2019年冬アニメ『かぐや様は告らせたい』をネタバレなし評価(未視聴の方向け)とネタバレあり感想(視聴済みの方向け)でレビューします。
※ネタバレあり感想は、ページ最下部に掲載。
おすすめ度:★★★★☆(73点)
一言感想 :天才でバカな主人公たちの「青いやり取り」がたまらなく愛らしいラブコメ
レビュー概要『かぐや様は告らせたい』
「1分で読める」レビュー要約
【超あらすじ】
恋愛に素直になれない「学校随一の天才」である主人公・かぐやと白銀。
互いに相手に告白をさせようと悪戦苦闘するさまを描いた、天才たちによる独特な青春ラブコメ。
【作風・作品の印象】
・権謀術数を駆使して、相手に告白させようとする「青さと必死さ」が愛らしく、そして笑える。
・時々おとずれる主人公たちの距離が縮まるシーンは、普段のドタバタとのギャップで胸キュン感がとても強かった。
【おすすめ回】
3話・5話
【見どころ・長所】
◎サービス精神多めで話題性抜群のOP・ED
◎応援したくなる主人公二人のやり取り
【残念な点・短所】
△勢いがつきすぎて視聴者置いてけぼりの演出
△シリアスからの「逃げ」
導入
週刊ヤングジャンプ連載の人気漫画「かぐや様は告らせたい」。
まさかの実写映画化も決まり、とても勢いのあるラブコメ作品です。
そんな「かぐや様は告らせたい」ですが、私は本作に「とがった作品」という感想を持ちました。
それは、長所と短所がはっきりしているから。
まず、長所。
詳しくは後述しますが、一部でバズったOP・EDの話題性は凄かったと思います。
そのクオリティと、独自性からくるインパクトを両立させた素晴らしいものでした。
また、主人公である生徒会副会長「四宮かぐや」と会長「白銀御行」のやりとりの愛らしさ。
こちらも良いです!
そもそも、「天才の二人が素直になれずに、お互いに告白させようとする」というシチュエーションが既に天才的。
これを思いついた時点で勝負あったという感じがします。
■左:白銀御行 右:四宮かぐや
その一方で、残念な点が目立ってしまうのもこの作品の惜しいところ。
まず、シリアスから逃げてしまっている点。
かぐや達が真面目に悩む姿を見たいのに、半端に入るギャグが空気を壊しています。
更に、演出が時々冗長な点も、物語への没入感をさまたげているように思います。
総じて言えるのが、視聴者が求めているシーンを時々、絶妙に外してしまっているのがこの作品の弱点のように感じました。
本レビューでは、上記のような内容をベースに「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」を紹介していきます。
評価(5段階・要素別)
カテゴリ:ラブコメ
総評価:★★★★☆(73点)
シナリオ:★★★☆☆
キャラクター :★★★★★
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★★☆ アイデア:★★★★☆)
※評価の理由は、ページ下部に記載しています。
『かぐや様は告らせたい』の見どころ・良かった点
では、本作の見どころ・良かった点からご紹介します。
◎サービス精神多めで話題性抜群のOP・ED
この作品のOP・ED(EDは2種類)はどれも素晴らしいです。
まず、OPの良さですが、楽曲の独自性が凄い。
担当された歌手は「鈴木雅之」さん。
芸歴30年以上の大御所が、初めてアニソンを歌うというインパクトには驚きました。
更に凄い点は、曲の雰囲気が意外と作品に合っているところです。
曲の雰囲気はビッグバンド系、歌声は渋いオジサマ。
深夜アニメの定石からは完璧に外れています。
それなのに、「かぐや様は告らせたい」には不思議とマッチしているように感じました。
その大きな理由は歌詞にあると思います。
「二人だけの危ないGAME LOVE IS WAR×3」
かぐやと白銀の関係をうまく表したフレーズで、本作にマッチしています。
インパクトを重視しつつも、作品を大切にすることは忘れていない、良いOPだと思いました。
次にED。
通常EDはかぐや様の夢の中を舞台に、メインキャラが活躍する小品となっています。
このEDもクオリティは高いのですが、今回特筆したいのは特殊ED。
特殊EDの内容は、
今作のヒロイン(兼マスコット)である「藤原千花」が1分30秒間を踊り続ける、という謎のEDとなっています。
放送時、ネット界隈では大分話題になりました。
何の脈絡モノなく、一回こっきりで流れるEDなのですが、これが凄い。
ずばり、千花が可愛い。
表情・細かな仕草・スカートの揺れなどに、可愛さへのこだわりがつまった素晴らしい出来した。
また、ダンスの振付には原作の小ネタも含まれており、原作への愛が伝わってくる点も高評価です。
このような、OPとEDのクオリティとインパクトは、「かぐや様は告らせたい」の大きな魅力だと思います。
◎応援したくなる主人公二人のやり取り
続いて、キャラクター面の魅力を紹介します。
個人的に、面白いラブコメには「いい男キャラ」が不可欠だと思っています。
本作では、主人公「白銀御行」が非常にいい男キャラをしていました!
まず、弱点が多いところが良い。
・年頃の高校生らしく、色気に弱い
・運動音痴
・かぐやに弱い
・チキン
などなど、弱点が多い。
それなのに、誰よりも努力を重ねて生徒会長という今の地位にいる、という在り方は応援したくなりました。
■苦手なバレーを克服しようとする白銀
また、高潔なところも良い。
・かぐやの弱みにつけこむチャンスがあっても、それは卑怯だといってあえて見逃す
・自分のことよりも人のためにこそ実力を発揮できる
こういった、彼のまっすぐな性格に好感を持てました。
そして、そんな「白銀御行」ともうひとりの主人公である「四宮かぐや」の掛け合いがまた良いんです。
ふたりとも、相手のことをとても意識しています。
どれくらいかといえば、1話平均10回以上も、お互いの名前を呼ぶくらい。
そして、相手に告白させるために、相手の行動パターンを研究しまくっている。
かぐやに至っては、白銀の登下校のルートからその日の所持品まで…。
ほとんど全てを把握しています(少し怖い)。
そこまでして策を巡らせるのに、何故か上手く行かずに仲が進展しない。
このシチュエーションがやきもきし、また、笑える要素となっていました。
■台風によりデートが流れてしまった白銀
だからこそ、いくつかの話では完璧とは言わずとも良い雰囲気になった時が嬉しい!
そこまでの二人の努力や失敗の軌跡を知っているからこそ、そういうシーンに深く感情移入が出来ました。
二人の掛け合いが最高でした。
「かぐや様は告らせたい」の残念だった点
ここからは、本作の残念だった点について紹介します。
△勢いがつきすぎて視聴者置いてけぼりの演出
この作品は、殆どの場合、「生徒会室」で話が進行します。
そのため、普通に描くと絵的に地味になってしまう。
そこで、25分を飽きさせないよう、色々な演出が詰め込まれています。
それは、パロディだったり、勢いのあるナレーションだったり、様々です。
そこまでは良いのですが、その演出アイデアが時々行き過ぎている。
これが問題だと思いました。
端的に言えば、自己満足的な演出が多いです。
具体例を紹介します。
例えば、とある回でかぐやが自分の心情を独白するシーンがあります。
この際、独白中は何故か「かぐやの黒髪(実写版)」が画面に挿入されます。
■こういう画面
ここまでなら、まあ変わった演出だな、で終わります。
しかし、これがくどい。
10分の間に4回程度映されます。
いやいや、普通に背景なり心情風景で良いだろうと思いました。
せっかく声優さんが良い語りをしているのに集中しにくかったです。
もう1例あげます。
本作の1話では、アバンタイトルで作品の概要説明が数分ほどで行われます。
ナレーション「人を好きになり、告白し、結ばれる。それは凄いことだと・・・云々」が数分。
これが、何故か3話まで続きます。
画面を変える、早送りするなど演出の工夫はされているのですが、
そもそも繰り返す意味を感じません。
これらの演出をよくいえば、作品の随所にアイデアがつめこまれていると言えます。
しかし、悪く言えば視聴者置いてけぼりな演出が多いということ。
この点は弱点だと感じました。
△シリアスからの「逃げ」
続いても演出面です。
「かぐや様は告らせたい」は、ギャグが中心なのですが、時々、シリアス要素が入ります。
このシリアス要素は、キャラクターの背景設定と密接に関わっていて、結構練られています。
そのシリアス要素をどのように乗り越えて、かぐやと白銀の仲が深まっていくか。
そこが、視聴者の注目ポイントの1つだと思います。
そのためには、シリアス要素から逃げてはいけない。
むしろ、それをしっかりと描いてこそ、その後のカタルシスが大きくなるはずです。
ところが、「かぐや様」のアニメでは、何故かシリアス要素の途中に半端にギャグを入れ込んできます。
これが、空気を壊しているように感じました。
結果として、シリアス要素が宙に浮いてしまいむしろ邪魔な要素になっていたように思います。
空気を軽くしようとしたのか、シリアスへの照れなのかは分かりませんが、「シリアスで魅せる」ことが出来ていなかったのは個人的には大きな減点要素でした。
総評価と感想
【見どころ・長所】
◎サービス精神多めで話題性抜群のOP・EDは見逃せない。
◎楽しく笑えて、時々「胸キュン感」を味わえる主人公二人のやり取りが面白い。
【残念な点・短所】
△勢いがつきすぎて視聴者置いてけぼりの演出は、作品への没入感をさまたげていた。
△シリアスからの「逃げ」は、作品の深み・カタルシスを減らしていて残念
このように、本作は良いところはとても良い、悪いところは残念という、尖った作品でした。
したがって、減点評価では微妙な出来、加点評価ではとても良い出来となります。
個人的には、良い部分で味わえる「楽しいギャグや青春要素」にはとても楽しませてもらえました。
「笑えるラブコメが見たい」という人には、是非オススメな1作だと思います。
参考:評価の理由
カテゴリ:ラブコメ
総評価:★★★★☆(73点)
シナリオ:★★★☆☆
レビューの通り、シリアスから逃げてしまっているのはとても残念。
一方で、1話ごとの起承転結はまとまっており、落語のような出来。
また、漫画からどのエピソードをアニメにするかという選択には、シリーズ構成という視点がしっかりと入っており、よく練られていたと思う。
キャラクター :★★★★★
かぐやと白銀の可愛さはレビューの通り。
それ以外のサブキャラクターもみな、ひとクセもふたクセもある個性派揃いでいいキャラをしていた。
主要キャラは誰もが、トリックスターにもボケにもツッコミにも回れるという懐の深さを持っており、キャラクター漫画としては1級品のように思える。
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★★☆ アイデア:★★★★☆)
アイデアが詰め込まれているが、バランス感覚が悪い。一言で言えばそんな演出だったと思う。
しかし、室内劇が中心となるこの作品を、絵的にここまで盛り上げた熱量は素直に凄い。
作画に崩れがなく、全編通してに安定感があったのも高評価。時々、作画が大分良いシーンも有り、見ごたえがあった。
ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想コーナー)
ここからは、徒然にネタバレありで感想を書き連ねます。
未視聴の方は、バックをお願いします。
↓
↓
では。
①かぐやと白銀が可愛い。
この作品の感想はこれにつきます。
例えば、4話の交換留学生歓迎会のシーン。
白銀の無自覚イケメン要素と、かぐや様のデレが炸裂する良回です。
もう早く付き合えばいいのに。
この他にも、夏休みのすれ違い回や、自転車での登校回など、青春感のツボを押さえたシーンが多く、とても楽しめました。
「夏の青春」は堪能させてもらえたので、「冬の青春」も見たいところです。
②花火回の残念感
花火回、期待してたんですけどね・・・
レビューでも書いたとおり、ここのシリアスから逃げているのは惜しかった。
高円寺のJ鈴木「えぇ・・・!?」
それはこっちのセリフだと言いたい。
今までのシリアスはどこへ・・・
シリアスから燃えるシーンにつなぐという構成は良いんです。
ただ、その流れが中途半端なんですよね。
音楽はクライマックス感のあるBGM・絵は上記の通り・展開は成功しそうで失敗してやっぱり成功してというどっちつかず。
話をどっちの方向に持っていき、どんな感情をもたらしたいかの方向が見えないシーンが続いたように思います。
また、各キャラの見せ場を作っているのに、音楽を切り替えずに淡々と流しているところもいただけない。
例えば、かぐやに変装して黒服を騙す早坂のシーンとかは凄い良い。
声優さんの声色の使い分けの上手さは素晴らしいし、他のエピソードで使われたネイルを写す演出もにくい。
それなのに、BGMはずっと同じ音楽を流すだけ。
いまいち見せ場が見せ場らしく演出されていないんです。
この回の各キャラの見せ場を丁寧に演出できていれば、もっと締まった回になったと思います。
シンプルにED流しとけばよかったんじゃないかなぁ・・・
③第5話「バレー特訓回」
この回が一番好きでした。
■↓しにかけのアルパカ
まず、賛否両論のナレーションですが、この回のナレーションはバランスが良いと思いました。
勢いといい、セリフの数といい、ちょうどいい塩梅です。
また、藤原書紀が可愛い。
トリックスターとして好き勝手やってきた彼女が、初めて存分に苦労する。
意外と、苦労してこそ輝くキャラだと思います。
そしてなによりも、キャスト陣の演技が光りまくっていました。
・白銀
「もしかしてこれ・・・イップスってやつか!?」
「ボールは友達」
「見せるなら、やっぱかっこいい所だろう!」
・藤原書紀
「おこがましい!!」
「んんー!!??グェッェェェェ・・・」
「あの子私が育てたんですよ・・・」
などなど、名台詞のオンパレードかつ、その読み上げ方が最高でした。
1話時点では演技に不安もありましたが、回を増すに連れてどんどんキャスト陣の演技が良くなっていました。
こんな感じで、この作品は名シーンや名台詞が多く、個人的に見返す回数がとても多かったです。
締めるところが締まっていればという惜しさはあるものの、この作品のおかげで、とても楽しい2019年の冬を過ごせました。