ゲーム『ライザのアトリエ』をネタバレなし評価(未プレイの方向け)とネタバレあり感想(プレイ済みの方向け)でレビューしていきます。
・記事作成時のプレイ時間:30時間(EDクリアまでは25時間。早解き気味)
・管理人はアトリエシリーズ全作品のうち、約9割をプレイ済み
続編のレビューを書きました。
辛口ですがよろしければご覧ください。
おすすめ度:★★★★☆(74点)
一言感想:アトリエ新時代の幕開け!シリーズとして新たなチャレンジが光る意欲作でした
要素別評価(5段階)
カテゴリ:日常・ファンタジー・RPG
総評価:★★★★☆(74点)
シナリオ:★★★☆☆
キャラクター :★★★★☆
システム:★★★★☆
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★★☆ 絵・グラフィック :★★★★☆ アイデア:★★★☆☆)
※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。
『ライザのアトリエ』レビュー「アトリエが贈るひと夏の冒険の旅」
いざ、日常から冒険の旅へ!
チャレンジが光る、アトリエ新シリーズの幕開けにふさわしい1作です。
今回紹介するのは『ライザのアトリエ』。
ファンタジーな日常を描いた「アトリエシリーズ」の最新作です。
今作は、主人公・ライザのキャラデザがバズり、発売前から知名度を広めていました。
確かに、可愛かった・・・!
▼主人公:ライザリン・シュタウト(CV:のぐちゆり)。健康的な可愛さが魅力
さて、今作を一言で表すと荒削りな意欲作といったところです。
というのも、今作はアトリエシリーズのお約束から脱却を目指したチャレンジな作品。
特に、「バトル・調合システム・シナリオ」にその挑戦は現れています。
挑戦の結果は・・・
良いところは凄く良くなった。
ただ、気になるところも生まれた。
気になるところをつぶし切る所までには至っていない印象です。
今回はシリーズプレイヤーとして、シリーズとして新たな挑戦となった部分にも特に着目しながら、『ライザのアトリエ』をレビューしていこうと思います。
そもそも「アトリエシリーズ」とはどんな作品?
まずは、「アトリエシリーズ」の特徴から紹介します。
※シリーズ経験者の方は読み飛ばして下さい。
「アトリエシリーズ」は1997年から続くご長寿なシリーズ作品。
『ライザのアトリエ』は節目となる第20作です。
ちなみに、「アトリエシリーズ」は更に細かく「××シリーズ」と分けることが出来、2~3作ごとにキャラと世界観を一新しています。
『ライザ』はちょうど新シリーズの1作目となるので、過去作のネタやキャラは登場しません。
▼記念すべき1作目「マリーのアトリエ」。牧歌的な世界感が魅力。
キャッチコピーは「世界を救うのはもうやめた」
そんな「アトリエシリーズ」の特徴です。
①錬金術による「調合」システム
②「日常」がメインテーマ
③魅力的なキャラの会話劇が5割
それぞれを、簡単に紹介します。
・・・といきたかったのですが、結論から言いましょう。
『ライザのアトリエ』は「アトリエシリーズ」の特徴を少し離れた作品のように感じました。
そのため、『ライザ』について知りたい方は、「調合」以降は読み飛ばしてください。
まず、シリーズの核である「調合システム」について。
「アトリエシリーズ」の主人公は、「アトリエ」を営む錬金術士です。
釜に材料を入れて混ぜれば、大体のものは作れる。そんな凄い力を持った女の子が主役です。
なので、普通のRPGのようにアイテムや装備を店で買う必要はありません。
アイテムは自分で作れるんです。
ダンジョンで材料を拾い、釜に入れ混ぜる。
強いアイテムを作って更に強い敵がいるダンジョンへ。
あるいは、シナリオで必要となるアイテムを作りストーリーを進めていく。
主人公の特技である錬金術が、シナリオでもゲームシステムでも中心にあるのが「アトリエ」最大の特徴です。
ここは、『ライザ』でも変わっていません。
▼今作でも、調合システムは健在。イラストのライザが眩しい
以降は、過去の「アトリエシリーズ」の参考情報です。
シナリオについて。
アトリエのシナリオは、世界を救うようなだいそれた事をしません。
主人公の日常を魅力的に描くのが持ち味です。
例えば、PS3『ロロナのアトリエ』。
主人公のロロナが営むアトリエが経営不振に・・・。
アトリエを立て直すため、素人錬金術士のロロナが成長しながらアトリエをもり立てていく。
このような、分かりやすく気軽なシナリオなのでのんびりとプレイできます。
▼『ロロナのアトリエ』(2009年)。笑いあり、良い話ありの正統派アトリエ作品。
ちなみに私は、アトリエシリーズの主人公ではロロナが一番好き
続いて、キャラの会話劇について。
一般的なRPGといえば、ダンジョン探索やバトルにかける時間が7割くらい。
しかし、アトリエにおいてそれらはメインではありません。
アトリエシリーズで重視されるのは、可愛らしいキャラの楽しい会話劇です。
数分程度の主人公の日常を描くミニイベントを見る時間が、プレイ時間の半分程度を占めます。
そのため、日常系アニメなどが好きな人におすすめしやすい作品です。
が、『ライザ』では少し趣が異なります。
ミニイベントは少なめで、メインシナリオを見ていく時間が多くを占めます。
メインシナリオも、日常はテーマにあるのですが・・・描き方がこれまでとは異なりました。
○シナリオ:ライザが見る”日常”とは
ここからは、『ライザ』の紹介に戻ります。
最初はシナリオ面から。
プレイした感想としては、良い所と気になる所が半々という印象です。
まず、描かれる主題は「日常ってなんだろう?」ということでした。
島で過ごす代わり映えしない毎日。
「なんてことない日常」に辟易するライザ。
彼女が、錬金術という力を手にして、日常を1歩踏み出し、「ひと夏の冒険の旅」にでる。
旅の中で色々な経験をし、やがて、ライザの日常に対する考え方が変わっていく・・・
大まかなあらすじはこのようなところでした。
主題の表現は、そこそこな出来だと思います。
旅の中で日常を見つめ直すコンセプトは良い。
惜しいのは、ライザの日常をもっと魅力的に描けていればより共感できたかなと感じました。
▼錬金術との出会いが、ライザの日常を変えていく
さて、シナリオで良かった点はふたつあります。
①ひと夏の冒険というコンセプト
②世界観と日常の繋がり
順に紹介します。
まず、ひと夏の冒険について。
これは、数々の映画の主題にもなっているロマンのある設定です。
夏という限られた時間の中で、仲間たちと日常を抜け出し冒険の旅に出る。
終りがあるからこそ、旅の時間がキラキラと輝く。
シナリオにもそれが表現されています。
序盤は夏休みの最初のような感じ。
何も考えず、体当たりで目の前のイベントに全力投球で仲間とぶつかる。
それが後半は、限りある夏を惜しむように、じっくりと思い出を重ねていく。
個人的には、後半の雰囲気にぐっと来ました。
夏のノスタルジックを感じる雰囲気作りが上手い作品です。
グラフィックなどのゲームデザインも、このコンセプトをよく心得ている。
上の画像のように「鮮やかな青空」や、「街で聞こえるセミの鳴き声」が”夏感”を醸し出していました。
今作では、光の表現をブラッシュアップしたとインタビューにありましたが、上手くハマっていたと思います。
物語をクリアする頃には、夏を堪能した!という気分になりました。
▼カメラのレンズフレアをきっちりと再現。映像の豪華さが上がりました
続いて、世界観と日常のつながりについて。
今回のシナリオには、『灼眼のシャナ』で知られる作家の高橋弥七郎さんが協力しています。
そのためか、世界観が凝っている印象を受けました。
詳細は伏せますが、ライザ達の冒険により「発見が生まれる」世界観になっています。
更に良いのは、その世界観の作り込みが単なる設定で終わっていないこと。
きちんと、設定がメインストーリーにも絡みますし、主題であるライザの日常にも絡んでくる。
練られた世界観が活きてくるというのは、アトリエシリーズとしては新鮮でストーリーに引き込まれました。
△シナリオ:”村社会”を感じるシナリオ・感情の動きに違和感
続いて気になった点。
こちらも2つです。
①無駄にリアルな村社会を感じるシナリオ
②感情の動きに違和感があるシーンが多い
端的に紹介します。
1つ目の村社会を感じるシナリオ。
今作は、クーケン島という閉じた島が舞台です。
シナリオでは、”閉塞した村社会”といった空気を無駄にリアルに感じるシーンがありました。
特に中盤あたりなのですが・・・
ライザを都合よくおだてて使い、都合が悪くなったら手のひらを返す。
しかも、徒党を組んで手のひらを返す。
若者の話は基本的に聞かずに、古くからの慣習を重視する。
「改革に燃える若者が地方へ打って出るも、田舎の閉塞感に負けて東京へ帰る」なんて話はよく聞きます。
そんな空気をゲームで感じ、プレイしていて少しイラッとしました。
▼ライザはノリノリですが、無償で奉仕活動させられるシナリオはちょっと疑問符
2つ目の感情の動きについて。
これは全体通してなのですが、”なんかズレている”セリフが多い印象を受けました。
例としては・・・
・基本的にややネガティブなセリフが目につく。
・頑張って何かを達成して喜んでいるのに、この程度で喜んでも・・・と冷水を浴びせる。
・特にそんな描写もなかったのに、唐突にカップルっぽい会話が始まる。
などなど。
え、いまそれ言っちゃうの?とかそんな前フリあったっけ?
と思うようなシーンが目に付き、キャラへの感情移入が少し弱くなりました。
結論としては、全体の構成は光るが、細部のシーンづくりはいまいちという感想です。
◎キャラ:ライザと愉快な仲間たち
アトリエの大きな魅力であるキャラクター。
今作のキャラは良かったと思います。
物語の序盤からメインキャラの6人で行動を共にするので、団結感がありました。
キャラの役割も、家族に例えるなら父母姉兄ライザ弟と言う感じの構成となっていてバランスが良い。
会話の雰囲気が暖かく、クリアするのが名残惜しくなるキャラたちです。
▼メニュー画面がシナリオとともに変わる。仲良し家族感が心地良いパーティーでした
その中で、特に印象に残ったのはライザとリラ&アンペルです。
まず、ライザ。
さすが、バズったキャラです。
キャラデザは最高。
動かしているだけでも華があって楽しい。
キャラとしても、明るくリーダーシップがある女の子で、好ましい。
考えるより、まず動く!という体当たり系女子。
例えるなら、バランスの取れた「涼宮ハルヒ」のような感じで見ていて楽しいキャラでした。
▼無茶を言うけど大体うまくいくライザ。この表情が一番好き
続いて、リラ&アンペルです。
リラが戦闘の師匠、アンペルが錬金術の師匠という役回り。
序盤は師匠らしくライザたちを指導してくれる。
後半では、成長したライザたちを認めて仲間として接してくれる。
2人の大人な立ち回りに安心感がありました。
そして、この2人のコンビ感も良かった。
長年、共に旅をしている2人。
なので、熟年夫婦っぽく互いを分かり合っている感じが会話の節々に出てきます。
それでいて、恋愛っぽい流れでは、付き合い始めのカップルのような微妙な距離感を保っている。
色々と美味しい役回りのコンビで、気に入りました。
◎演出:ひと夏の冒険の描き方。進化した演出
演出周りは進化したと思います。
カメラワークは凝っており、映像のつながりに意味が生まれていました。
ただ、中盤以降は力尽きたのか、機械的なカメラワークが増えてキャラを写しているだけに変わってしまったのは惜しい。
音楽は相変わらずいい。
『シャリーのアトリエ』や『ブルーリフレクション』のアサノハヤトさんが戻ってきてくれたのが個人的にとても嬉しかったです。
ダンジョンはそこそこ綺麗でした。
ランドマークシステムを追加し、見所を明確にしたのが良い。
ゼノブレイドのイメージですかね。
あとは見所となる名所がもっと作り込まれている、ユニークな敵を置くなどの工夫が増えればより良くなると感じました。
あと、イベントスチルについて。
アトリエでは大事なシーンは1枚絵で表現されます。
今作は、キャラデザを担当したトリダモノさんが担当されています。
こちらも枚数はあまり多くないものの、クオリティの高い良いイラストになっていました。
○システム:一新されたシステム① バトル
最後に、システムについて紹介します。
今作はアトリエシリーズのお約束から離れた、新しいシステムがいくつも登場しています。
とりわけ変化が大きかったのは「バトル」と「調合」でしょう。
まず、バトル。
従来は、ターン制のコマンドバトル。静的なものでした。
それが、今回はリアルタイムに状況が変化していく動的なものに変わりました。
感想としては、”荒削り”といったところです。
戦闘のテンポ感は確かによくなりました。
仲間のオーダーに応えた動きをすると、スキルが発動するシステムも共闘感があっていい。
あとは、必殺技の演出もかっこよく見応えがありました。
▼左上の指示に従うと仲間のスキルが発動する
▼必殺技の1カット。表情が妖艶で普段とのギャップが有る
一方で、アトリエの大味な戦闘がリアルタイムにあっているかと言われると、う~ん。
例えば、状態異常について。
今作は状態異常の種類が多くその影響も多い。
ですが、戦闘スピードが早すぎて処理が追いつきません。
いつの間にかゾンビ状態的なのになり、気づかずに回復薬使って死亡という事故が多発しました。辛い。
細かいHPの管理もこの戦闘スピードだと難しい。
結果として、私の場合は万全に勝てる状態を整えて、押し勝つ。
といった戦略性の乏しいスタイルが定石になってしまいました。
あとは、アイテムを使える回数が制限されているのも微妙です。
アイテムが主役なのにエリクサー症候群が発動してしまって、ザコ敵とのバトルで使いにくい。
しかも、ザコ敵が微妙に固いので時間を取られます。
それと、アイテムはボス戦の切り札という位置づけだとしても、少し性能が弱いような・・・
能力を上げたキャラのスキルの方がダメージが出ます。
結果として、目玉であるアイテムの陰が薄かったように思いました。
◎システム:一新されたシステム② 調合
続いて、調合システム。
だいぶ、触りやすいものになったように思い、私は気に入りました。
まず、視覚的に理解しやすくなった。
アイテムの効果がどこにあるかがわかっているので、狙った効果を出しやすくなりました。
▼欲しい効果のところにアイテムを置くだけで良い。画面のライザが可愛いのも重要ポイント
続いて、今回から導入された複製システム。
作ったアイテムをコピーできる機能が中盤で解禁されますが、これが超便利。
貴重な素材を消化するアイテムを何度も調合する必要がなくなります。
過去作にも「量販」という似たシステムはありました。
ただ、量販は数が制限されていたり、場所がアトリエの外だったりと色々制約がありました。
その制限が外されシンプルになり、調合のストレスが減りました。
もう一つが、素材となるアイテムの豊富さについて。
※シリーズ経験者向きの内容です
今作は、自分で調合したアイテムに付与されるカテゴリが多めな気がします。
また、効果を発現させるための属性値も高い状態にしやすい。
つまるところ、素材として優秀なアイテムを簡単に自分で作れます。
なので、完成形に至るルート構築が大分簡単でした。
△細かい点で手が届いていないところが・・・
このように、従来のアトリエから新しいことを取り入れた今作。
新しい内容が形になっているのは凄い!
ただ、その”ひずみ”が細かい部分の完成度に出ているように思いますのでサラッと書いときます。
・セリフの自動送りはいい加減実装してほしい
・フィールドでの杖振りのモーションが遅い
・商店に話しかけた時、一瞬硬直が発生する
・ザコ敵の配置数が多すぎ
・ロード少し長い(マップ切替時に2~4秒)
・モーションと表情のバリエーションは相変わらず少なめ
・色違い敵キャラ多すぎ
ちょっとストレスを生む要素がつめきれてない感じがして、惜しかったかなと思います。
・・・まぁ、発売が決算期ですしね。
DLCについて
シーズンパスは、7,480円(税込)。
追加ストーリー、追加マップ、追加衣装等が含まれている。
追加ストーリーはスチルを見る限り、おそらくボイス無しになるかと思います。
値段分の、ボリュームの多いストーリーになっていることを期待したいところです。
▼なお、個人的に買いだと思うのはクラウディアの水着衣装。・・・買いでしょう。
総評価と感想
ここまで見てきたように、良いところと気になるところが表裏一体となった作品という印象です。
チャレンジであった調合・バトル・シナリオについてアトリエのお約束から離れる。
このチャレンジは成功と言っていい出来に感じました。
新シリーズ第1作目でこれなら、ブラッシュアップされた2作目以降に期待が持てます。
おすすめしたい方ですが、お約束を離れたとはいえ調合の面白さやキャラの魅力というアトリエの本質は変わらない。
なので、従来のアトリエが好きな方にはおすすめです。
キャラの出番は多いので、メインキャラのデザが気になる方にもおすすめできます。
以上、『ライザのアトリエ』のレビューでした。
※前作『ルルアのアトリエ』のレビューも書いてます。
気になる方は、ご参考にどうぞ。
要素別評価(5段階)の理由
カテゴリ:日常・ファンタジー・RPG
総評価:★★★★☆(74点)
シナリオ:★★★☆☆
レビューの通り。
キャラクター :★★★★☆
パーティの家族感は良い。
一方で、キャラ個人のエピソードがシナリオに落とし込まれていたかというとやや疑問符。
これを掘り下げられて入ればより良かった。
システム:★★★★☆
レビューの通り。
荒削りだが形にはなっていた印象。細かい部分の改善は対応が必要。
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★★☆ 絵・グラフィック :★★★★☆ アイデア:★★★☆☆)
カメラを意識したグラフィックの進化は良い。
ただ、カメラのブレ演出を使いすぎていたり、カメラワークが途中で力尽きたりとまだまだ課題あり。
フィールドオブジェクトのクオリティが低いのも、カメラだけではなんともならない。
キャラのバトルモーションは非常に良くなった。後は日常芝居がもっと作り込まれれば・・・
ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想)
ここからは、肩肘張らずにネタバレありで感想を書き連ねます。
未プレイの方は、バックをお願いします。
↓
↓
では。
世界観とシナリオについて
ようやくライザのアトリエをクリアしました。
いやぁ、今回のアトリエは厨二成分高めでしたね!もっとやろう!
クーケン島の正体、異界、フィルフサ、将軍(←少しダサい)など・・・
””をつけたくなる厨二設定のオンパレードでした。
▼まさかの人工島。このシーンはゾクッとしました
レビューでも描きましたが、設定がライザの日常とつながってるのが良いんですよね。
異界で失われた水が、クーケン島の命脈となっている。
ライザの日常を変えた錬金術が、過去の悲劇と現在のクーケン島の根幹にある。
こういった設定から生まれる葛藤は見ごたえがありました。
この設定で美味しいのは、やっぱりボオス君でしょう。
誇りとしていた家の繁栄は、命の恩人・キロの犠牲のもとにあった。
それが分かった時の古式秘具を即壊しに行くボオスの行動がかっこいい。
その後もキロに会いに行くためにレントと修行したり、行動がカッコ可愛かった!
中盤のイライラシナリオの原因となった漁師に噂を流す行動。
それについて、目をつむりたくなる終盤の活躍でした。悪いのは古老と漁師ということにしておきましょう。
ただし、ライザとちょっといい雰囲気なるのは許しません。
シナリオで特に良かったのは、EDですね。
”ばいばい、アトリエ”
プレイする前は、これをライザの旅立ちと捉えていたのですがまさかの逆。
仲間たちがアトリエを去っていくとは・・・驚きでした。
アトリエが、未来へ飛翔する彼らにとっての仮初の宿だった。
それを、”秘密基地”として表現するセンスはぐっと来ました。
成長して旅立つ仲間と対照的なのがライザ。
彼女にとっての成長は、「なんてことない日常」の再発見。
なんてことないに尊さを見つける旅でした。
コンセプトは凄く面白い。
ただ、これを表現するためにも、家族の描写や島の人情はもっと丁寧に描けてたら良かったのになぁというのは惜しい点。
それでも、シナリオの中で成長した彼らの旅立ちと見送る姿を描いたED。
ひと夏の冒険という輝きと切なさを内包した、アトリエの中でも屈指の良EDだと思います。
ライザの旅立ちが、次回作でどう表現されるのか・・・期待が深まる1作でした。