『ヴィンランド・サガ』をネタバレなし評価と感想でレビューしていきます。
おすすめ度:★★★☆☆(65点)
一言感想:太く短く、刹那を生きるヴァイキングたちの生き様に心が震える。
評価(5段階・要素別)
カテゴリ:アクション・ヒューマン
総評価:★★★☆☆(65点)
シナリオ:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
演出:★★★☆☆
(音楽:★★★☆☆ 映像:★★★★★ アイデア:★★☆☆☆)
※評価の理由は、ページ下部に記載しています。
『ヴィンランド・サガ』レビュー「ヴァイキングの生き様に見る、生きるということ」
少年の目に、ヴァイキングの世はどう映るか。
今回紹介するのは『ヴィンランド・サガ』。
「月刊アフタヌーン」で連載中の漫画が原作です。
超あらすじは次の通り。
11世紀始めのヨーロッパ。
雪国に住む少年トルフィンは、ここではないどこか--
--遠く果てにあるという豊穣の大地「ヴィンランド」にあこがれていた。
日常の中にいたトルフィンだが、彼の父トールズのもとへ1人のヴァイキングの戦士が訪れたことで、運命が動き始める。
ある事態をきっかけに、ヴァイキングたちが命をぶつけあう戦乱の世で生きることになったトルフィン。
彼の目には、猛々しくも刹那的なヴァイキングの生き様はどのように映るのか・・・。
今回は、この作品がどんな作品なのかを3つのポイントで紹介します。
◎ポイント1「作風」:ヴァイキングの生き様によって描かれる”生の価値”
まずは、作風から紹介します。
あらすじで書いたとおり、この作品の物語はトルフィンの視点で展開されます。
▼主人公・トルフィン(CV:石上静香)
慎ましやかだけれど幸せな家庭で育ったトルフィン。彼は、突如としてヴァイキングたちが殺し合いを楽しむ戦場の宴に放り込まれてしまう。
しかし、トルフィンは生きることを諦めない。
ある目的のために、必死でヴァイキングたちに食らいついていく。
そんなトルフィンの姿と目を通じて、生というものの儚さや力強さが描かれていきます。
戦に巻き込まれて命を散らせるものがいる。
トルフィンのように必死で生き残るものがいる。
かと思えば、自ら死と戦場を求めるヴァイキングたちもいる。
中世に生きた人間たちの多種多様な生き様を通じて、生の在り方を考えさせられます。
▼キャラ紹介:戦場を愛するヴァイキングな漢・トルケル。超強い(CV:大塚明夫)
◎ポイント2「キャラ」:トルフィンとアシェラッド-複雑な2人の関係性
続いてはキャラクターです。
ヴァイキングたちを描く作品ということで、多様な”漢”が登場するのが特徴でしょう。
中でも、私が魅力的に感じたのは主人公トルフィンと、傭兵団の長アシェラッドというキャラクター。
そして2人の関係性です。
まずはトルフィン。
純朴な少年だった彼が、戦場を経験してどんどん変わっていく。
ある目的を達成するためにどんな試練にも負けずに突き進むその姿に、目を離せなくなりました。
▼OPより、トルフィン。彼の運命は本編で
続いてアシェラッド。
傭兵団の長として、戦場を転々としている彼。
独特な生き方をしている彼は、性格も独特です。
▼傭兵団の長・アシェラッド(CV:内田直哉)。個人的な推しキャラ
例えるなら、超かっこいい高田純次さんみたいな感じ。飄々としていながらも、底が見えない。
そして、強い。
剣の腕、卓越した智謀、人を見抜く目を持ち合わせた彼は、まさに乱戦の世を生きるリーダーだと思います。
いつも予想の斜め上を行く、アシェラッドの活躍するシーンはどれも見応え抜群でした。
▼剣の腕も一流なアシェラッド。真面目なときと普段のギャップも良い
更に面白いのがトルフィンとアシェラッドの関係性です。
ある出来事により、出会うはずのなかった2人の運命が交差する。
その後の関係はとても複雑です。
端的に言えば「利用するもの、されるもの」。
アシェラッドに良いように使われるトルフィンという構図なのですが・・・
どうもそれだけではない。
心のどこかで言いようのない師弟のような絆を感じる。
アシェラッドが時々トルフィンに投げかける、成長を促すようなセリフに”師匠”のような雰囲気があるんです。
一筋縄では語れない2人の関係の行く末。それが一つの見所です。
▼一言では語れないトルフィンとアシェラッドの関係性。深い。そしてアシェラッドがカッコイイ
◎ポイント3「映像」:自然の息吹と人の力強さを感じる
最後に紹介したいのが映像です。
一言で言えば、クオリティがすごく高い。
このアニメを手掛けているのは「WIT STUDIO」。
手掛けた過去の作品は、ポケモンシリーズでも屈指の出来と言われている『XY&Z』。
立体機動を再現したド迫力の映像で話題となった『進撃の巨人』などがあります。
今回の『ヴィンランド・サガ』でもとても見ごたえのある映像が作られています。
まず、背景。
中世が舞台ということで、生い茂る木々や草花などの自然に関する描写が多い。
その描きこみが非常に緻密。
見てるだけで森林浴に行ったような新鮮な空気を感じる素晴らしい背景でした。
▼絶対に空気が美味しい、水も美味しいと思わせる綺麗な背景
続いて、人の動き。
荒々しいヴァイキングの戦いは、人の体によって作られます。
人の体がどのように動き、ぶつかりあうのか。
重量感のあるバトルシーンは緊張感と実在感があり、見ごたえがありました。
アニメでよくあるエフェクトバリバリな能力バトルとはまた違う、生と生とのぶつかり合いとも呼べる映像は一見の価値ありです。
▼無駄にかっこ良くて印象に残ったモブの戦闘カット。なぜベストを尽くしたのか
△気になった点:ドラマ的な変化が乏しく単調、そして暗い
ここまで書いたように、味わい深いテーマが展開される『ヴィンランド・サガ』。
ただ、ドラマ・エンタメ的に面白いかと言われると実は、首を傾げてしまいます。
その原因を私は、変化の乏しさにあると思っています。
トルフィンは目的のために突き進んでいく。
ただ、その目的に一向に近づけない。
成功すると見せかけて絶望、絶望からの成功といったドラマ的なカタルシスは乏しい。
作品を取り巻く雰囲気も同じです。
中世ならではの牧歌的な輝きは皆無。
ひたすら、トルフィンの目を通して見える暗く重い雰囲気で作品は走っていく。
もう少し軽快さを感じる変化がほしいところです。
登場するキャラクターの役割や現実での地位にも中々変化が訪れない。
多くの点で変化が乏しいことから、腰を据えて見る視聴スタイルが求められます。
総評価と感想
テーマを中心に据えて物語がつくられており、見ごたえのある作品です。
一方で、重苦しい雰囲気が続き展開の変化もゆっくりめなのも事実。
作品全体で見ると、じっくりと咀嚼する必要のある大人向けな作品と言えると思います。
クオリティの高い映像を見たい方や、地に足ついた戦いを見たい方。
また、多様な生き様というテーマに興味がある方にはおすすめな作品です。
評価(5段階・要素別)の理由
カテゴリ:アクション・ヒューマン
総評価:★★★☆☆(65点)
シナリオ:★★★☆☆
記事の通り。
テーマ性や展開は面白い。
しかし、シナリオとしてはドラマ的なテンポ感といった面での変化が乏しい。
キャラクター:★★★★☆
自分なりの信念を持ったキャラが多く、見ごたえあり。
しかし、作風の重さを和らげるようなキャラがいない。
演出:★★★☆☆
(音楽:★★★☆☆ 映像:★★★★★ アイデア:★★☆☆☆)
記事の通り、映像面は素晴らしい。
作品全体の変化の乏しさを、アイデア面でもマイナス評価とした。