【ネタバレ無し】傑作アニメレビュー『宇宙よりも遠い場所』感想・評価(95点)

【ネタバレ無し】傑作アニメレビュー『宇宙よりも遠い場所』感想・評価(95点)

2018年冬アニメ『宇宙よりも遠い場所』を感想・評価とあわせてレビューします。

 

おすすめ度 :★★★★★(95点・傑作)

 

一言感想 :圧倒的な演出力により描かれる、若者と大人たちの「南極への旅」が心をうつ。

主人公たち_宇宙よりも遠い場所

 

要素別評価(5段階)

カテゴリ:青春モノ・ヒューマン

おすすめ度:★★★★★


シナリオ:★★★★☆

キャラクター :★★★★★

演出 :★★★★★

(音楽 :★★★★★ 絵 :★★★★★)

青春感:★★★★★

※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。

 

「宇宙よりも遠い場所」はどんな作品?

少女たちが挑戦する青春の旅の行き先は・・・南極!
傑作青春アニメーションです。

 

では早速ですが、『宇宙よりも遠い場所』の作風からご紹介します。

まず本作は、「ふたつの顔」を持つ懐の深い作品だと思います。

①主人公たち女子高生4人が「南極への旅」を通じてかけがえのないものを得る青春作品。

②大人たちの、「南極探査」という一大プロジェクトにかける熱い想いを描く人間ドラマ。

そして、物語の山場ではふたつがあわさり、感動的なシーンが生まれます

 

また、後述しますが細部までのこだわりが見て取れる「圧倒的演出力」が光る骨太な作品です。

 

そしてもう一つの特徴。
文部科学省、国立極地研究所、海上自衛隊が協力している本作。

だからこそ、「南極探査」がリアルにしっかりと描かれています

 

今回のレビューでは、そんな『宇宙よりも遠い場所』の良いところ。

特に、「演出とキャラクターの良さ」を中心にご紹介します。

 

「よりもい」のここが凄い!

「趣向を凝らしたギミック」と「素晴らしい音楽と絵」による演出力

「よりもい」最大の魅力は「演出力」にあります。

 

この作品には、1話25分間にきちんと話の盛り上げどころ、山場がある。

更に、約3話毎に、大きな物語の山場も作られている。

そして、いくつもある山場それぞれに、そのシーンに相応しい語り方・描き方を行うための演出アイデアが詰め込まれています

 

物語の山場で描かれるものは、”決意”や”団結”など色々なものがあるのですが・・・

どのシーンをみても「印象に残すためのギミック」が練りに練られており個性豊かに感動させる出来になっています。

 

詳細はネタバレになってしまうため伏せます。

ですが、「このセリフをこのシーンでもう一度使ってくるか!」とか、「この挿入歌はこのシーンに合いすぎだ!」など、バリエーション豊かに巧いギミックが使われています。

 

もちろん、ギミックだけではありません。

「細かな描写にも意味をもたせる画作り」や、「心を揺さぶるようなBGM」、「挿入歌のメロディの良さ」といった、演出の土体となる基礎の部分もレベルが高いです。

 

例えば、特定の挿入歌。

作品をすべて見終わったあと、その歌を聞くだけで少し思い出し泣きしてしまうほどのインパクトがあります(筆者体験済み)。

 

ハードルが上がるかもしれませんが、そんな演出の中でも、特に「第7話」や「第12話」はこの演出力をひしひしと感じることができると思いますので、ぜひ見ていただきたいですね。

 

キャラクターの魅力について

「中の人」一人ひとりが主演級。

「宇宙よりも遠い場所」のキャスト一覧は以下の通りです。

玉木マリ :水瀬いのり
小淵沢報瀬:花澤香菜
三宅日向 : 井口裕香
白石結月 : 早見沙織
藤堂吟  :能登麻美子
前川かなえ:日笠陽子
小淵沢貴子:茅野愛衣

全員、有名な作品で主演クラスのキャラクターを演じた経験のある、非常に豪華な顔ぶれです。

だからこそ、演技は圧巻の出来でした。

 

例えば、この作品では、静かな音楽の中でキャラクターが独白し、それが次のシーンへの呼び水になるという場面が多くあります。

ともすれば、こういうシーンは、淡々とキャラがしゃべるだけの地味なシーンとなってしまう。
非常に難しいシーンです。

 

ところが実力派の揃う「よりもい」ではむしろ、ここが見せ場となります。

独白から滲み出てくる話しているキャラの想い。それを聞いているキャラの感情の動き。
これがリアルに伝わってきて、思わず引き込まれてしまいます。

 

そんな実力派揃いのキャスト陣。

中でも私は、主演の水瀬いのりさんが時折見せる優しさ溢れるふとした言葉の投げかけ方や、能登麻美子さんの厳しいけれども相手を導いていくような語り方が印象的でした。

 

■左:水瀬さんの演じる「玉木マリ」、右:能登さんが演じる「藤堂 吟」

遠くを見るキマリ_宇宙よりも遠い場所

 

もう一つの見せ場は、ギャグシーン。
キレッキレでした!

情感豊か、しかも軽快なテンポ感で繰り広げられる中の人の掛け合いはとても楽しく、1話20分間を飽きさせません。

笑わない回はなかったんじゃないかというくらい、小さなギャグが詰め込まれた作品でもありました。

ギャグシーン_宇宙よりも遠い場所

 

キャラ配置と脚本が、キャラクターの繋がりを生み出す

「宇宙よりも遠い場所」のキャラクターは、ひとりひとりがとても個性的で楽しいキャラばかりです。

 

特に、私が好きなのはW主人公のひとりである「小淵沢報瀬」。

楚々とした外見から繰り出される破天荒な言動、そして時々描かれるシリアスな姿が、自然と応援したくなる魅力的なキャラクターでした。

 

■小淵沢報瀬

清楚な小淵沢白瀬_宇宙よりも遠い場所だめな小淵沢白瀬_宇宙よりも遠い場所

ただ、この作品の良いところは、作品の中でキャラクター同士がつながっていき、相乗効果でキャラを好きになっていく点にあります。

 

この作品のキャラは、いわゆる相棒感があるんです。

つまり、「このキャラクターの相棒といえばこのキャラクター」と誰もが納得してしまえるような、苦楽を共にするエピソードが積み重なり、特定のキャラクター同士が繋がっていきます

 

その繋がりがキャラの魅力を更に引き立てる。

そして、唯一無二のうもれないキャラクターに昇華させていると感じました

ひなたとのふれあい_宇宙よりも遠い場所

 

きっと感情移入できるキャラを見つけられる幅広さ

記事の冒頭で書いたのですが、この作品は、ふたつの顔を持っています。

「女子高生の旅」と「大人たちの人間ドラマ」です。

 

片方だけでは、のめり込むことが出来ない人もいると思います。

人は誰しも自分に近い存在や憧れる存在に親近感を持つからです。

自分にとって、「女子高生の旅」という要素だけでは親近感が少し持ちにくかったと思います。

 

しかし、あわせて描かれている「大人たちの人間ドラマ」という自分にとって親近感のある要素が呼び水となり、「女子高生の旅」という要素を含めた「宇宙よりも遠い場所」という作品全体に自然とのめり込むことが出来ました

 

色々な層の視聴者がそれぞれの見方で楽しめる、幅広いキャラクターがいるという点が魅力の一つです。

■今作の大人陣

強いサブキャラ達_宇宙よりも遠い場所

 

気になった点

この作品については、特筆するほどの気になった点、ひっかかりを覚えるようなマイナス点はありませんでした。

 

総評価と感想『宇宙よりも遠い場所』

・「女子高生の旅」と「大人たちの人間ドラマ」というふたつの顔が作品の懐を深くする。更に、山場ではそれらが組みあわさり、名シーンがいくつも生まれている。幅広い層が楽しめる傑作。

・「一人ひとりが主演クラス」という豪華声優陣による、ギャグからシリアスまで、全てが詰まった掛け合いの妙が味わえる。

・高水準な音楽と絵作り、そして、心をうつためのアイデアがつまった演出は必見。

・「文部科学省」や「国立極地研究所」の協力により実現した現実感のある「南極探査」シーンは面白い。

「宇宙よりも遠い場所」を見る前は、この少し変化球なキャラデザや「南極探査」という独特な要素に少し身構えていました。

また、南極探査は刺身のツマレベルになるんじゃないかなんて思っていました。

しかし、予想は良い方向に大きく裏切られ、今では見る前の自分を叱りたい気分です。

 

このキャラデザだから良い。「南極探査」だから良いんです。

すべての要素に無駄がない、計算された作品という感想を持ちました。

 

今作が2018年に見た最初のアニメだったことは、きっと忘れないと思います。

大変、感動させてもらいました。5年先も10年先も残るべき、名作です。

 

以上、『宇宙よりも遠い場所』の感想と評価でした。

要素別評価(理由)

カテゴリ:青春モノ・ヒューマン

シナリオ:★★★★☆

過不足なく、必要なことを必要なだけ、余計なところは適度に省きテンポよくと非常にみやすいシナリオです。キャラクターの悩みと解消の提示方法も、導入の方法や伏線の貼り方が巧みで一連の流れを感じることができるため、自然と納得できました。

ただ、極々まれにそこはやりすぎじゃないか・・・と思うシーンがあったため、星4としました。

 

キャラクター :★★★★★

キャラクターの造形、キャラクター同士の繋げ方、声優さんの演技が組み合わさリ、心に残る唯一無二のキャラクター達が生まれていると思います。

特に、「小淵沢報瀬」の面白さと、旅を通じて成長し変化していく姿はとても好きです。個人的には2018年アニメの中で最も好きなキャラクターです。

サブキャラクターとなる大人陣も、要所要所でそのキャラならではの見せ場があり、一部のキャラクターはもう一人の主人公と言っても過言ではないと思います。

このキャラ達がいるからこそ、「宇宙よりも遠い場所」は多くの人に見てほしいと素直に思える作品になりました。

 

演出 :★★★★★

(音楽 :★★★★★ 絵 :★★★★★)

先述の通り、最も適した語り方となるよう趣向を凝らした演出が素晴らしいです。シナリオ自体は、勿論そうなるよね、という予想通りの展開を進むことも多いのですが、それをこのように描くか・・・と思うようなギミックが魅力的です。

音楽についても高水準。

全体的に透明感のあるすがすがしいBGMは耳に心地よいです。また、山場で使用される登場人物の想いを幻出するかのような豊かさを伴ったBGMも印象的です。

全話で挿入歌を用いた演出を行っており、これも山場のインパクトに大きく貢献しています。

絵についても素晴らしい出来です。ドラマではなくアニメならではの色彩の美しさ。大きな動きによるダイナミズムからキャラの心情をあらわすきめ細やかな動き。小物類の配置方法にこだわった情報量豊富な絵作り。見どころばかりです。

 

青春感:★★★★★

「南極への旅」を通じて描き出される女子高生たちの青春は、真っ直ぐでとてもキラキラしています。アニメで青春モノが見たいという方には一番におすすめしたい作品だと思います。

 

 

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