ゲーム『英雄伝説 創の軌跡』をネタバレなし評価(未プレイの方向け)とネタバレあり感想(プレイ済みの方向け)でレビューしていきます。
・記事作成時のプレイ時間:約50時間(クリア済み)
・管理人は軌跡シリーズを『空』~『閃』までプレイ済み
おすすめ度:★★★★☆(80点)
一言感想:新たな挑戦が込められた軌跡シリーズの未来を感じる1作
要素別評価(5段階)
カテゴリ:RPG
総評価:★★★★☆(80点)
シナリオ:★★★★☆
キャラクター :★★★★☆
システム:★★★★☆
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵・グラフィック :★★★★☆ アイデア:★★★★☆)
※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。
『英雄伝説 創の軌跡』レビュー「軌跡シリーズの終わりと始まり」
『零』から『閃』へと続く物語、堂々完結!
キャラの成長が眩しくそして寂しい、シリーズの区切りを感じる作品でした。
今回紹介するのは、『英雄伝説 創の軌跡』。
『英雄伝説VI 空の軌跡(2004年)』から脈々と続くストーリーRPG『軌跡シリーズ』の最新作です。
まず『軌跡シリーズ』についてですが、最新作を遊ぶ方は前作までのシリーズ作品を一通りプレイしておくことを強くおすすめします。
キャラと世界観は1作目から引き継がれており、シリーズのキャラをある程度知っていることを前提とした演出が多く盛り込まれているからです。
▼例えば下のキャラは直近の『閃』シリーズには登場していない
もし『軌跡シリーズ』を未プレイの方がいらっしゃったら…
・魅力的なキャラクター
・驚きが生まれる展開
・主人公が英雄となるまでを描く、王道で爽快感のあるストーリー
上のキーワードにどれかひとつでも刺さるものがあれば是非、『空の軌跡』から『軌跡シリーズ』へ触れてみて欲しいと思います!
さて、今回のレビューでは『空の軌跡』から前作『閃の軌跡Ⅳ』までをプレイしている前提で、『英雄伝説 創の軌跡』を紹介します。
前段が長くなりましたので簡潔にレビューの結論を紹介すると…
・演出が進化しているのは要注目!
・全体としてストーリーはまぁまぁな出来
・注目のCルートは満足感が高い!
・ミニゲームの中に神イベントが…
という内容でレビューしていきます!
※ネタバレあり感想はページ下部に掲載しています
◎演出:進化した画面の吸引力!
まず今作で最も進化を感じたのが演出面。
見ていてググっと引き込まれるシーンがいくつもありました!
どんな部分が進化したのか…。
具体的に紹介していきます。
まず、カメラワーク。
これまでの軌跡シリーズは、基本的に「カメラが動かなかった」と思います。
カメラは定点で固定。
カメラを何度も切り替えることで、画面に動きを出していました。
それが今作では、「カメラ自体が動きます」。
ビルをカメラが回り込む、キャラをカメラが追いかけるなど…
今までもよりもアニメや映画に近い演出が盛り込まれている。
特にアクションシーンにはこれまでに無い迫力が生まれていました。
続いてモーションについても進化が見られます。
これまでのモーションは正直、地味な印象でした。
汎用性のあるモーションをいくつか作り、それを組み合わせてアクションシーンを作っていく。
そのため、どのシーンも既視感があった。
いうなれば金太郎飴なムービーが続くという印象でした。
それが今回は、「そのシーンのためだけに使うモーション」をちゃんと作っています。
これにより、新鮮さを感じるシーンが生まれていたと思います。
▼モーションについてはPVをご覧ください
モーションについてもう1点。
今作で必ず注目すべきはキャラの表情です。
キャラがちゃんと芝居をしています。
喜怒哀楽といった表情をデジタルに切り替えるだけじゃない。
より人間的な表現が出来ていたと思います。
視線で語る芝居、表情が移り変わる様、表情のパターンの多さなど…。
ドキッとするような表情に引き込まれます。
キャラの活躍が表情により引き立てられている。
そう思えるようなシーンがいくつも生まれていたのに驚きました!
〇シナリオ:本篇で新キャラは輝き、いつものキャラは物足りない
続いて、軌跡シリーズの肝であるメインシナリオの感想です。
一言で言えば、それなりに満足といったところ。
細かく言えば、良い点と悪い点がはっきり分かれたなぁという印象を持ちました。
まずは良かった点。
今作で描かれる3つのルートのうち、Cルートの出来は特によかった!
何よりもCルートのキャラが良いんです。
天真爛漫な人形ラピス。
苦労人のスウィンと、癒やし系腹黒なナーディア。
そして、平均年齢の低いパーティーを引率する仮面の男・C。
利害関係でパーティーとなった彼らが、段々と距離を縮め、やがて仲間に変わっていく。
今風の少しクセのあるキャラが織りなす王道なシナリオに引き込まれました!
▼愛らしい外見でパーティーの闇担当・ナーディア
その他2つのルートについては…そこそこな出来。
シナリオ全体で謎の置き方は上手かったと思います。
仮面の男の正体、黒ローブの男の正体、今作のシナリオの全容とは…。
大小いくつもの謎が提示され、解決されていく流れに夢中になりました。
一方で悪かった点は3つ。
1つはキャラクターが立ち向かう「壁」の出涸らし感。
ロイドとリインは、これまでにいくつもの壁に立ち向かってきました。
本来ならもう、成長しすぎて無双状態になってるところです。
それに壁を作るがどんなに難しいことなのか…。
そんな難しさが特に出ていたのがロイドルートでした。
シナリオのため、なんとか壁や葛藤を作ろうとしている感じがどうしても伝わってきてしまう。
悩みに新鮮さがないし、感情の流れにも無理があるように思えて共感しがたい。
ロイド達らしくない悩み方にあまり共感できませんでした。
▼レベル100を超えたキャラには、相応の壁を出して欲しいが…
2つ目はキャラの扱い方が雑という点です。
雑というのはどういうことかと言えば、一部のルートでキャラの葛藤が省略されてしまっているということ。
例えば、『閃』シリーズでたまに使われた洗脳という手法が今作も時々顔を見せます。
洗脳は…やっぱり禁じ手ですよ!
悩むことなく裏切られてしまっては、キャラへの共感がそがれてしまいます。
それ以外でも詳細は伏せますが、既存キャラを雑に戦わせる手法が使われていて少し醒めてしまう部分がありました。
▼このキャラたちは一体何者…!(棒)
3つ目は、3人の主人公を切り替えながら進めていくことの難しさ。
つまるところ、尺が足りない!
全ルート共通で気になったのですが、葛藤⇒解決の流れに必要な描写があと少し足りていないと感じます。
あと一つか二つ、大きなエピソードを入れられればもっと説得力が増すと感じるシーンがあったのは惜しい。
〇シナリオ:キャラへの愛着が更に深まる小品たち
今作では『空の軌跡 the 3rd』のように、キャラのエピソードを短編として見れます。
短編のクオリティはどれも高く、とても楽しめました!
個性的なキャラクター達の意外な一面を上手く描いていました。
▼ファン待望の?組み合わせも見られるノリの良さ
私が特に印象に残ったのは「オリビエの結婚式と「レクターのその後」に関するエピソードです。
前者では、オリビエに縁のあるキャラクターの活躍が楽しめる。
後者では閃終了後に「残された者」としてのレクターの葛藤が描かれている。
キャラの深みが増し、愛着が更に湧くサブシナリオが多かったと感じました。
◎システム:アルティナが近い!!なサブイベント
最後に細かい点を。
まず戦闘ですが、今作は『アーツゲー』が加速しています。
クオーツが揃ってきた後は、オーダーと組み合わせるとクラフトとは比較にならないダメージをアーツで出せます。
歴戦の軌跡プレイヤーであれば、それほど詰まることなくクリアできるでしょう。
続いてミニゲームですが、どれも面白い。
「ポムっと」や「VM」など、これまでの総決算のようなミニゲームの数々を懐かしく楽しめます。
▼遊び心爆発なミニゲームも見られ、充実感がありました
ただ、それよりも遙かに印象に残ったのが『ビーチ DE バカンス』というサブイベント内の『コミュニケーションイベント』です。
その名の通り、ビーチへバカンスに来たリインがヒロインたちとコミュニケーションを取るというこのイベント。
…神イベントでした!!
一人称視点な画面は「あれ、これギャルゲーだったっけ?」という疑問が湧いてくるほど、キャラが近い!
しかも、普段よりも距離感の近い、恋人一歩手前のような会話が繰り広げられる。
軌跡のキャラが好きな人にはたまりません。
アップデートにより今後、VRにも対応すると言うことで非常に楽しみです。
▼神イベント。アルティナはやっぱり可愛い
総評価と感想
軌跡シリーズの半期決算な今作。
物足りないところもあるにはあります。
ですが、それ以上に軌跡シリーズに注ぐ日本ファルコムさんの愛を非常に感じました!
今まで作ってきたものをちゃんと活かそうとする姿勢。
新しい技術を使ってより良い軌跡シリーズにしようという挑戦。
「きっと、今後もっと進化した軌跡シリーズが遊べるだろう」
プレイしていてそんな確信を得られ、未来への期待が高まっていく。
『創』というタイトルにふさわしい1作のように思いました。
※ネタバレに踏み込んだ感想は更に下の「ネタバレあり感想」へ!
要素別評価(5段階)の理由
カテゴリ:RPG
総評価:★★★★☆(80点)
シナリオ:★★★★☆
記事の通り。
キャラクター :★★★★☆
シリーズとシナリオが積み重なり生まれたキャラ達には、愛着もひとしお。
今作からの新キャラたちもいい味を出している。
今作のシナリオはキャラの魅力があってこそ成立しているものでしょう。
システム:★★★★☆
戦闘はマンネリながらもまとまったもの。
サブイベントの豊富さが楽しい。
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵・グラフィック :★★★★☆ アイデア:★★★★☆)
音楽についてはガツンと耳に残るBGMは乏しかった印象。
今までは音楽とセリフのインパクトで演出を強化していましたが、今回は映像が演出をリードしてくれているように感じました。
ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想)
ここからは、肩肘張らずにネタバレありで感想を書き連ねます。
未プレイの方は、バックをお願いします。
↓
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では始めます。
Cルートについて
まずはCルートの感想から。
テーマは自分探し。
起きた事件はエリュシオンの発生と消滅でした。
いやぁラピス、可愛かったですね!!
Cルートはやはり登場するキャラたちが光っていたのが特徴だったと思います。
閃4までに悪行を積み重ねた邪気の塊のようなルーファス。
そして、無邪気で天真爛漫なラピスという組み合わせは完璧!
二人が「自分を探している」という点でつながり、惹かれあっていく姿が本当に可愛い。
飛行船での語らいは少し突然感もあったのですが、雰囲気がとても良くグッときました。
ルーファスにラピスが見つけてもらえて喜ぶシーンなんかも可愛い。
ラストではそんなルーファスに恩返しをするラピス。
一連の流れがとてもきれいで、二人の仲がほほえましかったです。
▼文句なしにイケメンです。
しかし、ホムンクルスと恋人なユーシスといい、人形と良い関係なルーファスといい…業が深い
ルーファスの成長物語としても好きです!
彼は『閃』では無様なまでの迷走を続けていました。
自分自身のアイデンティティを”父”に求めていたルーファス。
仲間たちと触れ合ううちに、自分を他者に求めるのではなく、自分自身の想いを見つめていく。
そしてラストでは、他者とのつながりの中に自分自身を見出す。
EDにてあらゆる肩書を失っても彼が生きていけるのは、大切に思う仲間たちがいるからに他ならない。
結末も含め、本当にきれいです。
正直、ルーファスをここまで好きになってしまうのは悔しくも嬉しい誤算でした!
作風としては全体的にピカレスクロマン風な、軌跡としてはやや珍しい感じが新鮮。
ルーファスというキャラならではの活躍には納得感もあり、ルーファス主人公というアイデアは良く機能していたと思います。
▼活躍するキャラがことごとく前科者なのが好き
気になった点としては、中盤でラピスをルーファスが見つけることのできた理由です。
キャラならではな理由ではあったのですが、個人的には少し逃げたなと。
テーマに直結するシーンだったので、テーマに準じたアイデアであればもっと良かったのにとは思いました。
あとはロイドさんの「君は俺がもらう」に続く迷セリフ。
「絆を甘く見た容疑」
これは流石にやりすぎかなぁと思いました…笑いましたが。
ロイドルートについて
続いてロイドルートです。
主題は象徴からの脱却。
事件はルーファスによるクロスベル占領でした。
率直にもっとも残念だったのがこのルートです。
物語の流れは『碧』の焼き直しに近い。
主題となるロイドたちの心の変化についても共感しにくい。
クロスベルの象徴として頑張ることの何が悪いんだろう?
『閃』ではそれが肯定的に描かれていたような…?
と疑問がよく挟まりました。
何より気になったのがイリアの使い方と舞によるクロスベルの洗脳という手法です。
レビューでも書いた通り、ちょっとキャラを雑に扱いすぎという感想を抱きました。
対立するのであれば、それ相応の葛藤をきちんと描いてあげることが、キャラに向き合うことだと思います。
▼踊りがもう少しかっこよかったら説得力もあった…のかな?
良いところにも触れましょう!
一つは、ノエルの突入シーン。
PVでも使われたバイクで颯爽と現れるノエルは可愛いカッコいい!
もう一つはラストの謎解きシーンです。
ロイドならではの謎解きによる見せ場は、『零』の頃を思い出して胸が熱くなりました。
リインルートについて
最後にリインルート。
主題は自己犠牲からの卒業。
事件はノーマルルート後ののリインとの邂逅でした。
物語の謎がつまった充実感のあるルートでした。
特にノルド編は「ノルド懐かしい!」やら「ティルフィングS誰!?」
やら見応えのあるシーンが多かったです。
▼成長著しいガイウス一家。時間の経過を感じます
ラスト周辺のノーマルリインとリインの会話なんかも『閃』をプレイした自分にとっては胸に刺さる。
寂しく、そして熱い成長を見ることが出来ました。
ただ、このルートは全体的として物語の推進力はあるものの、遊びが少ないのはやや気になりました。
登場するキャラが多いことから、かえってキャラならではの見せ場が減ってしまっている。
これは非常に惜しいことです。
具体的な改善要望としては、アルティナにもっと出番を下さい。
考察のようなもの(世界観と結社の計画について)
余談ですが『創の軌跡』ということで、今後明かされるであろう世界観の予想を一つ。
軌跡をプレイしていて思うのは、数字を単語によく散りばめているということです。
特に大事にされているのは「7」。
七曜協会、Ⅶ組、騎神の数…。
軌跡では「7」にメッセージ性を込めているような気がします。
7という数字から連想したのは「セブンス・ヘブン」です。
最後の天国、神と会える場所を意味する宗教用語。
宗教系では今作の「エリュシオン」はギリシャ神話の単語で死後の楽園を意味している。
エリュシオンが今回行ったことは、演算による疑似的な世界の創造ともいえます。
更に、作中で明かされているマクバーンが元居た世界は滅んでいるという事実。
理の外という概念があるということ。
こんなところを組み合わせると、「軌跡世界は滅んだ世界の中で神に作られた箱庭世界」というような予想が出来そうです。
テーマを変えて、今後の物語を左右しそうな結社の計画についても少し予想をしてみます。
「オルフェウス最終計画」。
オルフェウスとは、ギリシア神話の詩人だそうです。
彼の逸話としては、「冥界の王の前で竪琴を奏でて感動させ、死んだ自分の妻をよみがえらせてもらおうとした」というものがあります。(最後にはその試みは失敗するのですが。)
神話モチーフとしては結社の印である「ウロボロス」も似た方向です。
ウロボロスは死と再生、永続、無限などの象徴とされています。
ここら辺を組み合わせると、オルフェウス最終計画とは「軌跡世界を利用して行う滅んだ世界を再構築する儀式」なのではと思います。
冒頭の数字の話に戻ると、今回あらわれた騎神が<零の騎神>という名前なのは象徴的です。
1~7までがあわさり0に戻る、という騎神のあり方は上述の流れを汲んだもののように見えます。
ここで注目したいのは、もう一つの重要な数字。
それは「8」。
軌跡のどこで使われているかといえば、プレイヤーにはなじみ深い「八葉一刀流」です。
歴代主人公たちが「八葉一刀流」に関係しがちなのは、偶然ではないのかもしれません。
リインが託された「一閃」により道を切り開くという師匠の教え。
それは…
・7の次を0とする結社の計画が成立し、世界は死と再生を迎えるのか。
・7の次を8へと切り開こうとする英雄たちの活躍が勝り、世界が続いていくのか。
という軌跡世界全体に関わるものと想像すると、楽しくなってきます。
共和国編ではどのようなキャラが現れ、展開が進んでいくのか…期待です。
総括
全体通しての感想としては、やはりシリーズが重なることで窮屈になってきたなというところです。
世界にしても、キャラにしても、驚きを生む仕組みづくりが難しい。
そんな制約から距離を置けるCルートが最も充実感のあるものとなったのは、当然といえば当然かもしれません。
次回作は共和国編になるのかと思いますが、メインキャラを一新して『軌跡』らしい王道の驚きを見せてほしいと思います。
ただ、素敵なキャラクターがたくさんいることがこのシリーズの魅力でもあるので、既存のキャラクターを活かせるような何かを生み出して欲しいとも思います。
その突破口は、今作で楽しいものが多かった短編エピソードなのかもしれません。
番外編として、今までのキャラが活躍する小さな物語も見てみたいものです。
以上、少し長くなりましたが『英雄伝説 創の軌跡』感想でした。
ご覧いただきありがとうございました!