2019年冬アニメ『五等分の花嫁』をネタバレ無しで未視聴の方も読めるように感想・評価とあわせてレビューします。
※5月5日追記
祝・二期決定!
おすすめ度:★★★★☆(71点)
一言感想 :ヒロインである五つ子姉妹同士の掛け合いが魅力的な、新時代のラブコメ作品。
概要・作品紹介『五等分の花嫁』
あらすじ
貧乏生活を送る高校2年生・上杉風太郎のもとに、好条件の家庭教師アルバイトの話が舞い込む。ところが教え子はなんと同級生!しかも五つ子だった!!
個性豊かな中野家の五つ子は全員美少女、だけど「落第寸前」「勉強嫌い」の問題児!最初の課題は彼女たちからの信頼を勝ち取ること……!? 毎日がお祭り騒ぎ!
中野家の五つ子たちが贈る、かわいさ500%の五人五色ラブコメ開演!!
○週刊少年マガジン連載の人気漫画のアニメ化作品。
○5つ子がヒロイン(性格は全然似てない!)という異色の設定を上手く使ったシナリオや演出が光る。
○安直なラッキースケベがない、人におすすめしやすい、明るく品の良いラブコメ。
では、内容に入っていきます。
結論から言えば、「五等分の花嫁」の良さはヒロインの5つ子が可愛い。それに尽きると思います。
もっとも、ヒロインが可愛いかどうかはラブコメの生命線。
それ自体は当然かもしれません。
ただし、この作品が一味違うのは「作品の中で、ヒロインの可愛さをどのように引き出しているのか」という点。
そのやり方が他のラブコメ作品とは一味違い、新鮮な魅力があるように感じました。
その一方で、残念だったのは作画と演出面。
完全に手が回っていない、リソース不足です。
今回のレビューでは、そんな「ヒロインの可愛さの引き出し方という良い点」と、「残念だった演出面」を中心に「五等分の花嫁」を紹介していきます。
評価(5段階・要素別)
カテゴリ:ラブコメ
総評価:★★★★☆(71点)
シナリオ:★★★★☆
キャラクター :★★★★★
演出 :★★★☆☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★☆☆ アイデア:★★☆☆☆)
※評価の理由は、ページ下部に記載しています。
「五等分の花嫁」の魅力:キャラクター編
まずは、本作の魅力をキャラクター面から紹介します。
◎五つ子の魅力は相乗効果で爆発する
「五等分の花嫁」が普通のラブコメ作品と何が違うか。
それは、キャラ同士の矢印(=好意)の方向性だと思います。
普通のラブコメ作品は、「ヒロイン→主人公」への想いがどのように高まっていくかが中心に描かれます。
そのため、ヒロインが会話する相手の大半は主人公となります。
一方で、「五等分の花嫁」では少し変わっています。
「ヒロイン→主人公」は当然描かれていますが、それと同じくらい五つ子同士の姉妹愛に関する描写が大切にされています。
つまり、「ヒロイン→ヒロイン」という矢印が大変豊富です。
だからこそ、会話もヒロイン同士で行われる場面が非常に多いです。
■ヒロイン同士が仲良くしている例
この違いが何を生むのか。
それは、ヒロインの魅力の多様性です。
例えば、次女の二乃はいわゆるツンデレキャラ。
主人公の風太郎とは大体ツンツンとケンカしています。
しかし、家族の中では次女ということもあって、面倒見がよく世話好きな面を見せます。
しかも他の姉妹が大好きで意外と寂しがりやという姿まで・・・
左:次女のニ乃 右:五女の五月
このギャップが萌えます。
ツンデレのデレの部分を姉妹愛という形で出してくる。これが良いんです。
いつ、主人公にこのデレが向けられるのかというドキドキ感を味わいつつ、同時並行にデレた姿が見れる。
発想の勝利だと思いました。
(ただし、私の一押しは下の画像に写る三女の三玖です。)
このように、姉妹同士の絡みにより、ヒロインの可愛さが表現されています。
ヒロインひとりひとりの色々な魅力が、ヒロイン同士の相乗効果で引き出されています。
「主人公×ヒロイン」のラブコメ的な面白さはもちろんのこと、更に「ヒロイン×ヒロイン」の日常系に近いような面白さも楽しめる、新時代のラブコメと呼べるような新しい作品という感想をもちました。
○やっぱりキャラの良さにはキャスト陣の力が出る
この作品のキャスト陣はとても豪華な顔ぶれです。
【メインキャスト一覧】
上杉風太郎:松岡禎丞
中野一花:花澤香菜
中野二乃:竹達彩奈
中野三玖:伊藤美来
中野四葉:佐倉綾音
中野五月:水瀬いのり
主人公やメインヒロインを演じた経験が豊富な凄いメンバーです。
結果として、もちろん演技が良かった。
例えば、キャラクターの実在感や生活感は、見せ場での重いセリフよりむしろ、日常シーンでのちょっとしたセリフに現れることが多いと思います。
その点で特に、主人公である風太郎役の松岡さんの演技は、引き込まれます。
ちょっとしたセリフに風太郎の苦労人感がよく表現されていて親近感が湧きました。
また、姉妹同士の掛け合いも共演経験が多いからかとても自然で、姉妹の仲の良さが伝わってきました。
それをよく聞けるのが次回予告パート。
5人の掛け合いで姉妹のキャラ紹介をしていくこのパートは毎回とても楽しめました。
「五等分の花嫁」の魅力:シナリオ編
簡単にですが、シナリオ面の魅力も紹介します。
○やりたいことがはっきりしている分かりやすいシナリオ
「五等分の花嫁」は、「シナリオでやりたいことがわかりやすい」のが特徴だと思います。
シナリオで描かれるのは大きく次の2つ。
①主人公とヒロインの距離が縮まるもの
②ヒロインの価値観を深掘りするもの
各ヒロインの当番回が順々にまわり、上の2つが描かれます。
シナリオ自体に予想外の展開や、ドラマティックな起伏があるわけではありません。
しかし、描きたいことが明確でかつそれが大切にされているので、シナリオを通じてヒロイン達や主人公をどんどん好きになれました。
○人におすすめしやすい爽やかなシナリオ
また、気軽に爽やかに見れる点も、個人的に高評価です。
それは、次の内容によります。
①シナリオのテーマが上であげたようなものであること
②気分が悪くなる展開やキャラが存在しないこと
③安直なラッキースケベを挟み込んでないこと
特に、③は面白いところです。
この作品、色気のあるシーンはあるものの、不思議とそういうシーンは品の良さもあわせ持っている感じがしました。
主人公の反応が面白かったり、不自然な胸揺れがないからなのか・・・うまく言葉に出来ないのですが、自然な雰囲気で色気のあるシーンが流れていくのが個人的には合いました。
△作画・演出面の残念な点について
ここからは、ネガティブな要素になってしまいますが、残念だった点を紹介します。
△作画はシンプルに悪い
作画が悪い。これは言わざるを得ません。
崩れたかな?と思うシーンが1話の中で数回は見えてしまうのは大変残念でした。
ただ、決めシーンはちゃんと安定しており、また、作画の良い回も時々あるので惜しいなぁと思います。
■悪い例
■良い例
△BGMの違和感
時々、明らかに合っていないBGMが流れます。
シリアスなシーンでコミカルなBGMが流れるケースが数回ありました。
こちらも普段のBGMは作品にあっていて、明るいけれどお洒落な雰囲気のものが多く使われており、やっぱり惜しいなぁと思います。
×漫画をアニメに落とし込めていない場面が・・・
「漫画からアニメへ」の変換がうまく行っていない。
これが一番の問題だったと思います。
この作品の原作はとても絵が綺麗で、こだわりを感じます。
だからこそ、原作のいわゆる決めシーンはキャラクターの仕草やレイアウトが独特な物となっています。
端的にいえば、原作の絵は点で見れば見栄えが良いのですが、動作としては不自然な場面もあったりします。
それをそのままアニメーションにするとどうなるか・・・当然、不自然なものになってしまいます。
例えば、下の画像のシーンなんかは特にひねりもなくこの動きをさせているので、だいぶ不自然でした。
本来であれば、これこそがメディアミックスの肝です。
「漫画ならではの要素」ををどのようにアニメーションにしていくのかを突き詰めていく。
それが、原作のある作品をアニメ化する際に必要となるいちばん大事な仕事だと思います。
時間がなかったのか、力不足だったのかは分かりません。
しかし、結果だけ見て率直な書き方をすると、この演出面に関しては本当に製作陣に反省してほしい出来だと思います。
アニメ化は原作者とファンの想いが集まる一大イベントだと今一度、認識してほしいところです。
総評価と感想
・五つ子という設定を活かした、ヒロイン同士の掛け合いによりキャラの魅力が高まる点がラブコメとして新鮮。
・豪華なキャスト陣の演技は何度も聞き返したくなる必聴の出来。
・わかりやすい、明るい、爽やかなシナリオは多くの人におすすめしやすい。
・作画と演出面は1線級とは言えない出来。惜しい。
全体として良いところが多いだけに、惜しいというのが一番の感想です。
EDの可愛さや次回予告パート、時々良い作画など、光るところも数多くあります。だからこそ、作画と演出が本当に惜しい。
連載開始からアニメ化までが短すぎたんじゃないかなぁと個人的には思います。
ただ、ある意味で原作の販促としてはとても良かったと思うので、しっかりと力を入れた2期があれば嬉しいところです。
参考:評価の理由
カテゴリ:ラブコメ
総評価:★★★★☆(71点)
シナリオ:★★★★☆
本編で紹介した点に加え、細かなギャグのキレが良くテンポが良いのも特徴。
また、舞台選びも秀逸で、ラブコメに求められるイベントをよく抑えている。更に、シナリオの中に五つ子であることをきちんと活かしているのもこの作品ならではで良い。
キャラクター :★★★★★
本編の通り。
五つ子としてバランスの取れたキャラ設定になっているのが秀逸。
また、主人公の風太郎が苦労人であり、更に家族のために働くという芯がぶれないという嫌味のないキャラであることも高評価。
なお、三玖天下第一。
演出 :★★★☆☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★☆☆ アイデア:★★☆☆☆)
本編の通り。
音楽・作画は良いところもあるだけに惜しい。
アイデアについても全てがまずいわけでなく、次回予告パートの演出やEDのお洒落さなど、面白い点も多々あった。