【ネタバレ無し】傑作映画レビュー『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』感想・評価(92点)

【ネタバレ無し】傑作映画レビュー『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』感想・評価(92点)

2019年春公開『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』をネタバレ無しで、感想・評価とあわせてレビューします。

※ネタバレ有り感想は、ページ最下部に掲載しています。

 

おすすめ度:★★★★★(92点)

 

一言感想 :こんな「カバネリ」が見たかった!!完璧なアクションエンタメ活劇。

タイトル-甲鉄城のカバネリ

「1分で読める」レビュー要約

【超あらすじ】
舞台はカバネ(ゾンビ)がはびこる江戸時代くらいの日ノ本。

故郷へ戻るためにカバネと戦う、主人公「生駒」とヒロイン「無名」の恋愛模様と、城に巣食う強大な敵との戦いを描いたアクション活劇。

【作風・作品の印象】
・最高の素材をシンプルに調理した、上質なエンタメ

・TV版と比較して、大分爽やかな雰囲気に変更されている

・「無名と生駒の恋愛模様」、「キャラのかっこいい活躍」、「視聴後感の良さ」など、これぞ本当に求めていた「カバネリ」

【主な見どころ・長所】
◎無名と生駒の恋愛模様。無名の女の子らしさが爆発。
◎数々の試練を乗り越えてきた甲鉄城組の成長した姿

【気になった点・短所】
△シナリオ面で、今作の敵役と生駒の比較がもう少し上手くできていれば・・・

 

導入

※本作は劇場公開のほか、アマゾンプライム・Netflixで視聴可能。

 

久しぶりの「カバネリ」、見ました。

まず最初に言いたいのは・・・

なぜ、テレビ版でこれをやってくれなかったんだ!ということです。

 

本作は、元々2015年にテレビ放送された「甲鉄城のカバネリ」の続編という位置づけ。

 

テレビ版は、個人的には佳作という印象です。

中盤までは良いのですが・・・

それ以降は、「ヒロインが活躍できない・やたらと陰鬱・ラスボスに魅力がない」と、どんどん失速していったと思っています。

■戦犯のラスボス

戦犯-甲鉄城のカバネリ

しかし、今回の「甲鉄城のカバネリ 海門決戦」は一転。

素晴らしい出来だと感じました。

 

一言でいえば、とてもエンタメをしています。

 

エンタメに欠かせないのは・・・

・危機と、そこからの逆転によるカタルシス

・魅力あふれるキャラとその活躍

・物語に彩りを添える主人公とヒロインの恋愛

 

この作品には全部があります。

しかも作画と演出は1級品。

 

シナリオも大体1時間20分という限られた時間のため、凝ったものではありませんが、

アクションエンタメとしてみれば過不足のないものとなっています。

 

総じて、テレビ版のキャラクター(特に無名)を気に入っていた方や、アクションエンタメが見たい方には絶対オススメの出来です。

 

今回のレビューでは、特に「各キャラクターの活躍」を中心としつつ、「鋼鉄城のカバネリ 海門決戦」を紹介します。

なお、作品の雰囲気は以下のPVが伝わりやすいと思います。

評価(5段階・要素別)

カテゴリ:アクション

総評価:★★★★★(92点)


シナリオ:★★★★☆

キャラクター:★★★★★

演出:★★★★★
(音楽:★★★★☆ 映像:★★★★★ アイデア:★★★★★)

※評価の理由は、ページ下部に記載しています。

 

『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』の良かった点・見どころ

◎生駒と無名の恋愛模様

無名の女の子らしさが爆発!

照れる無名の破壊力はやばい。

そう、今作の無名はとても可愛いです。

■ヒロイン「無名」

照れる無名3-甲鉄城のカバネリ

テレビ版での彼女の描写は、価値観の獲得や兄からの自立など、「人間的な成長」が主となっていました。

しかし、今作の彼女は恋愛面に大分振り切っています

 

生駒に惹かれていく姿が素晴らしく可愛い。

 

作中では、生駒のかっこいいシーンがいくつか見られます。

その姿を見ているときの無名は、とても女の子らしい惹かれ方をしていてよかったです。

普段、気丈に戦っている姿とのギャップがぐっときました。

照れる無名-甲鉄城のカバネリ

 

「すれ違いと再会」のカタルシス

エンタメ映画の鉄板。

それは、恋する二人のすれ違いと再会です。

 

王道を行く今作でも、当然、そんなシナリオが含まれています。

 

生駒の関心を惹こうと無名が頑張るシーンが有るのですが、

残念ながら一旦はすれ違いに終ってしまいます。

 

それがどのように終盤回収されていくのか。

詳細は伏せますが、回収シーンの演出はとても見事で、良いカタルシスを味わえました。

 

また、彼女達の恋愛模様は今作のテーマ性とも結びついたものとなっており、その点からも目が離せない物となっていました。

 

◎「甲鉄城組」の成長した姿と活躍

もう1つの今作の魅力として、メインキャラ達の活躍を挙げたいと思います。

 

まず、今作のシナリオは、流れはシンプルです。

無能な味方達の中で唯一頑張る「甲鉄城組」。

以上です。

 

数々の試練を乗り越えてきた彼らたちだからこそ、残念な味方を鼓舞する姿に説得力が出る。

そんな説得力とともに、「甲鉄城組」が陣頭に立っていくシーンは感慨深いものがあります。

■甲鉄城の城主:菖蒲

かっこいい菖蒲-甲鉄城のカバネリ

 

キャラへの愛が伝わってくる見せ場づくり

今作は、キャラの見せ場づくりが非常に上手かったと思います。

それぞれの得意分野がいい具合に生かされていました。

 

例えば、侍である「来栖」の活躍はやはり、刀を活かした戦闘シーン。

その戦闘シーンの演出や、登場タイミングは当然良い。

 

更に良かったのは、彼がそのシーンで戦う背景です。

テレビ版で色々と揉めた生駒との信頼を感じる描写や、民を守るために戦う侍らしさがきっちりと描写されています。

かっこいい来栖-甲鉄城のカバネリ

得意分野を活かすだけにとどまらず、キャラの内面の掘り下げとあわさって見せ場が描けており、「カバネリ」のキャラクターが好きな人には刺さる出来となっていました。

 

『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』の気になった点・短所

△敵役と生駒の比較がもう少し上手くできていれば・・・

あえて言えば、というレベルですが、気になった点を紹介します。

シナリオ面です。

 

今作では、敵役と生駒の立ち位置が、相反するように設定されています。

作中でも、そこに言及するセリフが僅かにあります。

 

ただ、相反している設定を活かした描写やエピソード・敵役と生駒の対話などがないため、セリフが唐突に感じました。

 

短い時間の中で多くのことをまとめ上げた素晴らしいシナリオだと思いますが、

この点が落とし込まれていれば、更に素晴らしいものになったように感じました。

 

総評価と感想

◎テレビ版では鳴りを潜めていた「無名」の可愛らしさが爆発している。

◎キャラの見せ場は、その一つ一つがキャラを深く理解した上で作られており、納得ができるものとなっている。

◎細かいセリフまで気が配られており、演出面でもアイデアがつまっている。

△敵役の掘り下げはやや物足りない。生駒との対比が上手く機能していればなお良かった。

 

冒頭でも記載したとおり、テレビ版でこれが見たかったという感想につきます。

 

危機からの逆転や恋愛面でのカタルシス、キャラの見せ場の上手さなど、ハイクオリティなエンタメ映画です。

テレビ版を見てキャラへの愛着がある方は必見の出来と断言できます。

 

映画としては時間も短め、アマゾンプライム等でも見れることから、気軽に接することのできる作品だと思いますので、是非ご覧頂きたいと思います。

 

参考:評価の理由

カテゴリ:アクション

総評価:★★★★★(91点)


シナリオ:★★★★☆

本文の通り、キャラの見せ場づくりが上手かった。

 

短い時間の中で、各キャラの見せ場づくり・無名と生駒の関係性掘り下げ・敵の掘り下げなど多くのことを行いつつ、山場を随所に作っており、無駄なくシンプルに良いシナリオだった。

 

キャラクター:★★★★★

本文の通り。

まさか無名がここまで刺さるキャラになるとは思わなかった。

生駒が知略や蛮勇で活躍する姿も素直にかっこいい。声優さんの演技とあわさって、不器用だが筋の通った漢という雰囲気がよく出ていた。

それ以外の「甲鉄城」のメンバーも皆、成長と関係性の深化が見られ、テレビ版から更に魅力的なキャラへと進化していた。

 

演出:★★★★★
(音楽:★★★★☆ 映像:★★★★★ アイデア:★★★★★)

劇伴については、挿入歌が良いアクセントになっていた印象。

映像面では、テレビ版よりもアクションシーンでの動きが多くなっていた。また、作品の雰囲気が変わったからか、色調が柔らかく明るめになっており、個人的にはより見やすい作品になったと感じた。

アイデア面では、特にセリフ選びが秀逸に感じた。日常感を引き立たせるちょっとしたセリフや、少ないながらも意味が載っている敵のセリフが効果的に機能していた。

 

ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想)

ここからは、徒然にネタバレありで感想を書き連ねます。

未視聴の方は、バックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

では。

■無名と生駒の恋愛模様(ネタバレ有り版)

無名が可愛くて生駒がイケメン。

これに尽きます。

 

まず、序盤のアクションシーンで無名が生駒に助けられるシーン。

ここで、作品の方向性を察しました。

「この路線で行くのか、よっしゃ!」という感じでしたね。

 

次に、鰍とお返しのアクセサリーを作っているシーン。

作中では数少ない平和なシーンですが、”昔の女子回”といった趣が有りよかったです。

 

序盤の終りが見えてきた、生駒に無名が噛みつかれそうになるシーンは、

絶妙な色気と、「あ、このパターンはすれ違っちゃうやつだ」感がいい具合に出ていました。

 

中盤の戦闘中の再会シーン。

ぼろぼろになりながら駆けつける生駒がかっこよすぎました。

 

そして、ここの無名のセリフが凄く良いんですよね。

最初は生駒の身体を心配して「しゃべらなくていい」という。

しかし、生駒の「ずっとそばにいろ・・・俺から離れるな。」に対して思わず「もう1回言って」と返してしまう。

 

たまらないですね。これがエモいというやつかと納得してしまいました。

 

■作品のテーマについて

それはさておき、今作の良いところは、この恋愛模様がきちんと作品のテーマにつながっているところだと思います。

「無名可愛い」だけじゃないんです。

 

カバネリという、種族としては孤独な存在が、他者とわかり合うことにより、孤独ではなくなる。

生きていく希望を見つけます。

 

そして、その姿は、実は人間と何ら変わらないということを、他のキャラ達の恋愛模様をあわせて描くことで表現している。

 

最終的には、誰かを思いやる気持ちこそが、生きていく上で何より大事なんだという解が作中で提示されています。

 

アクションエンタメと言ってきましたが、エンタメ要素と作品の設定を活かしながら、とても綺麗にテーマ性を表現している点がこの作品の真に素晴らしいところだと思いました。

 

ただ、小難しい話はおいておいて、最終シーン、最高じゃないですか。

「模様が動くんだよ」からのキスからの、花満開からの歌スタート。

・・・なんだこの甘酸っぱさ、最高です。

 

なお、このシーンで一気にキャラの動作や演技がコミカルになっており、平和な春が来たという雰囲気しっかりと伝わってきました。

 

■EDについて

よさこいを踊るという予想外のEDでした。

女性キャラ、華やかで良い。

男性キャラ、無駄に決め顔で面白い。特にひたすら旗を振り続ける吉備土のシュールさが好きです。

 

そして何より、全体的に表情が乏しかったカバネリのキャラがここまで表情豊かに踊って締めるというのが素晴らしいと思います。

 

長い溜め回からの神回と考えれば、今作によって「甲鉄城のカバネリ」というシリーズは飛躍的に素晴らしい作品になったと感じました。

以上です。

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