【ネタバレ無し】佳作アニメレビュー『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』感想・評価(70点)

【ネタバレ無し】佳作アニメレビュー『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』感想・評価(70点)

2018年夏アニメ、アニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』をネタバレ無しでレビューします。

 

おすすめ度:★★★★☆(70点・佳作)

 

一言感想 :現実では見れないような豪華な演出を詰め込んだ「理想の舞台=レヴュー」が、観客を作品に引き込んでいく。

どんな作品?

舞台に懸ける少女たちの成長と戦いを描いた作品です。

作中では、主人公である少女たちが目指す夢の舞台「レビュー」における主役の座を掴むため、それぞれが競い合っていきます。その過程の中で、「自身の持つ輝きとはなにか?」、「自身が目指していた夢とは何だったのか?」など、自分の内面と向き合いながらそれぞれのキャラクターが成長していく物語です。

また、そういった彼女たちの成長を1~2話ごとに行われる「劇中劇=レヴュー」に落とし込み描くことで、この作品の唯一無二の個性を作り出しており、アニメの表現としても興味深い演出を見ることが出来ます

要素別評価(5段階)

カテゴリ:青春モノ・アクション

総評:★★★★☆(70点・佳作)


シナリオ:★★★☆☆

キャラクター :★★★☆☆

演出 :★★★★★

(音楽 :★★★★★ 絵 :★★★★★ アイデア:★★★★☆)

 

「レビュスタ」のここは良かった

「レヴュー」を通して描かれる舞台少女たちの”信念と成長”

この作品最大の魅力は、なんと言っても「レヴュー」でしょう。

1~2話ごとに、いわゆる劇中劇であるレヴューを通して主人公など「舞台少女」(舞台に懸ける少女たちを指す作中での呼び名)たちがスターの座を勝ち取るために競い合う姿が描かれます。スターの座を勝ち取る方法はなんと、剣等の武器を手に取り、舞台上で直接歌いながら戦います。

突飛な設定ではあるのですが、これが大変素晴らしい出来です。

以下、その理由を紹介します。

超高水準な作画と挿入歌

力の入れようがよく伝わってきます。

レヴューは全体として、舞台少女同士の剣戟により進行していきます。それぞれの舞台少女が剣戟に用いる得物は剣・弓・薙刀などバリエーションに富んでいるのですが、それぞれの得物の特徴を活かしたアクションシーンが各話で展開され、迫力があります

レヴュー内での挿入歌の使い方もただCD音源を流すのではなく、シーンに合わせて声優さんが歌っており「戦姫絶唱シンフォギア」シリーズでみられるような”歌とアクションが融和した演出”となっています。

また、作中にはいわゆる”強キャラ”ポジションのキャラクターが登場しますが、派手なカメラワークや大仰な舞台装置の使用などの手法により、キャラクターの強さが演出により表現されている点も見応えにつながっていると感じました。

具体的なレヴューのイメージは次のPVをご覧ください。

 

キャラクターを描くためにこそある「レヴュー」

前項のように、大変見ごたえのあるレヴューシーンなのですが、真に凄い所は次の点だと思います。

「レヴュー」が、舞台に立ったキャラクターの内面を描く演出として上手く利いているということです。

各話で描かれるレヴューのジャンルは「時代劇風」・「宝塚風」・「野球」・・・etcと、個性に溢れています。これはもちろん、キャラクターたちの個性をレヴューに落とし込み、演出へ昇華させた結果にほかなりません。また、レヴューにおける勝者やその勝ち方についても、「シナリオの中でどのようにキャラクターが成長していくか」と密接につながって描かれています。

ただ見ごたえのあるシーンを用意することにとどまるのではなく、”キャラクターを魅せること”、そして、”レヴューの見ごたえ”の二点を両立させている点が、制作陣の魂が入っていると感じられ非常に良いと思いました。

「レビュスタ」のここは残念

物語への自然な没入を妨げる3の理由

この作品の惜しい所は、主軸となる物語へどうにものめり込みにくいところだと私は感じました。何故、そう感じてしまったかを3つの理由で解説します。

 

1.物語の設定、話の動きを直接的なセリフで説明しない。”説明役”の不在

実はこの作品、設定が非常に凝っています。世界観、キャラクター、小物に至るまで、作中で登場するものの多くは、視聴者に謎掛けをするかのように謎を伴って描かれます

しかし、それらの謎は直接的なセリフでの解説がほとんどされません。当然、説明役や解説ポジションとなるキャラクターも登場しません。あくまで、描かれているものが持つ文学的な背景や、配置の仕方、文脈などから視聴者が考察すべきものとして謎は扱われています。

そのような演出プラン自体は成立すれば効果的なのですが、後述するある理由により残念ながら物語への没入を妨げる要因となっているように感じました。

 

2.そもそも、モチーフとシナリオで描きたいことが噛み合っていない。

例えば、主人公が舞台に上がる際、謎を伴った一見唐突に見える変身シーンが挟み込まれます。

変身シーン自体は見ごたえがあり、演出の内容も考察欲をくすぐられるモチーフが登場し、気にはなります。更に、この際に描かれる主人公は天真爛漫に元気な姿が描かれる日常シーンとは打って変わってミステリアスな表情を浮かべている・・・のですが、その後、実際に舞台へ上がった際に描かれる主人公は日常シーンとそんなに変わらない、いつもの元気な姿で舞台上を躍動します

果たして考察をし、変身シーンの意味を解き明かした先に作品の根幹をなすシナリオにつながるような意味付けは本当にあるのだろうかという疑念に駆られます。

このように、点で見ると考察しがいのあるモチーフもあるのですが、そのモチーフが意味していることと、シナリオの中で描かれていることが連動しているかと言われるとそうでもないように感じてなりません。やはり、モチーフの持つ意味とシナリオ・演出が連動してこそ、このような謎掛けは価値を持ってくるのだと思います。

3.キャラクター数が多いことにより起こる、サブシナリオ偏重、メインシナリオの深掘り不足。

作中に登場するメインキャラは8人。彼女たちをある程度公平に尺を使って描いているのですが、それらはあくまでサブシナリオとして扱われており、メインシナリオに直結するものではありません。結果として、物語の軸であるメインシナリオは深掘り不足でやや薄味に感じました。更に、上記のような謎掛けが先行してメインシナリオも描かれるため、時々、「今、話は結局どこにむかっているのだろう・・・」という疑問が発生することになりました。

 

総評

・作品の核である「レヴュー」は練りに練られた演出アイデアが詰め込まれており必見の出来。

・全体として作画・BGM・挿入歌はどれも高水準で力が入っている。

・メインシナリオは、舞台設定やシナリオに散りばめられた回収されない多くの謎や、扱うキャラクターの多さなどが影響し、やや魅力の感じられないものとなっている。なお、サブシナリオは「レビュー」との結びつきもあり小品としては良い出来。

 

惜しい所もありますが、とても力の入った作品であることは間違いなく、夏アニメの中で一際輝いていた作品でした。

 

参考:要素別評価の理由

総評:★★★★☆(70点・佳作)


シナリオ:★★★☆☆

メインシナリオのみに限定した場合、上記までの理由により求心力不足のため星2。更に、作品のウリである舞台少女の輝きとメインシナリオで描かれている内容が少しマッチしていないように感じる。

一方で、1話完結型のサブシナリオはまとまっており良い出来。キャラの過去と成長を過不足なく描けており、更に演出ともマッチしていて楽しく見れました。サブシナリオがメインシナリオと連動する構成となっていればまた違った評価になったのではないでしょうか。


キャラクター :★★★☆☆

主人公2名を主軸すると、上記のように星3となります。これは、メインシナリオの根幹をなす二人の関係性が、あまり真に迫ってこちらへ訴えかけてくるものが無いように感じたことに起因します。関係性を表すシナリオにもっと工夫が欲しかったと思います。

ただ、全キャラ含め、基本的なキャラデザや性格のつけ方、キャラ同士の関係性は各キャラ魅力的で可愛らしく出来ています。特に、「天堂真矢」は威風堂々としてながらも時々、年頃の少女らしさを見せるギャップがとても気に入っています。


演出 :★★★★★

(音楽 :★★★★★ 絵 :★★★★★ アイデア:★★★★☆)

前述の通り、演出はとても高レベルです。レヴューだけでなく、日常シーンの作画やBGMも安定しており、何気ないキャラ同士の掛け合いもクスっとくるものも多く、全編通して楽しく見れました。

ただし、考察されることベースで組まれた演出等は、シナリオと上手く絡んでないと思うことも多く、アイデア先行・ただそれを使いたいだけという感も。もう少しモチーフをうまく使い、また、視聴者と作り手のギャップを埋める工夫が欲しかったと思います。

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