2018年秋アニメ『SSSS.GRIDMAN』をネタバレ無しで感想・評価とあわせてレビューします。
おすすめ度:★★★☆☆(68点)
一言感想 :特撮のリブートという題材や恵まれたキャラデザと掴みは完璧だっただけに、後半の失速が惜しい作品
どんな作品『SSSS.GRIDMAN』
ツツジ台に住む高校1年生の響裕太は、ある日目覚めると記憶喪失になっていた。
そして裕太は古いパソコンに映る『ハイパーエージェント・グリッドマン』と出会う。
グリッドマンは使命を果たせと語りかけ、裕太はその言葉の意味と記憶を探し始める。
突然の事に戸惑いつつも、クラスメイトの内海将や宝多六花、新条アカネたちに助けられながら毎日を送る裕太だった。が、
その平穏な日々は、突然現れた怪獣によって容易く踏みつぶされた――。
○1993年から放送されたTVシリーズの特撮作品「電光超人グリッドマン」を原作とした作品
○今風なテンポの良いキャラクターの会話劇と迫力のある戦闘シーンの作画が良い作品
今作は、昔の特撮作品をアニメにアレンジするというチャレンジングな題材とキャッチーなキャラデザから、放送前から注目していた作品のひとつでした。
1~3話は期待通り、迫力のある戦闘シーンやBGMを巧みに使った演出などは非常に見応えがあり、作品の勢いを感じつつ見ることができました。
しかし、途中からは徐々に失速していったというのが個人的な印象です。その原因は大まかに言えば「視聴者と制作サイドの温度差」にあったように思います。
本レビューではそういった点に着目して作品を紹介していきたいと思います。
では、レビューの内容に入っていきます。
要素別評価(5段階)
カテゴリ:アクション
総評:★★★☆☆(68点)
シナリオ:★★☆☆☆
キャラクター :★★★☆☆
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★★★ アイデア:★★★★☆)
※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。
良かった点
まずは、本作品の良かった点からご紹介します。
特に良かった点は、「キャラクターの表面上の造形」と「要所要所の迫力のある演出」の2点です。
今風な「女子高生っぽさ」をアニメで再現した新鮮なキャラ造形
本作品のキャラデザはとても良かったと思います。
最近では新海誠監督の「君の名は」と似た、萌え系の可愛らしさは取り入れつつもある程度リアルさも失わないようにしている、幅広い人に受け入れられる良デザインだと思います。
特にヒロインの「宝多六花」はどこか垢抜けた感じのある今風な「女子高生っぽさ」を感じる良いキャラデザです。
更に、彼女の「女子高生っぽさ」はキャラデザ以外にもキャストの「宮本侑芽」さんの演技や言葉遣いにもあらわれています。どことなく投げやりな雰囲気の話し方をしつつも、芯はしっかりと持っているといった独特な現実さを持ったヒロインだと感じました。
他のキャラもアニメっぽく力みすぎたものではない、力の抜けたような喋り方や少し感情が不安定な感じを描くことで、どことなく現実感のあるキャラクターとなっているように思います。
それは、怪獣という非現実的な描写のある今作において、作品に共感を呼ぶための効果的な演出につながっていると感じました。
迫力のある戦闘描写と熱い台詞は「TRIGGER」ならでは
特撮をモチーフとした作品ということで、やはり戦闘描写にはこだわりを感じました。
静止画ではわかりにくいのですが「グリッドマン」が戦う姿は、中にモーションアクターの人が入っていそうな”独特な重量感”が上手く再現されており特撮を見ている気分になりました。更に、特撮では難しい「背景が派手に破壊される描写」や「大胆なカメラワーク」も駆使されており、まさにアニメと特撮の融和といった印象をうけました。
また、物語の終盤では本作品を制作したTRIGGERの過去作品である熱血系の名作「グレンラガン」を思わせるような熱い台詞もあり、勢いを感じるものとなっていました。
しかし、熱い台詞はそこまでの「前フリ」が描かれてこそ光るもの。それが足りないために、せっかくの熱い台詞にイマイチ乗り切れないのは本当に惜しいと思います。
気になった点
では、惜しかった点についてご紹介していきます。
この作品の惜しいところは「キャラの掘り下げ不足」と「作品における謎の明かし方に工夫がない」点にあると思います。
キャラの掘り下げ不足・・・「あれ、君たちそんなに仲良かったっけ?」感
今作ではメインキャラクター四人(響 裕太、内海 将、宝田 六花、新条アカネ)の関係性がひとつの作品の軸となっています。
当然、そういった関係性に言及するような熱い台詞も出てくるのですが、肝心の関係性を描くエピソードが薄いため、せっかくの熱い台詞が活きていないように感じました。
作中で一緒にいる時間は長いのですが、本当に心が通い合ったと思えるようなエピソードが足りていなかったように思います。
作品の”謎”の明かし方について
この作品には、序盤から色々な”謎”が出てきます。グリッドマンとは何者なのか、怪獣はどこから来たのか・・・などです。
私もそういった謎要素にワクワクしながら物語を見ていました。そして、中盤以降にそういった謎要素のネタバラシがされていくのですが・・・その明かし方が大分あっさりしています。
やはり、謎要素が明かされる瞬間は登場人物たちと一緒になって驚いたり悲しんだりしたいところなのですが、描写が大分淡白なため、ほとんど感情が動きませんでした。
世界観は作り込まれているだけに、とても惜しかったと思います。
結論:制作陣と視聴者の温度差
結論として、このような「キャラの掘り下げ不足」や「謎の明かし方の物足りなさ」は、「制作陣と視聴者の温度差」が原因のような気がします。
キャラの設定や世界の謎は制作陣の中ではすでに共有されている情報です。そういった既知の情報よりも制作陣が本当に描きたい、「特撮っぽさのある演出」や「山場となる場面の演出」が制作の中で優先されてしまった。
しかし、視聴者にとってそういったシーンは、キャラの掘り下げなどの「前フリ」があってこそ初めてのめりこめるシーンとなります。前フリなしで力の入ったシーンが提示されてしまっては少し白けてしまいます。
制作陣の描きたいものと視聴者が欲している情報のギャップにより作品への温度差が生まれてしまったように思えてなりません。
特に、その温度差が大きく出てしまったのは最終回。もう少し視聴者に配慮したものとなっていれば、作品はもう1段階上のクオリティとなったと思い、とても惜しいと感じます。
総評価・感想『SSSS.GRIDMAN』
・どことなく現実感がある独特なキャラ造形とバランスの良いキャラデザはキャラの魅力を引き立たせている
・特撮とアニメの融和が成功している迫力の戦闘シーンは必見
・世界の謎の明かし方やキャラの掘り下げなど、作品にのめり込ませるための工夫が今ひとつ足りなかったという印象
基礎力は高く、序盤の演出も良かっただけに惜しい作品でしたが、この作品の良いところであるキャラデザ等はもっと色々な他の作品でも見てみたいと思いました。
要素別評価(5段階)
カテゴリ:アクション
総評:★★★☆☆(68点)
シナリオ:★★☆☆☆
記事の通り。視聴者と制作陣間の情報量のギャップを埋めるための工夫が足りなかった。
キャラクター :★★★☆☆
キャラデザやキャラの掛け合いはとても良い。ネット配信されていたボイスドラマの掛け合いは起承転結がしっかりしつつ、ギャグのキレも良くキャラを好きになるきっかけとなる出来だった。
一方で、キャラクターの感情の掘り下げや関係性の深化といった描写は乏しく、「展開にキャラが動かされている」という印象を持った。
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★★★ アイデア:★★★★☆)
作画やアイデアは記事の通り。
音楽としては、時々使用されるOPはワクワク感があってとても良かったが、多用されすぎな印象も持った。良い楽曲だからこそ大事に使ってほしかった。