2018年9月1日公開、アニメ映画『君の膵臓をたべたい』をネタバレ無しでレビューします。
一言感想 :開始3分間の伏線を回収していくシナリオは見事も、映像化の手腕に課題の残る惜しい作品に・・・
要素別評価(5段階)
カテゴリ:青春モノ・恋愛
総評:★★★☆☆(61点・佳作)
シナリオ:★★★★☆
キャラクター :★★★☆☆
演出 :★★★☆☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★☆☆ アイデア:★★☆☆☆)
「キミスイ」のここは良かった
シナリオのギミックについて
この作品の魅力は、シナリオのギミックにあると感じました。
衝撃的な始まり方をする、冒頭3分間に散りばめられた伏線の回収方法。これについては、納得すると共に、キミスイの設定だからこそという独創性があり、秀逸です。ネタバレとなるため、一切記載できないのが残念です。
メインヒロイン「山内咲良」が可愛い
可愛かったです!元気+明るい+人懐こい、天真爛漫なキャラクター。
序盤こそ、主人公との距離がいきなり近すぎるため、少し違和感がありましたが・・・彼女の人となりがわかり、また、距離が縮まってくる物語の中盤以降は、天真爛漫さと設定の重さがあわさり、人間味があり魅力的でした。
「キミスイ」のここは残念
全編にわたって見られる”アイデアの不足”
山場・日常シーン共に、演出に関するアイデア不足を感じました。
画面のレイアウト・BGM・キャラクターの動きや表情、全てにわたって”劣化実写”というような当たり障りのない、地味な描写が続き残念。
アニメというよりは実写風な描写が続きますが、それであればアニメ映画にするメリットが無いのでは・・・山場となるシーンのモチーフそのものは悪くないのですが、その描き方については、もう少し目を引くアイデアやアニメだからこそできる手法を詰め込んでほしかったです。
更に、大きくマイナスなのは終盤の肝となるシーン。原作が小説のため、モノローグ主導で展開されるシーンなのですが、この描き方が非常に良くない。メディアミックス時のモノローグの処理は、一つの見せ場だと思うのですが、作風を無視した突然の方向転換で感傷がかき消され、個人的にとても残念でした。
主人公の声はかっこいいのだが・・・
俳優「高杉真宙」さんが主人公「僕」のCVを務めています。とてもかっこいい低めの声で演じていて、声質は文句なしです。感情を表に出さない主人公ともマッチしています。
ただ、あまりにも抑揚がなさすぎます。また、感情を出すシーンでは突然感情を出しすぎてこっちが驚きます。0か1かというデジタルな演技となっており、主人公の魅力を引き出すレベルには至っていなかったと思います。元々、抑揚のないキャラは難しいとは思うのですが、残念です。
”フリ”が足りないことによる全体的な”突然感”
主人公とヒロインの距離の縮まり方、その他周囲のサブキャラクターの感情の動き、山場となるシーンへの入り方・・・etc
ほぼ全てにおいて、そのシーン・展開に至るための”フリ”が足りないように感じました。なので、折角のシーンも違和感が先行してしまい、上手く没入できません。山場となるシーンのモチーフそのものは甘酸っぱく、恋愛モノに相応しい良い出来なだけに、もったいなかったなぁと思います。
総評
・この作品ならではと言える”シナリオのギミック”は一見の価値あり!
・ヒロインと主人公の距離の縮まり方は青春恋愛映画らしい甘酸っぱさがあり、良い。そして、ヒロインはとても可愛い。
・ただし、全体的に薄味な作画・BGMによる演出は物足りない。インパクトのあるシーンはあまりなく、鑑賞後、心に残る充実感があるかと言われると・・・惜しいといった感想に落ち着く。
参考:要素別評価の理由
カテゴリ:青春モノ・恋愛
総評:★★★☆☆(59点・佳作)
シナリオ:★★★★☆
この作品の肝であるシナリオのギミックは納得感と独創性があり秀逸。青春恋愛映画ならではといえる甘酸っぱさのあるシーン作りも◎。
ただし、露骨にインパクトだけを狙ったシーンがあったり、キャラの感情の動きに突然感があったりなど、物語を動かすことが前に出過ぎな所は惜しい。
そして、作品のテーマである「人との関わり方」についても、2つの概念を対立させ、昇華させるのではなく、一方の概念を押し付けるだけとなっていて、個人的には回答が浅く感じました。
キャラクター :★★★☆☆
上記はヒロインの咲良があってこその評価。咲良は上述の通り可愛く良いキャラ。
逆に言うと、それ以外のキャラクターは設定・描写共に紋切り型ばかりで意外性なし。性格そのものもあまり好ましいところはなく、微妙。
演出 :★★★☆☆
(音楽 :★★★☆☆ 絵 :★★★☆☆ アイデア:★★☆☆☆)
音楽・絵作りは地味ではあるものの手が抜かれているわけではなく、品質は良い。特に、主題歌は作品にもあっていて良い。だからこそ、使われているのがEDとしてだけなのが惜しい。インストをBGMで使ったり、挿入歌としても使っていればシーンのインパクトが上がったのでは・・・
絵で惜しい点としては表情に違和感のあるシーンが多かった印象。好意を示すシーンで少し睨んでるように見えてたり、ややちぐはぐ。
何より残念だったのは、上述の通り、アニメでこのシナリオを描くにあたってのアイデアが感じられないこと。劣化実写となってしまっているのはアニメ好きとしては残念。
手が抜かれているわけではないのですが、アニメ映画だからこそ出来る、という点はあまりない惜しい作品といった印象でした。以上です。