『彼方のアストラ』をネタバレなし評価(未視聴の方向け)とネタバレあり感想(視聴済みの方向け)でレビューしていきます。
※ネタバレありの感想は、ページ下部に掲載。
おすすめ度:★★★★★(90点)
一言感想:サスペンスとSF、そして青春。彼方のジャンルが共存し、互いを活かしあうことに驚かされた斬新な1作。
評価(5段階・要素別)
カテゴリ:青春・サスペンス・SF
総評価:★★★★★(90点)
シナリオ:★★★★★
キャラクター:★★★★★
演出:★★★★☆
(音楽:★★★★☆ 映像:★★★☆☆ アイデア:★★★★★)
※評価の理由は、ページ下部に記載しています。
「1分で読める」レビュー要約
【超あらすじ】
西暦2063年、「大自然の中、生徒だけで5日間を過ごす」という惑星キャンプに参加した9人の高校生たち。
しかし、彼らはそこで発生したとある事象により、故郷から遠く離れた宇宙で”遭難”してしまう。
故郷に帰るため、宇宙を旅する9人。
星を巡る中で仲間とともに様々な経験をし、やがて、それぞれが「子供」から「一人の人間」へと成長していく。
■SFとミステリが彩る、まだ見ぬ青春のかがやき
○SF・ミステリ・青春。色んなジャンルの要素が歯車のようにかみ合っているのがこの作品の魅力
【成長と絆を描く青春要素の面白さ】
魅力①:「青さ」のあるシナリオが、素直に応援したくなる
魅力②:深刻な状況なのに、明るくがんばる。ひたむきで爽やかな物語
魅力③:頼れるけどバカ。メリハリの効いたギャップを持った戦隊レッド系な主人公「カナタ」
○作品のシリアス担当ーミステリ要素が緊張感をもたらす
○未来が舞台ならSF!とは言わせない作り込みの深さを持ったSF要素
○原作のアニメは常にこうあってほしい。そう思いたくなる工夫が詰まったアニメ化
【その他、良かった点と気になった点】
△画面がやや大人しい
△ご都合展開に見えるシナリオが時々つづく
△ギャグ多めな作風は人によってはクセが強い
※各回のテーマや映像の作り込みなどに着目し、ページ最下部へネタバレあり感想を記載
『彼方のアストラ』レビュー「 SFとミステリが彩る、まだ見ぬ青春のかがやき」
SFもミステリもサスペンスも・・・
すべては「青春」のためにある。
ジャンルにとらわれない面白さを秘めた作品です。
今回紹介するのは『彼方のアストラ』。
「少年ジャンプ+」で連載していた完結済みの漫画が原作です。
原作は「マンガ大賞2019」で大賞を取るなど、ファンからの支持が厚いことで有名な作品でした。
超あらすじはこんな感じです。
西暦2063年、「大自然の中、生徒だけで5日間を過ごす」という惑星キャンプに参加した9人の高校生たち。
しかし、彼らはそこで発生したとある事象により、故郷から遠く離れた宇宙で”遭難”してしまう。
故郷に帰るため、宇宙を旅する9人。
星を巡る中で仲間とともに様々な経験をし、彼らは「子供」から「一人の人間」へと成長していく。
この作品を紹介する上で外せないこと。
それは、『彼方のアストラ』がどんなジャンルの作品になるのかという点についてです。
まず、あらすじの冒頭を読むと分かりますが、この作品の舞台は未来。
つまり、「SF」の要素を含んでいます。
▼SFらしい自律機動の警備ロボ。左側の少女がヒロインのアリエス(CV:水瀬 いのり)
更に、あらすじを読みすすめると・・・
とある事象により主人公であるカナタ達9人は、宇宙に遭難してしまう。
では、そのとある事象はなぜ起こったのか。
そして、誰が事象を起こしたのか。
そんな”謎”を解いていく「ミステリ・サスペンス」要素も含んでいます。
最後に作品の核となる要素。
宇宙を旅する中で、未成熟な高校生たちが、仲間とともに成長していく。
成長と絆。そんな「青春」要素がこの作品の核です。
▼9人の遭難者たち。彼らが笑い、泣き、成長していく
つまり、この作品は大きく3つのジャンルを含んでいます。
①SF
②ミステリ・サスペンス
③青春
いわば、ジャンルのごった煮。
こう聞いて作品に持つ印象はきっと、こんな感じではないでしょうか。
「話がごちゃごちゃしてて面白くなさそう」
「まとまりがなくて中途半端な作品になってそう」
たしかに、色々混ざり過ぎてまとまりきらない作品はたくさんあります。
しかし、この作品は違うんです。
「色んなジャンルの描写が歯車のように上手くかみ合うことで、彼方のアストラという一つの作品が動いている。」
それこそが、『彼方のアストラ』の最大の特徴。
作品の構造的な美しさが魅力です。
そんな美しさをもって描かれる主たるテーマ。
それは、高校生たちの友情と成長の物語。
彼らの等身大でひたむきなやり取りに、胸が熱くなる1作でした。
では、『彼方のアストラ』がSF・ミステリ・青春という幅広いジャンルをどのように描いているか。
そして、それらがどのようにつながるのか。
ジャンル=作風についての視点を中心に、『彼方のアストラ』を紹介します。
◎大変な状況もはね返す!宇宙に光る少年たちの青春
まずは、楽しい内容から。
最初に紹介するのはこの作品の中心、「青春」要素です。
高校生という「大人とこども」、狭間の季節
この作品に登場する主人公たちは、高校生。
高校生といえば、子供から大人へと変わるちょうど中間の季節。
そのため主人公達の内面は成熟しきっていない。
それぞれがどこか足りない所を持っています。
そんな彼らが、学校の行事である惑星キャンプに旅立つところから物語は始まります。
キャンプを楽しみにしていた高校生たちは、突如として宇宙に遭難してしまう。
遭難から始まる、故郷へ還るための宇宙の旅。
旅の中では、様々な苦難が彼らを襲います。
始めのうちは、高校生たちの雰囲気はとてもギクシャクして、重たい感じです。
しかし、訪れる苦難の数々を仲間と協力しながら乗り越えていく。
苦難を乗り越える物語の中で、未成熟な少年たちがどのように成長し、団結していくのか。
成長と友情の物語がこの作品の見所です。
例えば、9人の遭難者の1人であるユンファの物語。
彼女は、内気で無口。特技がなく、要領もあまりよくない。
だから、自分に自信を持てないでいます。
▼無口な少女ユンファ(CV:早見沙織)。早見さんの透き通った声がきれい
作中で語られる、内気なユンファを象徴する彼女のセリフ。
「自己表現することは恥ずかしいことだって・・・私は透明になりたいの」
そんなユンファに転機が訪れます。
あるアクシデントが起こり、否応なしに彼女が動く=自己表現をせざるをえない状況におちいる。
危機的状況の中で、仲間のため、ユンファは自分の殻をやぶるようなある決断をしていく・・・
このように、未成熟な高校生達は他の仲間とふれあい自分を見つめ直しながら成長していきます。
この成長と友情の物語。
描かれる全てが直球で青い。でもそこが良い。
仲間に向き合うときのひたむきさ。
仲間にかけるセリフに込められた思いやりと真っ直ぐな価値観。
見ているこっちが少し恥ずかしくなるような「青さ」のあるシナリオやセリフが気持ちいい。
常に全力で直球。
今を懸命に生きる彼らのやりとりは、見ていて初心を思い出し、ワクワクしました。
シリアスな状況は『彼方のアストラ』でどのように描かれるのか
このように、成長をテーマにした真摯な物語が『彼方のアストラ』では描かれます。
ここで思い出していただきたいのですが、9人が物語の中で置かれている状況は非常に深刻です。
死が隣り合う状況での星を巡る旅。
一歩間違えれば故郷に帰れず、そこで朽ちるしかない。
大変な状況下で描かれるこの作品。
その作風はこんな感じです。
▼旅の様子①:生き物好きな青年シャルス(CV:島﨑信長)は存分にはしゃぐ
▼旅の様子②:宇宙船にて。女子男子が一緒になって楽しむ青春の1シーン。
(EDでは1枚絵で旅の様子が補完されるので要注目です! )
・・・若さゆえの図太さ。
実はこの作品の作風、とても明るいんです。
大変な状況なのに、1話あたり5割くらいはギャグが占めているありさま。
もちろん、メリハリの効いたシリアスなシーンはあります。
それでも彼らは、難しい現在に対して明るさを忘れずに立ち向かっていく。
だからこそ、彼らを応援したいという気持ちがどんどん強まっていくんです。
1話を見終わった後の余韻もさわやかで、とても見やすい作品だと思います。
作品のさわやかさを生み出す理想のリーダー「カナタ」
『アストラ』のさわやかな雰囲気を支えているのは、主人公・カナタの魅力にあると思います。
▼頼れる主人公・カナタ(CV:細谷佳正)。控えめに言って超イイヤツ
カナタをざっくりいうと、戦隊モノのレッド系。
熱血でひたむき。
優しくて思いやりにあふれている。
情熱がありリーダーシップがある。
まさにレッドなキャラクターです。
そんなカナタですから、アクシデントが起これば直ぐに行動!
いつも彼が中心となって事態を解決に導いていきます。
仲間が悩んでいればすぐに駆け寄る。
彼の掛ける、真っ直ぐでセリフが悩むキャラの心をうちます。
それと同時に、見ているこっちも「こいつほんとイイヤツだなぁ」と心をうたれる。
そんな凄いやつなんです。
しかし、凄いやつなのに隙だらけなのもカナタの魅力。
端的に言えば、彼はバカです。
・初対面のキャンプメンバーに、いきなりリーダーを名乗り出て総スカンをくらう
・自分で言った格言を速攻で破る
・ある星で出会った動物と、別れる際に号泣する
▼残念な主人公・カナタ。控えめに言って超バカ
とはいえ、そんなギャップもカナタの魅力。
日常シーンではバカなことを言って雰囲気を明るくする。
緊張シーンでは、先陣に立って仲間を鼓舞する。
このバカと真面目のメリハリは、まさに『彼方のアストラ』におけるギャグとシリアスの使い分けそのまま。
作品の雰囲気を体現するカナタが『アストラ』のギャグとシリアスの入り交じる独特な雰囲気を作っていました。
◎作品のシリアス担当ーミステリ要素の魅力とは
ここまで、青春要素を掘り下げてきました。
明るく楽しい成長と友情の物語。
しかし、お忘れではないでしょうか。
この作品にはSFとミステリ要素も含まれているんです。
ここからは、作品のシリアス担当。
「SF・ミステリ要素」を紹介していきます。
「絆と疑念」ミステリーが物語に緊張感を生み出す
まず、紹介するのはミステリ要素。
あらすじで書いたとおり、彼らの遭難には2つの謎が含まれます。
①なぜ、9人は宇宙に遭難することになったのか。
②誰が宇宙に遭難させたのか。
ミステリ用語で言えば、ホワイダニットと、フーダニットです。
それを探る流れは、スリリングで楽しめました。
なぜなら・・・
作中でメインとなる登場人物は、故郷から離れた宇宙に遭難する9人だけ。
そこはいわば隔離空間。
ミステリで言えば、嵐の中の小島。あるいは、大雪に閉ざされた屋敷と同じ状況です。
つまり犯人は・・・詳しくは作品をご覧ください。(序盤で言及されます)
▼ミステリならではの疑心暗鬼。部屋に帰ったら負けな空気が漂う
単なる友情物語では終われない。
9人のメンバーと仲良くなるだけではいけない。
なぜ遭難という今に至ることとなったのか。その謎を解かなければならない。
そして、「謎を解くこと」と、「絆が深まること」はいわば二律背反の関係。
そんなジレンマがあるからこそ、物語に緊張感が生まれており、ストーリーに引き込まれました。
未来が舞台ならSF!とは言わせない作り込みの深さ
続いて、SF要素です。
冒頭にて、この作品は未来を舞台にしている。
だから、SF要素を含んでいると紹介しました。
ともすれば、
「いやいやそれでSFというのは浅すぎるでしょ」
と思った人もいるかも知れません。
実はこの作品、それだけでSF作品を名乗ってはいませんでした。
これはSFらしい!と思わせるモチーフが作品に深く関わっているんです。
詳しくは作品をご覧下さい。
▼難しいことをいいつつ、バリエーション豊かな星の背景を見るだけでもSF感が楽しめる
◎原作のアニメは常にこうあってほしい。そう思いたくなる理想のアニメ化
最後に、本作はアニメ化が非常に上手くいった作品だということを紹介させてください。
通常、漫画のアニメ化は原作の販促のために行われます。
そのため大体は、物語が完結していない状態でアニメになる。
一方、アストラは完結済みの作品です。
しかも、5巻で完結というなんとか1クールでさばききれる分量。
結果として、この作品は1クールで綺麗にアニメが完結します。
最終話に思わせぶりな新キャラが登場して終了!という尻切れトンボな終わり方じゃありません。
▼思わせぶりな新キャラの例。『織田信奈の野望(2012年)』
最終回のED後に突如登場、次のカットは「終」の一文字。彼女は誰だったんだろう…
更に、「物語の全体像が見えてるからこそできる工夫」もつまっています。
特定のエピソードを輝かせるために、その伏線となるエピソードに手を加える。
特定の場面が伏線になるからあえて色濃く描くなど・・・
アニメ化によって、原作を更に輝かせようとする工夫と熱意がつまっている。
原作が完結しているからこその完成度。
それが、アニメ『彼方のアストラ』の魅力です。
総評価と感想
この作品は色々なジャンルを組み合わせている。
それでいて無駄がなく、洗練されたものに仕上がっていると感じました。
料理で言えば、ブイヤベースのよう。
たくさんの具を詰め込みながらもまとまった一つの料理として完成していると思います。
SFとミステリ要素と組み合わさり、他では見られない青春の輝きを放つ今作。
きっと、見終わる頃には9人のひとりひとりに愛着がわく1作になると思います。
この作品をおすすめしたい人ですが・・・
成長と絆の物語ということで、アニメでは『宇宙よりも遠い場所』やゲームでは『英雄伝説 閃の軌跡』のような作品が好きな人。
ハード過ぎない惑星探索モノということで、古い作品ですが『無人惑星サヴァイヴ』や『ドラえもん のび太の宇宙漂流』が思い出に残っている人。
緻密な伏線回収と面白い世界観ということで、『鋼の錬金術師』などの作品が好きな人には特におすすめです。
その他、良かった点と気になった点
△画面がやや大人しい
この作品の映像は安定していました。
また、小物類へのこだわりや細かい演出はとても力が入っています。
それだけで、映像としては十分な出来です。
ただ、欲を言えばアニメーションの華である大胆な動きや縦横無尽なカメラワーク。
そんな映像だけで人を引き込むような力強いシーンはなかったように思います。
ここがあれば文句無しの傑作といえたかと思います。
▼派手さはないが、こだわりはつまっていた。例として食事カット。とても美味しそう
△時々、ご都合展開に見える
この作品のシナリオは緻密です。
伏線の貼り方とその回収がとても丁寧。
ただ、だからこそ描きたいことありきでシナリオを動かしている感が時々気になりました。
具体的に言えば、アクシデントからの脱出がちょっとご都合めいたケースがあります。
都合よく、事態を打破する有効なアイテムを見つけましたというような展開が散見されます。
△ギャグ多めな作風は人によってはクセが強い
個人的には、青春要素を盛り上げる工夫としてこの作品のギャグは気に入っています。
キャスト陣のボケとツッコミのノリがよく楽しかった。
ただ、真面目なシーンから急にギャグが入ったりするので人によってはクセが強いと感じるかもしれません。
3話くらいまで見れば慣れると思いますので腰を据えて見ていただきたいところです。
評価(5段階・要素別)の理由
カテゴリ:青春・サスペンス・SF
総評価:★★★★★(90点)
シナリオ:★★★★★
本文の通り。
伏線を巧みに生かした盛り上げは秀逸。
1話の引きが強いのもシナリオの推進力を強めていた。
キャラクター:★★★★★
本文の通り。
カナタを筆頭に、いいキャラだらけ。男キャラを好きになれるのは名作の特徴。
キャラのカップリングに説得力がある。
演出:★★★★☆
(音楽:★★★★☆ 映像:★★★☆☆ アイデア:★★★★★)
BGMは派手ではないが堅実な出来。
EDの歌がノリがよく、歌詞も注目ポイントが多く気に入っている。
映像は本文の通り。
演出は秀逸。
シナリオ構成、画面にもたせている意味の込め方、EDの1枚絵を使ったシナリオの補完など
アイデアがつまった演出はとてもおもしろく、画面から目が離せない
ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想)
ここからは、肩肘張らずにネタバレありで感想を書き連ねます。
未視聴の方は、バックをお願いします。
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第3話 感想「METEOR」
【シナリオ・キャラ面の感想】
ミステリ要素の展開と、ユンファの欠けている部分を提示する回でした。
ミステリ要素については、この段階で仲間に犯人が含まれていることを全体にバラすのは意外な展開でした。
しかし、青春モノとして捉えると、その方が団結までのドラマが生まれて面白いのだと思います。実際、今回の話ではトラブルに全員で対応することで、ドラマの一端が垣間見えていました。
この疑心暗鬼を乗り越えて、真に団結するまでが見たいところです。
同時並行でユンファの闇を描いていたのも無駄がない。
今後、どのように彼女が自分の立ち位置を獲得していくかが気になります。
それにしても、引きがうまい作品です。ラストの銃がどんなドラマを生むのか・・・来週が待ち遠しい。
【印象的なシーンなど】
・アリエスが小首をかしげるシーン。全体的に、会話している感の演出がうまい。
・食事が美味しそうなアニメはいいアニメ。
・今期では『まちカドまぞく』で多用されている擬音演出。それにしても、こういう真っ直ぐな青春っぽい空気感は良い。
・アリエスは可愛さと健気さと強さをあわせ持つ良ヒロイン。空気感を変えれるのも凄い。
・キトリーの視線の向きがわずかに変わる点が細かく良い芝居。それにしてもアリエス可愛い。
第4話「STAR OF HOPE」感想
【シナリオ・キャラ面の感想】
影の薄かったユンファにスポットライトを当てる回でした。
「自己表現は恥ずかしい。私は透明になりたい」
というセリフは印象的で、物語前半の彼女を象徴しています。
そんな彼女の秘められた「歌手になりたい」という夢を一瞬で引き出すカナタはやはりリーダーに相応しい。
病気で士気が落ちていた一行を、歌により励ますユンファは、ひとつ上の段階に進むことが出来たのだと思います。
さて、ここからは客観的に見ていくと、少し駆け足な回だったと思います。
1話の中でユンファの欠損の提示、トラブル、ユンファの成長、解決を描くのは中々きびしい。
結果として、トラブルの解決とユンファの成長が上手くかみ合っておらず、構造的な美しさはこれまでの回より欠けていたように思います。
ただ、それでもこの回には充実感がありました。
それは、終盤に流れるユンファの歌のクオリティのおかげだと思います。
『デレマス』、『シャイニングレゾナンス』、『TARI TARI』など・・・
数多くの作品で名曲を歌っている早見沙織さんの歌唱力は圧倒的。
壮大な雰囲気の演奏に負けない伸び伸びとした歌声が素晴らしかったです。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
・このメンバーのノリの良さが好き
・某作品のパロディ。個人的にはアクが強すぎてややスベっていた印象。
・全体的に作画は省力化傾向な回でしたが、守られているアリエス。愛が伝わります。
・さり気なく挟まれる全体を写すカットです。ポールツリーの異様さが際立つ良カットでした。
・可愛くないチョ○ボ。こういう謎生物はファンタジーの醍醐味だと思います。
・お母さんは威圧感がありながらも、光を背負っているあたりがポイントでしょうか。ユンファにとって、ただ恐れるだけの存在ではないことが表されている気がします。
・ユンファカット2枚。右上から差し込む光は、ベタでしたが道がひらけた感じのする良い表現。
・空の色で、トラブルが落ち着いたことが分かるというのはさり気なく凄い。良い色使いです。
第5話 感想「PARADISE」
【シナリオ・キャラ面の感想】
前半は残された主人公の親達の状況。
後半は水の惑星を満喫する遭難組の状況を描いた回でした。
まず、前半の大人陣。
いい具合に陰謀が渦巻いている感じがします。
「身が張り裂ける想いです」
というセリフがこれだけ空々しく聞こえるのも珍しい。
それにしても、誰もが予定調和の中にいるような、異質な雰囲気は見ごたえがありました。
親達を演じているキャスト陣は豪華な顔ぶれとなっており、その雰囲気をよく表現されていました。
そんな中で一人、自然体で娘を心配するアリエス母は娘と同じく可愛い役回りでした。
そして、親の心子知らずで楽園を満喫する後半の子供陣。
水着回最高。
イメチェンしたユンファやアリエスの可愛さも加速し、素晴らしい回でした。
今回は特に、キトリーのツッコミは冴え立っています。
メタ的には、アリエスが面倒な感じにならないように立ち回っており、バランス取りに寄与していると思います。
と思えば、性別周りの話が動く気配。
アリエス・カナタの恋愛や、単一生殖など・・・話が進展しそうです。
息抜きとシリアスのバランスがよく、更にそれがシナリオで組み合わさるという非常にレベルの高い回でした。
ラストシーンでは、1話越しの伏線回収でウルガーがルカに対して銃を構える。
きな臭いルカの父親と絡んで話が進んでいくようですが、次回に期待です。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
・今回は特に、キトリーのツッコミ力が冴える回でした。
・何故か籠の中の鳥といった状況。どんな陰謀が渦巻いているのか・・・
・水着カット2枚。全体的に健康的で可愛い。そしてカナタの筋肉すごい。
・少しブラーがかけられた優雅なカット。ユンファさん可愛くなり過ぎでは。
・割と美味しそう。こまかいファンタジー食事描写は好きです。
・恋バナ回。目線の遣り方や仕草などがちゃんと女性的。見ごたえのある回でした。
・女性感のあるアリエスは何気に珍しい。可愛い。それにしてもカナタは・・・
・ルカ関係を2枚。少し古風で意味の強い構図があえて使われているように思います。
次回に期待です。
・今週のED1枚絵チョイス。毎回変わるのは本当に豪華。
第6話 感想「SECRET」
【シナリオ・キャラ面の感想】
ルカとウルガーの当番回でした。
今回は、ウルガーの感情の移り変わりが見どころだったと思います。
兄の仇への恨みが段々と解きほぐされていく姿はとてもエモい。
解きほぐされるきっかけが、これまでのルカとの関係性や父に疎まれる者同士という共感だったというのも、伏線が生きていてよかったです。
同じ共通点を持つというウルガーとルカの関係性も良かったのですが、個人的にはもう一つの関係性が気に入りました。
それは、カナタとウルガーの対比的な関係性です。
復讐のために磨いてきた銃の腕が活きなかったウルガーと、
今度こそ人を救うために磨いてきた筋肉が活きたカナタ。
そんなカナタに命を救われ、更には銃まで託されてしまえば、ウルガーがカナタに兄を重ねてしまうのもよく理解できます。
それにしても、ルカは美味しい立ち位置のキャラでした。
・男性的な面では、海で流されそうになる際のセリフ「うぜえんだよ、一匹狼気取りが。黙ってつかまってろ」。
・女性的な面では、津波から逃げる際の仕草や胸ぐらを掴まれたときの仕草。
幅広く印象に残るシーンを見ることが出来ました。
そして、今回も引きが良い。
シャルスが隠していることとは一体何なのか・・・
次回も期待です。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
・今回は涙の描き方が上手かった。溢れ具合がぐっとくる。
・動きの無い一連のシーンを豪華にするべく、光がよく仕事していました。
・両性具有バレシーン後は、眉を控えめにすることで女性らしさも醸し出していました。
・ここの「あっ」という演技と連れて行かれる感がエモい。
・短いカットでしたが、水しぶきのエフェクトが非常に丁寧で良カットでした。
・先程のシーンでの女性感から一転して少年らしいシーンへ。ずるいキャラです。かっこいい。
・好青年ウルガー。遂に瞳にハイライトが入りました。
・胸ぐら捕まれシーン。表情も可愛いですが、このときの「キュピーン」というコミカルな効果音がよく合っていました。
・目が開く流れで枚数を増やしたのは正解でしょう。得体のしれなさがよく出ていました。
・今週の1枚絵。かなり力の入って絵です。それにしても楽しそうで何より。
第7話 感想「PAST」
【シナリオ・キャラ面の感想】
動きの多い回。
前半では、シャルスの過去が明かされました。
貴族シャルスと平民セーラによる身分違いの恋という定番のエピソード。
セーラと名前の似ているアリエス。そして距離を縮めてくるシャルス。
どのように過去と現在が絡み話が膨らんでいくのかが気になります。
今回は、アストラ号の面々はちょっと簡単に絆され過ぎかなぁと言う気がしました。もう少し工夫が欲しかったところです。
後半では、アストラ号の墜落という物語最大の事件が発生。
更には、同じような境遇と思しき新キャラが登場という濃密なエピソードが描かれていました。
クルー達それぞれの、事件へのリアクションが見どころだったと思います。
キトリーは最近では珍しい直情的な反応。彼女がいるからこそ、悲劇がよく際立ちました。
それを支えるザックの冷静さもやっぱりかっこいい。
そしてそんな二人と対比されるカナタとアリエス。
これだけの事件でも仲が進展しないカナタとアリエスにヤキモキします。
終盤ではここでまさかの綺麗系お姉さんが登場。物語にどんなスパイスが足されるのか。楽しみです。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
・過去回は色調が補正されていました。演出として効いていたと思います
・シャルス以外にブラーをかけた表現。シャルスの一歩引いている感じが伝わってきました
・今週のアリエスカットその1。やはり作画が守られている
・RPGでよく見る夕方系渓谷。コスモ○ャニオンとかがありそう
・ザックとキトリーの組み合わせ。果たしてアリエスとカナタの関係性に寄与するのでしょうか
・アリエスカットその2。カナタさぁ・・・
・今週のEDの一枚絵。空を飛ぶ生物たちに何を思う
第8話 感想「LOST AND FOUND」
【シナリオ・キャラ面の感想】
今回もストーリーが大きく動く回。
前半は惑星脱出、Cパートでは驚愕の事実が判明しました。
まず、前半の惑星脱出パート。
航行不能というアストラ号最大のピンチでしたが、同型機のパーツを用いることで修理成功。
綺麗系お姉さんな新キャラ・ポリ姉の仲間の遺品も回収し、最後の惑星に旅立ちました。
正直、今回の惑星エピソードは終盤に向けて必要な設定回収のために差し込まれた感が強かったです。
ストーリー的な面白さは二の次という感じ。
トラブルの解消方法も、キャラのエピソードとのリンクもなく、シナリオとしては面白みのない回でした。
一方で今回の見どころは、後半に描かれたキトリー周りのエピソード。
遂に、ザックとキトリーの恋が成就。
子供時代の約束を受ける気満々だったというザックらしい描写は癒やされました。
Cパートではまさかのキトリーとフニが同一人物という事実が判明。
やはり、特殊EDで描かれる驚愕の事実はワクワクがたまりません。
記憶移植やらDNA関係法など・・・
これまで描かれてきたSFな設定と重なり、いよいよ物語が終盤に向かって加速しそうな雰囲気です。
【映像関係・印象的なシーン・小ネタなど】
・今回のMVP。ポリ姉の活躍が楽しみな一方で不穏な感じ
・乙女なキトリー。座り方の対比が良い
・大胆な告白は女の子の特権。というのを体現するキトリーさん
・父親とザックの目の対比。ザックは良く健やかに育ったなぁ
・ギャグアニメとSFアニメ、あいまいで良いんだと再認識する良カット
・カナタとザックの名コンビ感は良いですね。陰が多めで不穏な空気がよく伝わります
第9話 感想「REVELATION」
【シナリオ・キャラ面の感想の感想】
種明かし回
からの、更なる大どんでん返し回な第9話。
まず、A~Bパートまでは、カナタたちが親のクローンであること、そしてそれを受け入れるまでが描かれました。
ついに明かされた作中の大きな謎。
なぜ、カナタたちは宇宙へ遭難することとなったのか。
第5話で貼られていた伏線が綺麗に回収されました。
謎自体のSF的な面白さも良いのですが、それ以上にこれ良い!と思ったのはカナタたちの反応です。
作中でカナタたちはいろいろな事態から人間的な成長をしてきました。
しかし、今回の出来事は非常に大きい。
ともすれば、自分のアイデンティティの喪失につながるような出来事です。
キトリーの「家族には無条件の愛情があって、愛してたし、愛されたかった」
というセリフはその重みが伝わってくる鋭さがありました。
今回の話ではそんな事態を一人ひとりがどのように受け止め、乗り越えていくのか。
それが十数分につまっていました。
「俺たちが家族だ!」
というカナタの言葉を中心として、自分たちのアイデンティティを形作っていく。
まさにこの旅の集大成とも言えるシーンに熱くなりました。
カナタのリーダー感はやっぱり最高です。
あわせて乗り越える原動力となったのがザックとキトリーの婚約発表です。
まさに、家族という言葉を体現するような二人の発表はタイミングが完璧。さすザック。
クルーたちの反応も良い。
カナタの「よくやったザック!」という親戚のおじさん感に癒やされました。
シリアスから一気に明るくなる、この作品ならではの魅力がばっちりつまった良シーンです。
そしてCパート。
帰るべき故郷≠地球、という驚愕の事実。
この作品はサービス精神にあふれてますね、ほんと。
ポリ姉はこのためのキャラだったんだなぁと実感しました。
1話ラストでカナタに”アストラ”を「古い言葉では星って意味があるのか」と喋らせていたのはこのためだったようです。
しかしスケールの大きな話になってきました。
この事実が物語にどのようなスパイスを加えるのか、楽しみです。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
・問題の親たち。ルカの父親はガン・ソードのカギ爪の男を思い出させるサイコパス感がありました
・「俺たちが家族だ!」カナタ△
・ルカの芸術性が発揮されるカット。2枚めのカットは長回しでセリフだけという普通なら地味な絵面。
それをこれまで旅した星の絵を動かすことで、上手くさばいています。
・わかっていたけどザックのキトリー愛が強すぎてかわいい。2枚めの爆発エフェクトはわりとちゃんとしていた
・今週のアリエスかわいいカット。カナタは照れている場合ではない
・祝福の女子回。キトリーの表情が最高。ルカの絵がプリクラ的な効果になっているのも良アイデア
・Cパートのポリ姉。ポリ姉の疎外感を重視したシーン構成となっている。
具体的には、カメラ=ポリ姉視点のカットが多いのが特徴的。また、キャラの配置もポリ姉は遠め。
サスペンス的な盛り上げもできており、良コンテなシーン。
キャスト陣の「え、何言ってるのこの人」的な演技もハマリ、驚愕の事実がよく盛り上がった
第10話 感想「CULPRIT」
【シナリオ・キャラ面の感想】
「CULPRIT」=犯罪者。
第10話は、この作品最大の謎が明らかになる回でした。
前半は、9話から引き続いて「地球」と「アストラ」を巡る謎解き回。
キューバ危機:第三次世界大戦と、歴史の分岐点が明らかになりました。
なぜ歴史を変えたのか。
そして、神という概念を消したのか。
やはり、クローンと関係があるんでしょうか・・・
ただ、世界史から神を消したら復旧不可能になるんじゃないかなぁと思います。
中世の十字軍、文化史、科学史はどのように整理されているのか気になります。
そんな衝撃の事実により全く見知らぬ星となってしまったアストラ。
「惑星探索は、私たちの特技ですから」
というアリエスのセリフ。
アストラがもはや未開の地であるという彼らの心情がよく表れていて、刺さりました。
中盤は、その後の展開への伏線撒き。
そして、最後の惑星探索が始まりました。
今回の惑星探索は、その後の展開でカタルシスを生む「ため回」となっていました。
RPGの最終盤で各キャラがいい感じの関係性になる、あれです。
個人的にはザックとキトリーや、ウルガーとルカの掘り下げも欲しかったです。
・・・が、アリエスが可愛いからOKです!
ようやくアリエスの恋が報われそうな雰囲気がしてきました。
カナタのリーダーシップとヘタレさのギャップはズルいですね。
そして終盤、”刺客”をあぶり出すための作戦が始まります。
刺客の正体はやはりというべきか、シャルスでした。
しかし、大事なのはフーダニットよりホワイダニット。
次回、シャルスが明らかにする彼の理由に期待しかありません。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
今回は小ネタ系が多めとなりました。
・ポリ姉もギャグ要員入り。いいぞもっとやれ
・SFの地球消滅率は異常。アルマゲドン作戦は失敗してしまいました
■今週のアリエス可愛いシーン(増量版)。
1枚めの油断している感じと最後の上目遣いカットがお気に入り。
「いけません、いいけど、いけませんわ!」が可愛すぎる
・今回の惑星探索。幻想的で綺麗な惑星でした
・ついにカナタが仕事した!この青さも「彼方のアストラ」の魅力です
・洞窟の謎光さんがいい仕事をするラストシーン。鬼気迫る表情のシャルスが語る真実とは・・・!?(週間漫画のアオリ風)
第11話 感想「CONFESSION」
【シナリオ・キャラ面の感想】
やられた・・・!(喜び)
という感想な、種明かし回となった第11話。
今回は長めな感想になりました。
前半は、シャルスの過去と使命が彼の口から明かされました。
王の体となるために生まれた過去。
クローン達と自分を処分するという新たな使命。
シャルスの語る過去は、全てが王に与えられたもの。
生きる意味を外に求める哀しさを帯びていました。
そんな過去の中で、希望となったのが王女セーラ。
続けて明かされたのが、アリエスはセーラのクローンだったという事実。
点と点がつながっていく、種明かし回ならではの面白さがありました。
注目したのは珍しい役回りをされた声優さんたちの演技です。
まずは、アリエス・セーラ役の水瀬いのりさんの演技。
アリエスのような無邪気な役を担当されることが多いですが、セーラ役では思慮深さや賢さを持った役柄を見事に演じきっていました。
最近では、『青春ブタ野郎は夢見る少女の夢を見ない』で演じた牧之原翔子さん役に近いように感じました。
大人な声色も素敵です。
続いて、シャルスの父を演じた平田広明さんの演技。
大体、「どこかしらにカッコ良さを持った大人な男」という役柄を演じられることが多い印象ですが、今回は「ひどい親」という役柄。
しかし、重々しい演技により、シャルスにとっての「生きる意味であると同時に絶望である」という独特な存在感が伝わってきました。
さて、後半では、そんな過去と使命に囚われたシャルスを仲間たちが説き伏せます。
「うるせぇ、王とかうるせえよ!悲しんでるのは自分だろ!」
「友達なら本音を言え、このバカ!」
カナタの台詞はいつでもド直球で向こう見ず。
ただ、そんなカナタの台詞だからこそ、感動しちゃうんですよね・・・
それぞれの実体験をもとにした各キャラのセリフも、説得力があって響きました。
そして、ラストシーン。
自殺を試みるシャルスを救うため、カナタが右腕を失う。
きっと、カナタが腕を失ったからこそ、自分の本心にシャルスは気づけたんだと思います。
取り返しのつかないことをしたと絶望するシャルスにカナタが話す、なにげなく交わした過去の約束。
「僕は右腕として働くよ」
そして、カナタが改めて伝える。
「お前は、俺の・・・右腕だ」
いやぁ・・・完璧ですね。
見た瞬間、ぞわっときました。
伏線とはかくあるべきという綺麗な回収だったと思います。
特に凄いのは1話で描かれた、宇宙にてシャルスとカナタが手を繋ぐシーンが挿入されたこと。
どうやら、あのロープが届かないというエピソードは原作にはないアニメオリジナルなものだそうです。
1話の放送当時は、余計な原作改変という否の声もある賛否両論な内容だったと記憶しています。
それを、ここにきてこのシーンへ見事につなげた。
アニメのスタッフさんが原作をしっかりと理解されている。
そして、それを更に輝かせようと一生懸命に考えた結果、生まれた演出だと思います。
シャルスとカナタのつながりがより濃厚になる素晴らしい補完でした。
EDが挿入されるタイミングも完璧でした。
挿入歌演出は熱い。
また、EDの歌詞も良い。
これまで、このEDのの歌詞は何を示しているんだろう・・・
と思ってきたのですが、シャルスとカナタの歌だったんだとようやく理解しました。
アニソンはやっぱり最高!
では、ここからは作品のテーマについて書いていきます。
今回の話では、作品のテーマを示す重要なセリフが2つあったように感じます。
2つとも、シャルスを説得するために投げかけられたセリフです。
1つ目はカナタのセリフ。
「お前の生まれも育ちも、お前が選択したものじゃねえ。これから変われば良いんだ」
2つ目はキトリーのセリフ。
「親も遺伝も関係ないのよ。どういう仲間と出会って、どう生きるかでいくらでも変われるわ」
親の代替品として生まれ、その親に捨てられ、宇宙へ遭難したという先天的な境遇。
そして、旅の中で自分自身が選択することで自己を確立し、アストラ号のメンバーと家族になれたという後天的な現在。
この2つが、綺麗な対立軸となっています。
このことから、
「自分自身が何を選び、どのように生きていくかが現在を変えていく。」
そんなメッセージがこの作品には流れているように思いました。
それぞれのキャラに変わるきっかけを与えた人々もみな、後天的に出会った人々であることもこの軸を補強していると思います。
それをEDの1枚絵で示している点もよい演出だと感じました。
そのように見ていくと、アリエスは唯一、親=変化のきっかけとなったキャラクターであるという異質な存在であることが見えてきます。
最終回では、どのような活躍をするのかが気になるところです。
次回は遂に最終回。
1時間SPという万全の体制が整いました。
寂しくもあり、楽しみ。
そんな名作アニメを見ている時、特有の感覚にワクワクがとまりません。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
・イキイキしているシャルス。これが彼の本心
・眺めていた写真の正体。赤色がセーラの象徴
・これは好きになっちゃうやつ。2枚めは囲まれた庭に、唯一赤色の屋根。シャルスの心象風景のイメージでしょうか
・今週のアリエスピックアップ。ロリアリエスも可愛い。
髪飾りの色が、セーラの象徴である赤から白に変わった点に注目したい
・今週のピックアップシーン。
映像のつながりは挿入歌でフォロー。
先の欠けた差し出された右腕~手がつながる~手の同化~一体になる、という意味の強いシーン。
カナタのスーツの色が赤色と青色というのも意味深・・・というのは考えすぎ?
・EDの1枚絵もシナリオを補完していました。スタッフの愛が溢れます。
あとキャラの紙人形がとてもかわいい
第12話 感想「FRIEND-SHIP」
シナリオ・キャラ面の感想
終わった・・・!
そして、始まった!!!
これぞ大団円な第12話でした。
今回は、シナリオの振り返りから入り、考察へ流れます。
前半は、シャルスの贖罪と世界の秘密が描かれました。
あえて憎まれ役を買うウルガーと、吠えるカナタ。
「そんときゃ左腕もくれてやる!今、信用しないでどうする!!」
仲間をかばうとか、気遣うとか、理性的なところじゃない。
”心”でシャルスと仲間たちを信頼しているカナタだからこそ、言えるセリフだと感じました。
もうほんと・・・カナタはかっこよすぎる。
それに対するシャルスの返しも良い。
「みんなのおかげで自分になれた・・・僕は、オリジナルとして生きたい。みんなと一緒に帰りたい」
友情が生きる意味を生んだ。
この作品の一つのハイライトとなるシーンだったと思います。
真に仲間となったシャルスから語られる世界の秘密・・・は考察パートで語ります。
が、とりあえず毒舌フニシアかわいい!ポリ姉140才もかわいい!
シリアスとギャグの切り替え。クセになるアストラ名物がもう見れなくなるのは寂しい限りです。
▼ポリ姉(140才)
そして、最後の作戦が始まりました。
アリエスとお母さんの絆が、グレイス刑事にメールを届けた。
このエピソードはアニメオリジナルとのこと。素晴らしい補完です。
みんなで手を重ねてメールを送る姿、最高にエモいシーンでした。
ただ、ここで忘れたくないのがセイラの存在だと思います。
アリエスとお母さんの絆が生まれたのも、シャルスの心が今まで折れなかったのも。
背景にはセイラの存在がありました。
彼女があったからこそ、メールを届けるという今につながったんだと思いました。
後半の話になりますが、ユンファのコンサート前に赤と白のチューリップが写るカットがあります。
11話の記事で書いたとおり、赤はセーラの象徴、白はアリエスの象徴として描かれている。
セイラとアリエスの活躍があったからこそ、7年後の未来が訪れた。
セイラとアリエスがもたらした奇跡を、あのカットは表現しているように感じました。
(このカットにはもう一つ意味があると思いますが、それは考察で)
その後のシーン。
もう結婚しろよお前ら(カナタとアリエス)。
結婚したよお前ら!!
▼今週のアリエスピックアップカット①。最高に美少女
後半は陰謀を早々に片付け主題へ。
カナタたちの未来に話が移っていきました。
この清々しいまでの主題を優先する姿勢にしびれました。
まずは、帰還シーン。
EDと共に始まる卒業式のようなみんなの回想。
もう、キャスト陣の演技が最高すぎる!
一つ一つ、思い出と今この瞬間を噛みしめるような声色。
嬉しさと寂しさがこみ上げてこっちまで泣けてきました。
アリエスの「何が一番思い出に残ってますか?」も良い。
その後のザックの「そうだなぁ・・・」の読み方が感情入り過ぎでぐっと来ました。
▼B5班。本当にいい表情
カナタへの感謝を伝える仲間たちに、カナタが返したのは迷いのないセリフ。
「みんなだ。みんながいたからだ。誰か一人でも欠けたらここにたどり着けなかった。みんな頑張ったな」
「俺は今だ。今この、着陸の時だ」
みんなと成し遂げた今こそが、カナタにとって最高の思い出だと真っ直ぐに言い切る。
かっこよすぎて頷くしかなかった・・・
ラストエピソードは、ユーモアたっぷりに語られる彼ら彼女らの未来。
フニちゃん、立派に育って・・・
ウルガーさんはイケメンな上に、フニの星までもらって・・・
いいコンビです。あとポリ姉も若く見えてよかった。
▼今週のアリエスピックアップカット② あざと可愛い。よく食べてよく寝れば強くなれる
▼フニの帽子についていたヒトデが移植。ウルガーさん・・・?
続いて、お姉さん?な3人組。
ウルガーとルカの悪友感は続く。キトリーとザックのアツアツ感も続く。
そして、カナタとアリエスの新婚生活が始まる。久々に祝福したいカップルでした!
ラストシーン。
ユンファの歌う「アストラ号の冒険」。
夢を叶えたユンファの歌とともに、カナタ・ザック・シャルスの夢と約束が進み出す。
大人になっても変わらない彼らのやりとりに、5ヶ月の時が生み出したかけがえのない青春の息吹を感じました。
道なき道を進み、未知へと挑戦する。
B5班の道に幸あれ!!
考察①:ラストカットの意味
ここからは、気になった2つのカットに関する考察に入ります。
▼一つはラストカットに写るワームホール。
結論から入ります。
私は、「ワームホール」はカナタたちの未来を暗示したものだと考えました。
順にご説明します。
前提から。
まず、この作品の秘密は大きく2つあります。
ひとつ、歴史を捻じ曲げ隠匿した人類。
ひとつ、カナタたちがクローンである。
この2つの秘密の影響を受けたのは「現代を生きる人類」と「カナタたち」です。
そして、両者には次のような共通項があります。
・生まれ(歴史)を親によって捻じ曲げれた
・作られた人生を歩んできた
・アストラ(星と船)に救われた
・秘密を暴き、前に進み始めた
このような壮大な対比を使って描かれた、この作品のテーマは何だったのでしょうか。
それは、着陸シーンにおけるアリエスのセリフに集約されます。長いですが引用します。
「人類は平和を実現させましたが、それは嘘で囲ったいびつな世界です。壁をぶち破って外へ出るべきだと、今の私たちなら言えます。
きっとそこには恐ろしいことが待っていて、次々にトラブルが襲うでしょう。
だけどきっと大丈夫。
手を取り合って支え合って、励まし合えれば・・・手を伸ばした闇の先に、きっと光があるでしょう。
困難を乗り越えてその先へ。私たちは行くのです。
B5班書紀:アリエス・スプリング」
「困難を乗り越えて、仲間と共にその先にある光を求める」
それがこの作品の主題の一つでしょう。
では、『彼方のアストラ』において「困難と光が待つ未来」へと続く”道”となったのは何だったのか。
それこそが、「ワームホール」です。
人類はワームホールを開発したことで、戦争と発展の道をたどった。
カナタたちは、ワームホールにより、漂流と成長の道をたどった。
このように、ワームホールこそが未来へ繋ぐ道、ひいては未来を象徴するものとして描かれています。
だからこそ、ラストカットには大きくワームホールが写る。
カナタたちに待ち受けているのは順風満帆なだけではない、しかし必ず光がある未来だと。
そんなメッセージを残しているのだと私は受け取りました。
私もそう願います。
蛇足ですが、上のセリフで使われている「手」という言葉。
11話ラストのシャルスとカナタのシーンやEDの歌詞。
12話のラストシーンでもカナタとアリエスの手が重なるシーンが描かれます。
手は、人と人のつながりを象徴するシーンで使われている。
それに着目しながら作品を見返すと、発見が多そうな気がします。
考察②:アリエスはなぜ主人公なのか
続いての考察です。気になったのは次のカット。
▼白と赤のチューリップが寄り添うカット。
意味深なこのカットが示すもの。
それは、「クローンという生まれ方をアストラ号のメンバーが受け入れた」という事実だと思います。
こちらも説明してきます。
注目すべきシーンは2つ。
①アリエスとカナタがシャルスに”儀式”を行うシーン
②白と赤のチューリップが写る、アリエスが未来に生まれる娘の名前をセイラにすると決めたシーン
2つのシーンにこそ、チューリップの意味を読み解くヒントがあると思います。
まずひとつ目のシーンから。
シャルスの血筋でいえば娘のような存在である、セイラの遺伝子から生まれたアリエスと結婚する。
だからこそ、”儀式”としてカナタはシャルスに「お嬢さんをください」と伝える。
クローンであることを逆手に取ったような・・・
見方によっては、悪いジョークのようにも見えるこのシーン。
ですが、シャルスも、その話を聞くキトリーもあっさりと笑い飛ばします。
クローンであるという真実を初めて伝えられた時の彼らとは対照的です。
いろいろな経験を経て、今を生きる彼らはクローンであるという生まれ方を完全に受け入れた。
自身の生を肯定することが出来た。それを示すシーンなんだと思います。
続いて、2つ目のアリエスの名付けのシーン。
名付けをした直後に赤と白のチューリップが写る。
繰り返しになりますが、赤と白はそれぞれ、セイラとアリエスの象徴です(髪飾りの色などで表現)。
赤と白のチューリップが寄り添う。
すなわち、セイラとアリエスが寄り添う。
ひいては、クローンとクローンの元となった人間が寄り添うこのカット。
このカットもまた、クローンという生まれ方を受け入れたことを暗喩するシーンなんだと思いました。
このように見ていくことで、アリエスが作品の重要なテーマを示すもうひとりの主人公である事がわかります。
アリエスはB5班の中で唯一、実の親に裏切られていない異質な存在です。
それどころか、彼女の持つ親との絆が世界を変えるという奇跡につながりました。
そして、このチューリップのシーンではクローンとして生まれたことを肯定している。
B5班の面々は、アリエスを除いて「生きてほしい」と願われて生まれた存在ではありません。
親世代の代替品という”自己”が薄い状態で生まれました。
だからこそ、物語の中で今を懸命に生きて、成長し、自分たちの手で自己を確立していきました。
それとは対照的なのがアリエスです。
アリエスは、生まれたときから持っていたお母さんやセイラとのつながり、絶対記憶能力という生来のギフトをもって、物語の中で活躍していきます。
このことから分かるのは・・・
クローンであることから、「生まれながらの自己が薄い」という宿命を背負ったB5班。
その中でアリエスは、「生まれた時、既に持っている自己の価値」を体現する役割を果たしているんです。
主人公であるカナタが「未知への挑戦による成長」を表現する存在なのだとすれば、アリエスはその逆。
アリエスは「生まれたこと自体に価値がある」、「ありのまま」の素晴らしさを表現する存在なのではないでしょうか。
アリエスとカナタ。2人の主人公が示すこと。
それは、
「奇跡によって生まれた自分を大事に。奇跡を胸に、未来へ向け、未知へと進もう。」
そんなメッセージが込められているように思いました。
さて、総括になりますが、笑い、泣き、友情、伏線、テーマ、SF、ミステリ、キャラクター・・・
全てが綺麗に重なり合ったこの傑作と出会えて本当に嬉しかった。
希望と活力をもらえました!
またいつか、辛いことがあった時に見返したい。そんないつまでも心に残る作品です。
【映像関係の感想・印象的なシーン・小ネタなど】
■今回は、ワンシーンのみピックアップ(後半Aパート:着陸シーン)
セリフと画面のシンクロが美しい、集大成にふさわしいシーンでした。
①帰ってきたことで改めて気づいた世界の美しさを表現。描きこみと光のコントラストで情報量をあげている
②「恐れずに進むべきだとカナタさんは言いました」全員が前を見据える方向性の強いカット
③「嘘で囲ったいびつな世界です」画一的で動きのないカットにすることでセリフを表現
④動きのあるカットを短いスパンで重ねることで生命力を表現
⑤「手を取り合って、支え合って」
⑥「手を伸ばした闇の先に、きっと光があるでしょう」
冒頭のシーンが、物語のクライマックスで主題につながる。
シナリオ構成と画面が綺麗に組み合わさる。
⑦「みんな長いキャンプおつかれ。また元気に学校で会おう」。本当に学校に通うポリ姉かわいい
⑧広げた手に還るアストラ号。故郷の大きさを感じる最高のラストカット