【ネタバレ無し】ゲーム『Summer Pockets』感想・評価(84点・良作)

【ネタバレ無し】ゲーム『Summer Pockets』感想・評価(84点・良作)

2018年6月29日発売『Summer Pockets感想と評価です。

※ネタバレ無しですが、作中のルート数のみ言及しておりますので気になる方はブラウザバックをお願いします。

※2020年6月26日に『Summer Pockets REFLECTION BLUE』が発売されます。
原作の要素はそのままに、更に多くの追加要素を加えた作品と言うことなので、初めて触れる方はそちらがおすすめです!

 

 

おすすめ度 :★★★★☆(84点・良作)

 

一言感想 :「泣きゲー」のKey、完全復活!

 

「サマポケ」はどんな作品?

概要紹介

~あらすじ~

亡くなった祖母の遺品整理のために夏休みを利用して、鳥白島にやってきた主人公の鷹原羽依里。
祖母の思い出の品の片付けを手伝いながら、初めて触れる「島の生活」に戸惑いつつも、順応していく。

海を見つめる少女と出会った。
不思議な蝶を探す少女と出会った。
静かな灯台で暮らす少女と出会った。
思い出と海賊船を探す少女と出会った。

島で新しい仲間が出来た。

この夏休みが終わらなければいいのにと、そう思った。

○「夏休み」をテーマとした楽しさと切なさのつまった正統派の美少女ゲーム作品

○泣きゲーの老舗メーカー「Key」が制作した泣ける作品

○キャラよし・演出よし・シナリオよし・変に捻った展開なしと、ギャルゲー初心者にこそおすすめしたい、まとまりの良い作品

◆各ルートのプレイ時間:ルートに入ってから約4~5時間程度

◆おすすめルート攻略順番:紬→鴎→蒼→しろは(シナリオ及び設定のつながり重視。紬と鴎は好みの順番で良いかも知れません)


では、内容に入っていきます。

 

「Summer Pockets」は2018年に発売された泣きゲーの老舗「Key」による作品です。

フルプライスの完全新作という条件では、「Rewrite」から数えて約7年ぶりの新作。

まさに、「鍵っ子待望」の作品となりました。

 

かくいう私も「Key」作品にはだいぶ思い入れが強いです。

10年以上前の作品である「CLANNAD」は特に好きで、その感動を味わうべく未だにアニメを見返してしまうほど気に入っています。

 

一方、近年の「Key」作品は、自分に強く刺さったものはありませんでした。

今までの「奇跡による王道の泣き」から脱却しようという思いがあったのかも知れませんが、少し変に設定に凝りすぎという印象です。

作品の質は高いのですが、素直に感動することがあまり出来ませんでした。

 

その点、この「Summer Pockets」は次のような要素が非常に私向きでした。

・全盛期の「Key」作品の感動を思い出させてくれるような王道の感動あり。

・更に、これまでの「Key」作品とは一味違う良さあり。

今回のレビューでは、純粋に良かったところだけでなく、従来のKey作品との違いというような観点も加え、「サマポケ」の魅力をお伝えしていきたいと思います。

 

評価(5段階・要素別)

カテゴリ:青春モノ・泣きゲー

シナリオ:★★★★☆

キャラクター :★★★★★

演出 :★★★★☆

(音楽 :★★★★☆ 絵 :★★★★★)

泣き要素 :★★★★☆

※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。

 

「サマポケ」のここが凄い

 

◎プレイすればする程、愛着が湧くヒロイン達

では、まずは今作の魅力をギャルゲーで最も大切な要素。

「キャラクター面」からご紹介します。

「素朴に楽しい会話が生むキャラの魅力」

個人の感想ですが、Keyの作品は、シナリオの完成度は高い。

ただ、ヒロインの魅力については今一歩足りないと思ってきました。

むしろ、サブキャラの男キャラが一番好きになってしまうこともありました。

 

しかし、「サマポケ」のヒロイン勢は、今までのKey作品よりも更に可愛いと感じました。

 

それは、今作の会話の良さのおかけだと思います。

全体的に、ヒロインとの会話が生き生きとしています。

 

日常パートでの素朴に楽しい会話、各ルートの中盤で明かされるヒロインの秘められた想い、クライマックスシーンでの感情の爆発。

ルートを進める中で、キャラの色々な感情が鮮やかに描き出されています。

 

特に、日常パートでの会話はKeyらしい素朴さを残しつつも、今風なテンポの良い掛け合いが楽しめます。

 

メインヒロイン「しろは」の魅力

メインヒロインの「鳴瀬しろは」が可愛い。

これが、「サマポケ」最大の魅力です。

 

では、どこが可愛いのか。

まず、ギャップが良い

幻想的、神秘的という言葉がぴったりとあてはまる外見。

それとは反対に、ぼっち気質でお人好しで優しい。そんな親しみをおぼえる性格のギャップに完全にやられました。

 

また、しろはの魅力は、作中での彼女の「変化と成長」にもあると思います。

 

彼女は、最初は人をよせつけない孤独な姿を見せています。

それが、主人公との交流を通して、成長しながら、段々と周囲との距離感が縮んでいく。

やがて、彼女の持つ本当の優しさが少しずつ見えてくる。

 

しろはの持つ優しさが、変化と成長を伴いながら描かれる。その移りゆく姿に心を掴まれました。

 

更に、しろはの魅力をより引き立てているのが、CV:小原好美さん(代表作『藤原千花:かぐや様は告らせたい』等)の演技にあります。

 

なんといっても声色の使い分け」が素晴らしい。

例えば、孤独を貫いているときの硬い声色、ふとにじみ出る優しい声色、主人公との交流の中で徐々に見えてくる優しさや、少し甘えた声色・・・etc。

物語の中で生まれるしろはの様々な変化を、それに応じた声色で、魅力的に表現されていました。

※2019年9月追記

小原さんファンなら見ておかなきゃいけない作品が生まれました。

アニメ『まちカドまぞく』。

主人公のシャミ子役で出演されていますが、シャミ子のセリフ量がとても多く様々な声色が聞けました。

興味のある方は下の記事をどうぞ!

【ネタバレ配慮】アニメレビュー『まちカドまぞく』(感想・評価)

 

「泣き」のために積み重なる脚本・音楽・演技・CG

クライマックスシーンで泣ける。それがこの作品の魅力です。

 

では、なぜ泣けるのか。

それは、脚本が巧みに感情移入させているから・・・

というのはもちろんあるのですが、それだけではないと思います。

 

脚本以外の要素も素晴らしいんです。

BGMのかかるタイミング、挿入歌の歌詞、一気に物語へ引き込む雰囲気のあるCG。

どれも気が配られているのがよくわかります。

そして、それら作品の全ての要素がつながりあい、一つの「泣けるシーン」を作り上げられている。

 

いわば、「全員野球」で感動を作っている。それがこの作品の魅力です。

 

夏休みを様々な形で描き出す、ノスタルジックなシナリオ

やはり、「key」の作品を紹介する上で、シナリオ面は避けて通れません。

今作のシナリオの感想ですが・・・良いです

 

まず、各ヒロインのシナリオは、「それぞれの夏休み」をテーマとして描かれています。

そのどれもが、「こんな夏休みを体験してみたかった!」と思わせてくれるようなシナリオとなっています。

 

友情の暖かさ・冒険のワクワク感・恋の切なさなど、夏休みに求めていた色々な感情を追体験させてくれる充実感のあるシナリオです。

また、今作は各ヒロインのルート+お約束のトゥルールートの計5ルートで構成されています。

詳細は書けませんが、いわゆる泣き要素はトゥルールートにしっかりとつまっています。

「key」の他作品が好きな方ならハマること間違いなしだと断言できる出来でした。

 

気になった点

やはり、気になった点もありますので簡単にご紹介します。

 

△最後の最後に、勢いがしぼむ。

この作品は泣けます。そして記憶と心に残ります。

それは間違いないですし、最終的な物語の帰結も私は好きです。

 

ただ、物語の山場、最も響くシーンはラストよりも数歩前に訪れます

この場面でここまで凄いんだからラストはどんなことになるんだ・・・?

という期待が先行してしまい、最後のシーンはすこしあっさりだったなぁと感じました。

 

△泣きへ導く爆発力のあるBGMがあと一歩足りない

感情を揺さぶるのに欠かせないもの。

それは、「このBGMがかかったら自然に泣けてしまう」と思わせる爆発力のあるBGMです。

 

例えば、「CLANNAD」の「空に光る」や、「リトルバスターズ!」の「遥か彼方」など。

これらは、かかった瞬間からちょっと泣けてくる程の爆発力がありました。

 

「サマポケ」のBGMや挿入歌はその点で、泣かせる爆発力が少し足りないと感じました。

※名曲は多いと思います。夏感あふれる良BGMでした。

総評価と感想

・Key作品に求めていた、心に響く「泣き要素」を残した新作。

・キャラクターの性格やデザインは現代風な造形になっており、非常に魅力的。

・「夏休み」という普遍的なテーマにしているからこそ、多くの人の心に響きやすい物語。

・Key作品が初めてな人にも、懐かしいという人にもおすすめできる良作。

久しぶりに、シンプルに感動できるシナリオのゲームがプレイできました。

いつもの泣ける要素があるのはもちろん、キャラを現代的に仕上げてきた点にKeyの進化を感じ、なんだか安心しました。

 

また、夏休みという作品全体を流れるテーマも自分にはすごくあっていました。

泣きたい人や、懐かしさを感じる夏休みを体験したい人。総じて、普段の生活に疲れている人にぜひプレイしてほしい1作だと思います。

さて、アニメ化はまだかなぁ・・・。

要素別評価(理由)

シナリオ:★★★★☆

作品全体で「思い出」という軸を持ちつつ、各ヒロインのルートで様々に描き出しており、一貫性があります。

だからこそ、作品をクリアしたときには、「思い出」についてなにか感じるものがあるのではないでしょうか。

 

また、テクニカルなところでは、伏線の貼り方はとても緻密で、後半の展開に自然と納得できます。

前半で感情移入させ、後半でぐっとキャラの想いに触れさせ泣かせるという一連の流れも無駄がなく、とてもレベルが高いと思います。

 

惜しい点としては、話の流れの中で、「なぜこうしておかなかったのか」という引っかかりを覚えるシーンが少しあること。また、泣かせるギミックが一部かぶっていること。最後の最後が盛り上がりに少しかけるところは気になりました。


キャラクター :★★★★★

物語を通して好きになる。クリアして寂しいと感じさせる魅力あるヒロインばかりでした。

特に、前述の通り、メインヒロインの「しろは」は元々の性格や、物語を通しての変化と成長などが合わさり、自分の中で本当に気に入るキャラクターになりました。

サブキャラクターもそれぞれ一芸を持っており、要所要所で笑わせてくる良キャラクターばかりで隙がありません。

また、各キャラクターそれぞれのルートに入っても、ルート以外のキャラクターがシナリオに関わり活躍することが多いのも、キャラを好きになるきっかけとなり、とても良かったと思います。


演出 :★★★★☆

(音楽 :★★★★☆ 絵 :★★★★★)

物語の盛り上がるシーンでかかる、クオリティの高い、また、タイミングの良いBGMと挿入歌は物語の演出にとても貢献していました。

日常シーンでかかる「懐かしい夏」感のあるBGMも作品の雰囲気にあっており耳に馴染みます。

 

絵についても、盛り上がるシーンで一気に物語へ引き込む良いCGが多かったです。特に「しろは」と「紬」のCGは注目です。

惜しい点は、最後の最後のシーンはBGMと絵という部分でも、トーンダウンしているように感じたところです。


泣き要素 :★★★★☆

一瞬の爆発的な「泣き」ではなく、「思い出」の積み重ねによりじんわりと泣けてくる。

泣きのテーマは今までのKey作品を踏襲しているのですが、泣かせ方は今までと少し違う新しさを伴う、この作品ならではといったものになっていると思います。

 

私は、メインルートを2周プレイしましたが、2周目のほうが泣けました。

回を重ねるごとに「思い出」が積み重なり、より心に響いていく。そんな作品だと感じました。

 

惜しい点は、シナリオと同様、展開にひっかかりを覚えるところが皆無ではなかったところです。

ここはこうしておけば何事もなかったのでは?とか、その心理描写は少し無理があるんじゃないかなと感じるシーンが皆無になれば、傑作になりうる作品だと思います。

 

以上、『Summer Pockets』の感想と評価でした。

久しぶりに世界観と物語に引き込まれる作品に出会え、とても嬉しかったです。ぜひ、FDの作成や力を入れたアニメ化など、次の展開をしてほしいと思います。

 

 

 


ネタバレありで語りたい(ネタバレあり感想コーナー)

蛇足ですが、今回は、気に入ったからこそ、惜しかった点を記載させていただきます。

ネタバレを含みますので、未プレイの方はブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

①家族になるまでの展開があっさり?

ひと夏の物語ということで、作中時間、1ヶ月ほどでシナリオは完結します。

その一方で、いずれつながりは生まれるものの、その時点では初対面の3人が一つの家族になっていく。

 

この展開は、日常描写が優れているので納得はできましたが、のめり込むまではいきませんでした。

 

3人それぞれが何故、家族になっていくことを求めたのか。

「しろは」・「羽依里」・「七海」がそれぞれ今までに何を失い、どれだけ孤独を抱えているのか。

そんな彼らのバックボーンを、もっとプレイヤーに切実に伝えてほしかったと思います。

 

もし、アニメ化するのであれば、補完をしてほしい点の一つです。

 

②Pocketsルートについて

何より言いたいのは、短い、描写が足りないということです。

 

七海がしろはにもたらすものが、将来の可能性だけではあまりに寂しい。

それだけで、しろはが未来に希望を見出すというのはちょっと弱いと思いました。

 

しろはの今を改善するなにかも、必要だった気がします。

しろはと、子供時代の天膳達・すれ違ってしまった小鳩との関係性。

そういった今の寂しさを七海が結びつけ、しろはに今を生きる楽しさを与えてこそ、あの展開につながる気がしました。

 

次に、大人しろはと七海の別れのシーン。

これは、見せ方がALKAのクライマックスシーンと似すぎています。

永遠の別れとなることはわかっているのですが、一味変える工夫が欲しかったです。

 

最後に、ラストシーンはについても納得はできるのですが、あっさりしすぎだと感じました。

あのシーンでは、今作の世界観でいっても「奇跡」レベルのことが起きているはずです。

 

それなのに、なんだか予定調和を淡々と描いているように見えました。

なんだか熱量が足りないんですよね。

展開と演出にミスマッチ、少しちぐはぐな印象を覚えました。

 

作中で描かれた「結びつく未来へ続く」という奇跡を呼び起こすだけの、キャラの想いと熱量を描いてほしかったと強く思います。

 

アニメ化の際は、補完的なシナリオを加えてもらえると、原作ファンとしてもより、楽しめるように思います。

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