2019年3月20日発売のゲーム『ルルアのアトリエ』をネタバレ無しで未プレイの方も読めるように感想・評価とあわせてレビューします。
・記事作成時のプレイ時間:40時間、ノーマルエンドクリア済み
・管理人はアトリエシリーズ全作品のうち、約9割をプレイ済み
※5/28追記(参考情報)
アトリエシリーズ最新作「ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜 」(2019年秋発売予定)が発表されました。従来のシリーズからプレイ感を変えた挑戦的な作品になるそうなので、今から楽しみです。
おすすめ度:★★★★☆(75点)
一言感想 :疲れた心が癒やされる、魅力的なキャラたちと触れ合う楽しいひと時
概要・作品紹介『ルルアのアトリエ』
ストーリー
舞台はアーランド共和国の辺境にある街――アーキュリス。
この街に、一人の錬金術士の少女が暮らしています。
ふらりと街を訪れたピアニャという錬金術士の弟子として、
日々調合に邁進する少女。
彼女の夢はずばり、「偉大な錬金術士である母親を超えること」。
そして、彼女の母親の名前は――【ロロライナ・フリクセル】。
『フリクセル』の名を継ぐ彼女はある日、一冊の本を拾います。
自分以外には読めないその本は、とても難解なもの。
必死の思いで最初の1ページを解読すると、
少女は確かに、自分になにかの力が宿ったことを感じます。
持ち前の好奇心と、夢への希望を胸に、
少女はその書物を解読していくことにします。
彼女のそんな『思いつき』は、やがてアーキュリス、
ひいてはアーランドの『真実』を
解き明かしていくことに繋がるのでした――
○ファンタジー世界での冒険+日常を描くアトリエシリーズ。その中でも特に人気が高い「アーランドシリーズ」の7年ぶりの続編。
○魅力的なキャラクターたちとの楽しく暖かい会話劇がプレイ時間の5割ほどを占める。残りは冒険とアイテム製作(調合)。
○錬金術によりアイテムを作り、探索や戦闘に役立てていく「調合システム」は他の作品では味わえない楽しさがある。
では、内容に入っていきます。
昨年に発売された「リディー&スールのアトリエ」以来、1年ぶりにアトリエをプレイし、ようやく「ルルアのアトリエ」のノーマルエンドにたどり着きました。
結論から言えば、今作はアトリエシリーズの中で、トップクラスの出来だと思います。
それは、次の2つの要素と、更にその2つの要素が上手く合わさったことにより、とても高い満足感があったからです。
1つは、「メルルのアトリエ」で一度は途切れてしまった「アーランドシリーズ」のその先が描かれるというシリーズファンならではの要素。
アーランドシリーズの主人公達、ロロナ・トトリ・メルルにまた会えます。
それ以外のキャラクターたちも多数出演し、プレイしていて懐かしかったです。
もう1つは、今作「ルルアのアトリエ」ならではの魅力。
今作は、メインストーリーがアトリエシリーズの中ではだいぶしっかりしてると感じました(気になる点もありましたが)。
また、ルルアのアトリエから出演する新キャラクター達がとても魅力的でした。
そして、これら2つの要素が上手く合わさる。
過去の要素やキャラクターと、ルルアからの新キャラの絡みが新鮮かつ意外性があり楽しい。
こういった点から「ルルアのアトリエ」は、今作からアトリエをプレイする人も、普段のアトリエシリーズの新作並みに楽しめると思います。
ただし、過去作をプレイした人は更に数倍楽しめる作品だと感じました。
さて、今回のレビューではこのような「良かったと感じた3つの要素」と、「気になったシナリオ面や演出面」などを中心に「ルルアのアトリエ」を紹介します。
要素別評価(5段階)
カテゴリ:日常・ファンタジー・RPG
総評価:★★★★☆(75点)
シナリオ:★★★☆☆
キャラクター :★★★★★
システム:★★★★☆
演出 :★★★☆☆
(音楽 :★★★★☆ 絵・グラフィック :★★★★☆ アイデア:★★☆☆☆)
※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。
◎自然と応援したくなる新キャラクター達の魅力
まずは、良かった点として「ルルアのアトリエ」からの新キャラクターたちの魅力をご紹介します。
苦労人っぽさが応援したくなる
今作からの新キャラクターは、メインキャラでは幼馴染の「エーファ」やイケメン枠の「オーレル」。
サブキャラクターでは同郷の友人である「リーザ」と「レフレ」などがいます。
この新キャラたちがどのキャラも魅力的でした。
■今作のメインキャラ達
それはきっと、どのキャラも応援したくなる要素があったからだと思います。
例えば、イケメン枠の「オーレル」はイケメンで剣の達人、かつ金持ち。
普通ならイラッとする属性がてんこ盛りです。
ところが、作中でのオーレルの描かれ方は素直になれない意地っ張りな性格のせいで損をしたり、周りの強い女性陣(特に主人公のルルア)に振り回されてひどい目にあうことが多い。
つまり、出来るやつなのに苦労人なんです。
そういった苦労人感と、なんだかんだルルアに惹かれていく姿が描かれるので、段々とオーレルを好きになることが出来ました。
このような感じに、新キャラクターたちはどのキャラもどことなく応援したくなる要素が詰め込まれていて、自然と好きになるキャラになっていたと思います。
忘れてはいけない新主人公「ルルア」の魅力
更に、新キャラの筆頭である主人公の「ルルア」もすごくいいキャラをしていました。
基本的には明るく元気で素直、そして猪突猛進。
今作では新キャラと過去キャラが入り乱れているので、ルルアは大人数のキャラと絡んでいくことになるのですが、
彼女ならではの真っ直ぐさと人懐こさのおかげで、どのキャラともコミカルで楽しい会話劇を繰り広げていました。
メインシナリオでも、周囲のために一生懸命頑張るひたむきさが描かれており、きちんと筋の通ったキャラクターで好ましかったです。
◎キャラ達を面白おかしく描く会話劇の進化
アトリエシリーズで欠かせないのが、各キャラの日常を描く豊富な会話劇です。
「ルルアのアトリエ」ではこの点がだいぶ進化したと思います。
3Dに慣れてきたのか、画面のレイアウトやキャラの配置が凝ったシーンが多く、今までの作品より見ていて満足度がありました。
また、会話劇の中身も起承転結がしっかりしており、さらっと笑える内容のものが多かったと思います。
微妙なときのアトリエは、イベントは画面に動きがなくドラマCDを聞いているよう。
話も起承転結がなくリアクションに困るケースが合ったので、この点は高評価できます。
◎過去キャラの「その先」が気持ちよく描かれる
ここからは、過去キャラ関係の話に移ります。
トトリやメルル、そしてミミなど人気の高い過去キャラクターの未来が今作では描かれています。
その描かれ方が素晴らしい。詳細は避けますが、プレイヤーの期待通りになっているという感想です。
セリフの所々に今の価値観などが感じられ、過去作での冒険を血肉にして成長したんだなぁと懐かしさと感慨を覚えました。
◎新キャラと過去キャラの絡み合いにより生まれるファンサービス
そんな成長した過去キャラたちが新キャラクターと絡むわけですが、その絡み方も良い。
例えば、主人公のルルアはなんと、1作目の主人公ロロナの娘という驚きの立ち位置です。
ロロナの知り合いである色々な過去のキャラクターたちとルルアは絡むわけですが、ロロナの娘であるということをすぐに明かさないケースがあります。
そのため、いつ過去キャラたちはルルアがロロナの娘だと気づくのかとやきもきしながら、また、気づいたときの反応を期待しながら見れました。
シリーズをプレイした人ならすぐに察せられることを、ゲームのキャラたちがいつ察するのかを期待しながら見れる、そんな楽しみ方が出来る描かれ方をしていました。
また、新キャラと過去キャラが予想外な形でつながっている場合もあり、意外性がありました。
そんな、過去のキャラや要素と新キャラを上手くつなぎ合わせて生まれるファンサービス要素に、プレイしていて充実感がありました。
◎メインシナリオが骨太な出来(アトリエシリーズ比較)
続いて、メインシナリオの話です。
アトリエシリーズの中では大分良いシナリオだったと思います。
最近のアトリエシリーズは、目標と達成を描くケースが多いです。
今作もその流れに従い、大筋は目標と達成を描くものとなっています。
ただ、今作が一味違うのは、伏線と謎の見せ方が上手なところ。
話の核となっている謎めいた本「アルケミリドル」とは一体何なのか。
意味ありげなセリフをつぶやくこのキャラは何を知っているのかなど。
つまり、プレイヤーの興味をかき立てる要素が上手く散りばめられており、シナリオに推進力がありました。
■「アルケミリドル」(本)
また、話の筋も変な方向に曲がることなく、無駄なくまとまっていました。
この点も、プレイし終わったあとの充実感につながっていたと思います。
◎イベントスチルが豊富で驚き
見てもらうしかないないようなので、さらっとしか触れれませんが、
イベントスチルがとても多いです。
しかも背景・キャラともに描き込まれておりクオリティがどれも高い。
見ていて大変幸せでした。
◎簡単にシステム面の進化をご紹介
システム面の進化もあったのでシリーズプレイヤー向けに箇条書きで紹介します。
①調合の新システム「覚醒」
アイテムに新たな変化を生むことが出来るこのシステム。
特にすごいのはアイテムにカテゴリを追加できてしまうところ。
このシステムにより、中和剤に「鉱石」などのカテゴリを付与出来るため、アイテム作成のルートが多岐にわたり楽しかったです。
②アイテムの効果が数値化
アトリエシリーズアイテムの効果・特性は「物理ダメージ・超」など、どれくらい強いかよくわからない効果だらけでしたが、これが数値化されました。
これにより、アイテムの価値がわかりやすくなったと思います。
③バトルの新システム「インタラプト」
アイテムを数量消費無し、ターン消費なし、更に任意のタイミングで発動できるこのシステム。
アイテムの価値が飛躍的に増し、戦術に組み込みやすくなりました。
△気になった点について
ここからは、気になった点について紹介します。
DLCが高い
4月に入り、DLCが発表されました(公式サイトへのリンク)が・・・
とにかくDLCが高い!
DLCでは、パーティーキャラにトトリ・メルルを追加できます。
各1000円(税別・声抜き)で。
そこはせめて税込みにしてほしいところです・・・というか、声抜きってなんだよ!という感じです。
※公式サイトによると、イベントボイスは収録されていないとのこと。
高額自体は許せても、更に手抜きを重ねるというのは流石に作品自体の評価を下げると思いました。
メインシナリオは掘り下げ不足
良かった点としてメインシナリオを上げていますが、実は気になった点の1つもメインシナリオです。
作中でとある問題解決のためにルルアが各地を走り回り頑張るわけですが、その動機付けが弱かったように感じます。
なぜルルアがそこまで頑張りたくなるのか、そこに感情移入できるもうひと工夫が足りなかった。
そのため、シナリオ終盤のカタルシスがいまいち弱かったと思いました。
大筋はまとまっていただけに、あと一歩、爆発力のあるシナリオであれば傑作になりえたのではないでしょうか。
キャラクターシナリオは起承転結が弱い
今作はメインキャラ・サブキャラ共に一連のキャラクターシナリオがあります(ボリュームの差はあり)。
キャラクターシナリオの会話劇は、点で見れば楽しく見れるものばかりです。
しかし、それらがイマイチつながっていない。
会話劇のワンシーンで終わっていて大筋のシナリオになっていないキャラクターシナリオが多かったように感じます。
そのため、多くはあまり印象に残りませんでした。
ただ、良いものもいくつかありました。例えば、サブキャラのレフレのシナリオはレフレが健気で可愛らしい。
メインキャラではオーレルのシナリオは夢を追う青年と応援する少女という王道な設定を、少女漫画っぽい雰囲気で描いておりハートフルな感じでした。
■右:レフレ(かわいい)
演出がまだまだ単調
日常イベントの演出はカメラの工夫などで大分楽しく見れるようになったのですが、ここぞというシーンでの爆発力のある演出はまだまだ足りないと思います。
基本的にBGMを流して棒立ちの会話劇となっているため盛り上がりようがありません。
また、絵に変化がないからか、それにあわせて声優さんの演技も抑えめで統一されているように思います。
モーションを多くする、盛り上げ専用のBGMを用意する、ギャルゲーのように上手く省エネで効果的な演出を探るなど、
もっとシーンを印象的に見せる工夫を追求していってほしいと思います。
感想・総評価「ルルアのアトリエ」
◎過去作のキャラ・新作のキャラそれぞれの魅力を引き出し、更にそれらを絡み合わせて新たな魅力を作る構成は素晴らしい
◎ミニイベントの会話劇は起承転結がしっかりしていてどれもさらっと笑える楽しい出来
◎メインシナリオは伏線の散らし方が上手く推進力のあるものとなっていて楽しい。
◎イベントスチル、多めでお得な出来。
△メインシナリオは感情移入させる工夫が足りないためカタルシスがやや不足
△演出はモーションの不足などにより爆発力不足。印象深いシーンはあまり生まれなかった。
感想としては、アトリエシリーズに見られる弱点の改善には至らなかったものの、良いところは大分ブラッシュアップされていると感じました。
そして何よりも、キャラクターがいいキャラばかりなため、プレイしていて楽しいひと時になり、癒やされました。
暖かいファンタジー世界に触れたい方や、楽しいキャラクターが見たい方には自身を持っておすすめできる1作です。
ルルアは今作で終わらせるにはもったいないキャラなので、次回作や新シリーズに出演させるなどで活かしてほしいものです。