【ネタバレあり】アニメ映画レビュー劇場版『SHIROBAKO』(感想・評価)

【ネタバレあり】アニメ映画レビュー劇場版『SHIROBAKO』(感想・評価)

何が何でも、やるしかない。
頑張る人へ向けられた、最高の応援歌でした。

今回は劇場版『SHIROBAKO』のネタバレあり感想と評価を書いていきます。

作品未視聴の方は、ブラウザバックを推奨します。
ぜひ、テレビ版をご覧になった後、劇場版をご覧ください!

 

SHIROBAKO 感想 (2)

 

評価(5段階・要素別)

カテゴリ:お仕事

総評価:★★★★☆(84点)


シナリオ:★★★★☆

キャラクター:★★★★★

演出:★★★★☆
(音楽:★★★☆☆ 映像:★★★★☆ アイデア:★★★★☆)

※評価の理由は、ページ下部に記載しています。

 

劇場版『SHIROBAKO』レビュー「頑張る人への応援歌」

久しぶりの白箱、堪能してきました。

書きたいことが多すぎて、迷う!
それくらい、中身が濃く満足感のある作品でした。

 

5年ぶりにアニメ業界で進みつづける、楽しくてアニメバカなキャラたちとまた会える

画面の中で動く宮森たちを見るだけで、かなりぐっと来るものがあります!

 

ですが、キャラだけでなく物語も奥深い。

「お仕事モノ」といえば『SHIROBAKO』。

そう言っても過言ではない、頑張る人への最高の応援歌な作品だったように思います。
たくさんの気力をもらいました!

 

それでは、作品について大きな部分から順番に感想を書いていきます。

 

◎直球なテーマが、巧みなシナリオ構成により描かれる

まずは、テーマ性とシナリオ構成の感想から。

 

舞茸しめじ先生が作中でりーちゃんにかけたセリフ。

「君なら、どんな球で勝負する?」

 

本作を見終わった感想は、「ドストレートで勝負をかけてきたな」ということです。

SHIROBAKO 感想 (5)

 

今作は、武蔵野アニメーションの失墜から物語が始まります。

あの楽しかったムサニの寂しい現在。
切なさとともにシビアな現実が描かれる。

そして、そんなムサニが劇場版アニメの作成をきっかけとして、復活していくというのが大筋。

その中で、おなじみの面々が壁にぶつかったり、乗り越えたりする構成でした。

 

そんなシナリオで強く描かれていたのは、「なにがなんでもやるしかない」ということ。

アニメを取り巻く、シビアな現在を描く。
楽しいキャラたちも描く。
エンタメだってする。

ですが、もっとも重視されていたのは「テーマをストレートに表現」すること。
それが、今作のシナリオだったと思います。

 

では、テーマとその描写について、少し長く書いていきます。

 

まず作中では、現実と同じく、4年の時間が経過しています。

TV版でおなじみの楽しい面々から、笑いが消えています。
それぞれが壁にぶつかっている。
彼らの多くは、自分の現在に戸惑い、立ち止まっていました。

 

その壁の乗り越え方は、人それぞれ。
友人の発破だったり、得難い経験だったりさまざまです。

そのキャラらしい壁の乗り越え方は本当に素晴らしかったんですが…
とりあえず遠藤さんは爆発してください。

30代なのに瀬川さんとハイスコアガールっぽいやり取りをしたり、甘々な奥さんがいたり…
主人公ばりの待遇で素直にうらやましい!

SHIROBAKO 感想 (7)

閑話休題。

 

壁を乗り越える描写で一際特徴的だったのは、主人公・宮森あおいの復活劇でしょう。

宮森は作中で2度、立ち止まってしまいます。
1度は、ムサニの縮小によりアニメ制作が楽しいという気持ちを失う。
2度めはかつてのトラウマとの再遭遇で。

そこから、水島監督らしい壮大なミュージカルによる演出と共に復活するのですが…

肝心なのはその立ち直り方。

SHIROBAKO 感想 (9)

 

1度目は丸山元社長の手助けがあるものの、基本的に彼女は自分自身の足で立ち上がります
そして、自分の手で道を切り開いていく。

「やるしかない」。そう自分を鼓舞しながら、辛いこともある現実に立ち向かっていく。

 

この立ち直り方に、エンタメ的な賛否両論があることは私も感じます。

ですが、この部分にこそ、作中のメッセージがこもっているように思います。

現実は楽しい事ばかりでなく、辛いこともある。

それでも、自分がやるしかない。

辛くても迷っても、自分が進むしかないんだと。

 

何がなくとも突き進んでいく。
宮森の背中を通して、作品が私達を応援してくれているように感じました。

SHIROBAKO 感想 (8)

 

そんな宮森の姿は、ラストの劇中劇で結実していきます。

尻すぼみとなったラストシーン。
それを、宮森が皆を鼓舞し、描き直す。

改めて描かれたのは、バッドエンドでありながらも、懸命に現実へ立ち向かい進むキャラクターたち。

そして、変更後のラストシーンでキャラたちは、脱出成功と若干の生存フラグという結果を掴み取る。

 

「やるしかない」の精神で進み続ける宮森と、劇中のキャラたちがシンクロしているんです。

劇中劇の一つ一つのセリフがそのまま、宮森たちの想いであり、作品のメッセージになっている。

正直、この劇中劇を見ている時はかなり胸に来るものがありました。

 

物語中盤で、丸山社長が宮森に語りかけたアドバイス。

「君だからこそ作れるアニメーションを作りなさい」

それが結実した、ラストに相応しい描写だったと思います。

SHIROBAKO 感想 (2)

 

さて、この作品はアニメ制作をテーマにしています。

だからこそ、スタッフさんの想いがダイレクトに伝わってくる点が凄い好きなんです。

TV版でもたくさんの元気をもらいました。
アニメへの愛と夢を動力に突き進んでいく、宮森の姿に若々しい活力がありました。

 

映画版では、「好き」や「若さ」だけではどうにもならない現在が描かれている
そんな現実への回答は、「とにかく動け!」「諦めるな!」「進め!」。

シンプルでドストレートな回答です。

でも、だからこそ、複雑になりすぎた今の時代に相応しいと私は思います

 

とにかく突き進んだ、宮森達の未来。

ラスト1つ前のシーンに、彼女たちの未来の暗喩がありました。

前半で言及された皆の夢がつまった細い三日月
それが、十六夜月くらいの大きさになっている。

がむしゃらに進んだからこそ、夢に一歩近づいたことが表現されています。

 

そしてダメ押しの、ラストカット。
活気の戻ったムサニのホワイトボードには「真・第三飛行少女隊」の文字が…。

…ムサニ復活篇、本当に見たいです!

 

まとめます。

今作は劇中でも現実でも、4年という時間が経過した今だからこそ描かれるべき直球な内容となっています。

描かれたのは、ひたすらに進み続けるアニメバカ達の背中。

夢に向かう人達を「アニメ」という背中で励ます。そんな本作にたくさんの勇気をもらいました。

 

□細かい部分色々(演出・キャラ・小ネタなど)

ここからは、細かい部分の演出やらシナリオやらで、気づいた部分を徒然に書いていきます。

 

シナリオ面

シナリオで惜しいと思ったのは、4点です。

 

1点目は、正直、TV版のフォーマットは優秀だったなということ。
なぜかといえば各話のラストで、キャラの成長の結果をアニメで描写できていたから。

今作では、キャラの成長がシナリオでは見れるのですが、その成果までは流石に描写しきれません
成長のカタルシスがやや薄まったように思います。

 

2点目は、終盤の悪者退治のシーン

みゃーもりの着物姿は美しかった!

ただ、やっていることはちょっとTV版の焼き直しすぎたかなぁと。
契約書で勝負していくというアイデアも少し、物足りなさが有りました。

相棒となる宮井さんも、もう少し本筋に絡んできてほしかった!

テーマの本筋ではないとはいえ、ここの描写はエンタメとしては大事だったように思います。

SHIROBAKO 感想 (11)

 

3点目は、みゃーもり復活劇の部分。

テーマ性からすれば理解は出来る描写だったのですが、エンタメ的にはちょっと物足りないところも。
仲間との団結や、過去の描写の再利用など、盛り上がるアイデアが欲しかったかなぁと思います。

 

特に気になったのは1度目の復活における、丸山社長のセリフと直後のミュージカルの噛み合わなさ。

丸山社長は、宮森に「過去を振り返るのではなく未来の作品を」といった話をしていたと思います。
対して、ミュージカルパートは思い出の作品を振り返るもの

好きなシーンだけに、シナリオと演出が少し繋がっていない気がします。
もう一息の整理がされていても良いように感じました。

 

4点目は、ラストの劇中劇の部分。

劇中劇の描き直し自体は素晴らしい。

ただ、みゃーもりと描き直しの部分のリンク。
それもう少しわかりやすく提示されたほうが良かったかなと感じました。

少し、つながりが暗喩的になりすぎて希薄なように思います。

 

演出面

演出面はキレキレでした!

 

時事ネタ、キャラの個性を活かしたギャグが相変わらず面白い!

小笠原さんのジャージ姿。
「違うの…」はちょっと反則級に可愛い。アラサー全然有りです!

木下監督の牢獄ネタも鉄板。
無駄にヌルヌルした動きがキモかわいい。

劇場でもかなりの笑いが起きていて楽しく見れました!

SHIROBAKO 感想 (1)

 

ちなみに私が特に気に入ったのは、終盤の杉Gのアニメ教室における絵麻の描写

子どもたちを清楚な声で煽る絵麻…
なんともいえない背徳感があってよかったです。

 

さて、キャラごとの壁の乗り越え方も、”そのキャラらしさ”が出ていてぐっと来ました。

遠藤の昭和っぽい甘々な奥さんとの会話。爆発して下さい。

そして、声優さんらしい、ずかちゃんと縦尾さんの即興劇。
年の功と、声優経験のあわせ技は説得力抜群でした!

現実を少しデフォルメしたような、アニメだけどリアルがつまっている感じがたまりません。

 

武蔵野アニメーション凋落を示す演出も効いていました。

1話をオマージュした対比の積み重ねが上手い。
カーレースは始まらない。
ラジオの内容も景気が悪い。

そして決定打となる、放送作品を皆で見ないという現在の武蔵のアニメーションの描写。

みゃーもりの切なさにぐっと引き込まれる、良い演出だったと思います。
それがあるからこそ、後半の活気が本当に暖かく見える。

欲を言えば、その盛り上がりの部分はもっと長く見て行きたかった思いもありましたが…。

結び

今作は、作り手側もかなり迷ったんじゃないかと想像します。

何をテーマとした劇場版にするのか。

5人娘の夢にフィーチャーするのか、時事ネタ重視にするのか、劇場版づくりを重視するのか。

『SHIROBAKO』という作品の幅の広さと懐の深さに驚きます。

ネタがマンネリになっても良いので、水戸黄門のような感じで延々とアニメ制作の現在を切り取る。
そんな作品になってほしいものです。

 

ただ、その中で今回は全部を絡めつつ「お仕事モノ」らしい応援歌に仕上げた。
個人的にはとても満足で、繰り返し見たい作品となりました。

自分自身も、5年という時間を経て生活環境が変わりました。
だからこそ、作中のキャラに凄く感情移入してしまう

自然と、みゃーもりを始めとしたキャラたちを強く応援していました。

 

とにかく、前へ。

見る人の背中を力強く押してくれる、暖かな1作でした。

 

今作は以上です。ありがとうございました。

 

参考:評価(5段階・要素別)の理由

カテゴリ:お仕事

総評価:★★★★☆(84点)


シナリオ:★★★★☆

テーマ性の掘り下げが素晴らしい。

一方で、記事で書いたようなエンタメ面の既視感や物足りなさは気になる。


キャラクター:★★★★★

相変わらずの濃い面々。

それぞれの絡みもいじり方も納得感があり楽しい。

欲を言えば、5人娘の活躍はもっと見たい所。

また、映画の新キャラのインパクトがやや薄かったのも惜しい。


演出:★★★★☆
(音楽:★★★☆☆ 映像:★★★★☆ アイデア:★★★★☆)

音楽はいぶし銀な活躍といった印象。

映像は、地味な部分を派手に盛り上げるよう頑張っていた。
敵陣への乗り込みシーンの動きは繰り返して見たい。

演出は、1話のオマージュや、そのキャラらしさを引き出すものなど、見ごたえ抜群。

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