2019年冬アニメ『ケムリクサ』をネタバレ無しで感想・評価とあわせてレビューします。
おすすめ度:★★★★☆(69点)
一言感想 :「世界の謎」とその明かし方に痺れる、演出アイデアの光る作品。
概要・作品紹介『ケムリクサ』
あらすじ
薄暗く赤い霧が立ち込め、廃墟が広がる世界。りん、りつ、りなたち姉妹は赤虫(あかむし)と戦いながら水を探して生きていた。ある日、姉妹は記憶喪失の青年わかばと出会う。りんたちはわかばがムシではないかと疑いつつも行動を共にする。
○「けものフレンズ」などで知られるたつき監督のオリジナル作品。
○謎めいた異世界で赤虫と呼ばれる機械のような生物と戦う少女たちの旅と世界の謎を描く、バトルが多めの作品。
○作品に散りばめられた謎を、見る人を引き込む意外性のある演出とともに回収していく。
では、内容に入っていきます。
この作品の第一印象としては、CGはやや地味な仕上がり、動きも固め、画面が基本的に暗い・・・。
総じて、良作になる!という印象はあまり受けませんでした。
しかし、作品を見ていく中で、主に中盤くらいからでしょうか。ぐっと作品に引き込んでいく演出の数々が見えてきました。
そして、12話+12.1話を見終わった頃にはかなり満足感のある作品だと思いました。
今回のレビューではそんな、見る人を引きつけ、驚きをもたらす演出というこの作品の魅力を中心に「ケムリクサ」を紹介します。
評価(5段階・要素別)
カテゴリ:バトル・冒険・セカイ系
総評:★★★☆☆(69点)
シナリオ:★★★☆☆
キャラクター :★★★☆☆
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★☆☆☆ アイデア:★★★★★)
※要素別評価の理由は、ページ下部に記載しています。
◎意外性のあるギミックがもたらす驚き
この作品の最大の魅力は、やはり随所に仕込まれたギミックだと思います。
紹介すればネタバレになってしまうため詳細は記載できませんが・・・。
ただ、一言で言えば、「作品に仕込まれた謎の回収が上手い」ということです。
普通に謎を回収するだけでは、どんなに巧みな設定でも、驚きはあまり生まれませんん。
しかしこの作品では、思わず「この設定はそういうことだったのか」、「その設定をここでそう表現してくるのか」と呟いてしまうような、上手いギミックと共に謎を回収していく。これに強く引き込まれました。
特に物語終盤は必見です。
◎勘所を押さえた演出の数々
次の魅力として、よく勘所を押さえた演出がされているという点を上げたいと思います。
いわゆる、そのジャンルの鉄板・王道と呼ばれる演出がうまく使われているということです。
例えばバトル漫画で言えば、「上手く相手の特性を利用して勝つ」とか「かつてのライバルが味方になった」とかそういうものです。
この作品では、バトル漫画の王道や、ギャルゲーの王道、ヒューマンモノの王道など、様々なジャンルの王道ネタ=エッセンスを上手く抽出し、作品に組み込んでいると感じました。
既視感はあるものの、やっぱり王道は良いなぁと改めて思うシーンがいくつもあったのが特徴だと思います。
△気になった点について
結論としては、華がないという点です。
この作品は、上記のように金のかからないところ、アイデア勝負なところは非常に良く出来ていると思います。
その一方で、コストの掛かる部分。
具体的には作画分野は少し出力不足だと思いました。
決めシーンとなるバトルシーンでの動きは少ない。
傷によるモデルへの汚しが出来ていないため、相手の攻撃によるダメージをどの程度負ったのかもあまり伝わってこない。
ケムリクサを用いた攻撃もエフェクトが掛けれないため、派手さがない。
レイアウトの目新しさや日常芝居の独特な動きなど、細やかな部分は面白いのですが、分かりやすい派手な部分はどうしても足りていないと感じました。
ここが良くなり、山場のシーンが強く印象に残るようになれば傑作になると思います。
総評と感想
・意外性のあるギミックと共に世界の謎を回収していく、中盤~終盤は必見。
・色々なジャンルの王道ネタを効果的に組み込むことで、一つ一つのエピソードの印象を強めていた。
・全体として画面に華がない。何度も見返したくなる華のあるシーンは少ない。
良いところと惜しいところがはっきりしている作品だと感じました。
2019年秋の「SSSS.GRIDMAN」は「ケムリクサ」と正反対で世界の謎の回収が雑で絵に華があったので、2つの良いところが混ざりあえばすごい作品が生まれるのでは・・・なんて思いながら見ていました。
ともあれ、「けものフレンズ」に続いて見応えのある作品を作ってくれた、たつき監督に感謝です。次の作品が楽しみです。
参考:評価の理由
カテゴリ:バトル・冒険・セカイ系
総評:★★★☆☆(69点)
シナリオ:★★★☆☆
物語の軸がしっかりとしていた。また、終盤にきちんと山場を持ってきてた点も高評価。
上記のようにシナリオ構成は抜群の出来だが、1話単位の脚本という点では、会話が全体的に地味、強く心に残るセリフがあまりないなど、気になる点が多かった。
キャラクター :★★★☆☆
特徴はよくついているものの、それを活かしたシーンづくりという点がイマイチなかったように思う。
キャラ造形の部分では、ヒロインのリンであればツンデレなど、一面的なキャラ付けで勝負しているフシがあり、二面性によるギャップやキャラの価値観の深掘りなど、もっと踏み込める要素があるように思えた。
演出 :★★★★☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★☆☆☆ アイデア:★★★★★)
音楽は「日常」を示すBGMと「危機」 を示すBGMの使い分けが上手く、雰囲気を音楽により管理できていた。
絵・アイデア面は本記事の通り。