2019年冬アニメ『私に天使が舞い降りた!』をネタバレ無しで未視聴の方も読めるように、感想・評価とあわせてレビューします。
おすすめ度:★★★★☆(83点)
一言感想 :面白さが右肩上がりに成長し、最終話で満開の花を咲かせる。日常系の名作。
概要・作品紹介『私に天使が舞い降りた!』
あらすじ
オタクで、人見知りな女子大生みやこが出会ったのは、まさに天使な小学生!? 妹が新しく連れてきた友だちの花ちゃんを見た瞬間、ドキドキが止まらなくなってしまったみやこ!!
どうにか仲良くなろうと奮闘するのだが……。
超絶かわいいあの娘と仲良くなりたい系スケッチコメディー、開幕♪
○『コミック百合姫』連載の漫画原作作品。
○女子大生と女子小学生4人組の日常を描いたギャグが多めの明るく楽しい日常系コメディ。
○「日常系の王道を征く回」と、これぞアニメ化の醍醐味と言いたくなる「予想の斜め上を行く最終回」、2つの魅力が楽しめる満足感のある作品。
では、内容に入っていきます。
この作品は、メインキャラ4人のうち、なんと3人が女子小学生。
かなり攻めたキャラ構成と言えます。
それだけに、いわゆる日常系が好きな人も視聴するのに少しハードルがある作品かもしれません。
しかし、そんな理由でこの作品を見ないのはもったいない。
そう断言できる作品だと思います。
その理由は、この作品が近年の日常系の中では特に、作り手の「魅せたい」というこだわりがしっかりとつまっていると感じられたからです。
また、メインキャラが小学生であることを無駄にしない、「小学生の日常感」を画面に見事に切り取っている点も見逃せません。
本レビューでは、そのような「こだわりのつまった演出」と「小学生の日常感」というこの作品ならではの魅力を中心として「私に天使が舞い降りた!」を紹介します。
要素別評価(5段階)
カテゴリ:日常・コメディ
総評価:★★★★☆(83点)
シナリオ:★★★★☆
キャラクター :★★★★☆
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★★☆ 絵 :★★★★☆ アイデア:★★★★★)
※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。
◎作り手の「魅せたい」という想いがしっかりと伝わってくる演出
まずは、「私に天使が舞い降りた!」の最大の魅力である、こだわりのつまった演出まわりをご紹介します。
カップリング毎に練られたバリエーション豊かな演出プラン
「わたてん」のメインキャラは4人です。
かなり人数が絞られています。
メインキャラ
星野 みやこ:主人公。女子大生。
星野 ひなた:みやこの妹。明るい。
白咲 花:ひなたの友達。みやこに一目惚れされる。
姫坂 乃愛:ひなたの友達。ギャグ・ツッコミ・狂言回しと何でも出来る万能キャラ。
人数が大分絞られていますが、その結果として、それぞれのキャラを色々なパターンで絡ませることに成功しています。
例えば、こんな感じです。
みやこ×ひなた⇨姉妹愛
ひなた×乃愛⇨ボーイッシュ女子とお嬢様の初々しいカップル
みやこ×はな⇨一方通行の恋
バリエーション豊かなカップリングを作り、更に1話ごとにフィーチャーするカップリングを変えて描いている。
このため、見ていて飽きが来ず毎回、新鮮な楽しみがありました。
そして、それぞれのカップリングの描き方が大変良い。
そういうシーンが見たかった!と思わず言いたくなってしまうシーンが的確に配置されています。
例えば、第三話では「みやことひなたの姉妹愛」が中心に描かれています。
いつも仲が良く、特にみやこによくなついているひなたですが、あることをきっかけに、自分にあまりかまってくれないみやこに少し拗ねてしまって・・・
という、まさに王道を征くようなエピソードです。
普段は明るく元気なひなたが見せる寂しそうな表情や、ひなたが拗ねていることに気づいたあとのみやこのお姉さんらしい対応など、
普段とのギャップが豊富に盛り込まれており、見どころが満載でした。
このような、カップリングの良さをどのように魅せたいか、というこだわり。
それがしっかりと練られている作品への熱意に引き込まれました。
日常系の王道を征く第10話、攻めたアニメ化といえる最終話
「私に天使が舞い降りた!」の魅力として、王道の描写がきちっとしていること。
更に、アニメ化のメリットを最大限に活かした最終話を上げたいと思います。
まず、「日常系の王道演出」がこの作品ではしっかりと作られています。
私の思う日常系の王道とはつまり、「あたりまえの時間が幸せ」と実感させるような暖かい会話劇です。
色々な日常系の名作において、神回といえるエピソードでは上記のような描写がされていると思います。
(例えば、「けいおん!!」の合宿回や「ARIA」の第11話の先輩が昔を懐かしむ回など。)
これが、「わたてん」の第10話でもよく描かれていたと思いました。
詳しくは本編を見ていただきたいのですが、人見知りで口下手なみやこが、一生懸命に優しい言葉を投げかける姿がとても良かったです。
ただし、ここで終わらないのがこの作品のすごいところ。
こちらも詳細は作品を見ていただきたいのですが、最終話は漫画ではなく、アニメだから出来るオリジナル要素がつまった物となっています。
それでいて、その要素が原作を傷つけるものとなっていません。
むしろ原作を理解した上で良い描写をしていると思います。
私が最終話を見たときは正直驚きと、なるほどと思わせる演出に大変ひきこまれました。
そんな、作り手のアニメ化にかける熱量が感じられる、最終話は是非多くの方に見てほしいと思います。
◎「小学生の日常」の切り取り方
この作品の次の魅力として、「小学生の日常」を上手く切り取り、作品に落とし込んでいる点を上げたいと思います。
では、どのように切り取っているのか。それは大きく次の2点だと思います。
①素直なギャグとツッコミが豊富な会話
②「小学生あるある」がつまった日常描写
まず①ですが、登場キャラのほとんどが小学生ということで、会話がとても素直です。
子供らしい、感情がオーバーなほどに乗っているセリフがつまった小学生たちの会話劇はのんびりと楽しく見ることが出来ました。
次に②ですが、この描写が大変上手い。
確かにこんなことしたかなぁと思うような描写が時々入り、懐かしさを感じました。
例えば、次の画像のように、道路の縁石を歩いて学校から帰るシーン。
何気ないワンシーンにも、このような懐かしいと感じる日常を切り取って詰め込んでいる点が、この作品の一つの魅力だと思います。
△残念な点について
「私に天使が舞い降りた!」には、特に残念に感じた点はありませんでした。
総評価と感想『私に天使が舞い降りた!』
・メインキャラ4人を色々な形で絡ませ、バリエーション豊かにそれぞれの日常を描いており飽きが来ない。
・日常系の王道を描き、更に、アニメだからこそ出来ることを詰め込んだ攻めの演出は見ていて充実感があった。
・明るく素直な「小学生の日常」は肩肘はらずに楽しめる。
メインキャラが小学生で「百合姫」連載の漫画作品で日常系と、少しクセのある部分の多い作品ですが、実際に見てみるととても素直で明るい。
しかも演出面でも挑戦的な部分もありました。
率直にいって、非常に充実感のある作品だったという感想です。
日常に疲れた人にはおすすめな、とても元気がもらえる作品でした。
参考:要素別評価の理由
カテゴリ:日常・コメディ
総評:★★★★☆(83点)
シナリオ:★★★★☆
全体的に、変なシリアスや嫌味なキャラなどを出さずに明るく楽しくまとめつつも、本編で紹介したとおり、描く内容をバリエーション豊かにすることで飽きさせないように構成している点が良い。
また、単なるエピソードの羅列とするのではなく、12話全体で「みやことはなの成長を段階的に描く」という、一本の軸をきっちりと通している点も良かった。
キャラクター :★★★★☆
どのキャラクターもメインの個性とギャップが上手く作られており、キャラが立っていた。
例えば、「みやこであれば人見知り時々お姉ちゃん要素」、「ひなたであれば犬っぽい素直な妹キャラ時々ボーイッシュ」など。
また、本編の通り、色々な形でキャラを絡ませ掘り下げていた点も良い。
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★★☆ 絵 :★★★★☆ アイデア:★★★★★)
音楽は暖かみのあるBGMを中心としていて作品の雰囲気によくあっていた。
また、小学生の元気さが爆発しているOP・EDも良かった。更に、決め所で使われていた主題歌のアレンジ版のBGMも上手くハマっていた。
作画では、動画工房らしい、細やかな動作が空気感を作っていたと思う。
特に、会話の話し手だけでなく受け手の反応を細やかに描いていた点が良かった。
本編で紹介したとおり、日常系の王道を往きつつ、最終話でのチャレンジングでありながら原作愛にあふれる演出は全てのメディアミックスで見習ってほしい素晴らしさ。