『ホーム・スイート・ホーム』としてこの曲をとらえる。
にちかはこの曲から「たのしとも たのもしや」という『埴生の宿』から歌詞を引用している。

2人の対比が美しい描写だと感じました。

もうひとつ横にそれますが、キャストさんの演技が素晴らしかったのも見過ごせません。

美琴の歌う『ホーム・スイート・ホーム』の旋律の美しさと淀みのなさは、美琴の求める完璧さを見事に表現している。

にちかの演技も引き込まれる。
思春期の自分を律せていない、そしてそれに戸惑うような表現。
たまに見せる暖かな物を求めるような年相応の子供のような声色。
キャラクターの理解がとても深いんだなと感じました。
あとは同じ表現の中で演技のバリエーションが増えれば更に聞きごたえのある演技になるように思います。

 

まとめですが、オーラスに今回のようなひっくり返した展開を持ってくるのはかなり難しいと思います。
しかし、今作はそれが成立している。

ラストの展開のために多数の工夫がつまっている点が今作の素晴らしい点だと感じました。

 

気になった点

ここからは気になった点です。
これは単刀直入に。

シナリオが暗いです。
放クラ早く来てくれ!となりそうな重さが続いていく。
重さのあまり、そもそもイルミネへにちかを投入、ストレイに美琴を投入しておけば何とかなったのではとか思ってしまいます。

ノクチルのシナリオも透明感重視なのですが、あちらはその中に年末の空気感だったり雛菜とオウムの掛け合いだったりと少し空気感を変える工夫が見られました。

今作はその点で感情が少し同じ色の陰に寄り過ぎている気がします。
他の色を際立たせる意味でも、もう少し幅のある描写があるとシナリオにより没頭できるような気がしました。

有り体に言うと、今回のサポカコミュみたいなポンコツ美琴さんがもっと見たい!

 

もう一つは、にちかシナリオとのバッティング

にちかは才能がない中でアイドルの世界に踏み込んでしまったという点に、シナリオの根幹があると思っています。
ラストの展開は、明らかに才能がある人のように見えてしまうので、今後そこをどう処理するのかは非常に気になるところです。

 

いずれにせよ、一発目のシナリオとしては十分な引きのある良シナリオでした。

今後のシーズの活躍に期待します。

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