【ネタバレ無し】良作アニメ映画レビュー『ペンギン・ハイウェイ』感想・評価(82点)

【ネタバレ無し】良作アニメ映画レビュー『ペンギン・ハイウェイ』感想・評価(82点)

2018年8月17日公開、アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』のレビューです。

 

一言感想 :天才小学生の視点から描かれる「世界の不思議」と「一夏の青春」は、夏映画に相応しく瑞々しい!!

 

どんな作品?

主人公の小学生「アオヤマ君」と個性豊かなキャラクター達による、街に突如として現れた無数の「ペンギン」に関する謎を追っていく、一夏の青春冒険作品。

 


「夜は短し歩けよ乙女」、「四畳半神話体系」などで知られる森見 登美彦さんの小説を原作とした作品。森見さんが描く作品の特徴である、「緻密に計算された小気味の良いキャラの掛け合い」と「身近にこんな人がいたら毎日が楽しくなりそうな人間味に溢れた魅力的なキャラクター」という要素がしっかりとつまっています。


小学生の頃の夏。誰もが経験したことのある夏休みの「わくわく感」や、夏の終わりが近づくにつれて感じる「寂寥感」。

そんな、どこか懐かしい「夏休みの空気感」が、アイデアがしっかりつまった演出やシナリオ、主人公の小学生「アオヤマ君」の少し背伸びしつつも無邪気で素直な視点により描かれ、見る人にしっかりと伝わってくる、夏映画に相応しい作品です。


売れっ子作家の一般小説が原作であること。小学生の一夏の成長という多くの人に響きやすいテーマ。そして、クセの少ないキャラクターデザイン、アニメ的な属性の盛り方を避けた現実の延長線上にいつつも親しみやすいキャラの個性、過剰な演技を控えた声優さんの演技。

どの要素をとっても普段アニメ映画をあまり見ない人でも作品に入りやすい、間口の広い作品だと思います。

 

おすすめしたい人

○夏らしい空気感のある映画を見たい人

○懐かしさを感じる小学生の頃の夏休みを思い出してみたい人

○優しいお姉さんに甘えてみたい人

○魅力的なキャラクターと、見る人を飽きさせないしっかりとした演出がつまった、良いアニメ映画を見たい人

 

要素別評価(5段階)

カテゴリ:青春モノ・ジュブナイル

総評:★★★★☆(82点・良作)


シナリオ:★★★☆☆ ※考察が好きな場合は+★×1

キャラクター :★★★★★

演出 :★★★★★

(音楽 :★★★★☆ 絵 :★★★★★ アイデア:★★★★★)

夏休み感:★★★★★

 

「ペンギンハイウェイ」のここが凄い!

見る人を飽きさせず、どんどん作品に引き込んでいく演出の巧みさ

この作品の最大の魅力は、ずばり「演出力」にあると感じました。

では、演出の良い点を2つ紹介します。

 

「夏休み」を起点に見る人を作品に引き込んでいく巧みさ

この作品は、色々なシチュエーションで「夏休み感」を見る人に伝えてくれます。

それは、友達と行ったことのない場所を冒険する時のわくわく感だったり、好きな人と夜に語らう甘酸っぱさだったり、普段出歩くことの出来ない夜に行われる夏祭りだったり、様々です。

 

そんな、「夏休みならではのシチュエーション」を描くことで、見る人に「こんな夏休みがあったなぁ」、「こんな夏休みを過ごしてみたかった」と思わせ、作中の登場人物への共感を呼び起こしてくれます。その共感が、更に、物語中盤以降の目まぐるしい展開でもこの登場人達と一緒に作品について行きたくなる、作品への没入感に繋がっていくと思います。

 

山場の作るタイミングと心のこもったシーン作り

人の集中力が持つのは30分が限界という説があります。そのためか、映画を見ていても、30分おきくらいに、少しだれてしまうタイミングが訪れます。

この作品では、そういった見る人が少しダレてしまうタイミングで、しっかりと山場となる、作品へ引き込んでいくシーンを作ってくれているため、飽きが来ません

更に、その山場となるシーンの描き方一つ一つが素晴らしい

陰影をしっかりとつけてみる、あえて双眼鏡を通した視点にしてみる、カメラを大胆に動かしてみる、ペンギンを大量に投入してみる・・・etc。

山場となるどのシーンを見ても、しっかりと心に残してやるぞ、という意気込みを感じる程のアイデア・熱量がつまっており楽しい画面作りがされていると思いました。特に、終盤の物語最大の山場となるペンギンたちが大活躍するこの作品ならではというシーンの勢いと熱量は必見です。

この演出力は、PVでも発揮されていますので、興味のある方はPVをご覧下さい。

 

 

「森見登美彦」作品ならではといったキャラクターの魅力について

この作品の魅力として、「演出力」と並んで外せないのは、やはりキャラクターの魅力です

そんなキャラクター達の魅力を紹介します。

 

現実にひと味加えたことで発揮される、親しみやすさを持ったキャラクター達

アニメ作品のキャラ作りとしてよくあるのは、クセの強い属性をいくつかキャラにつけ、それを作中でいじり、笑いを生む。そこからキャラへの親しみを作っていくというものです。

このやり方は、効果的ではあるのですが、そもそも、そういったクセの強い属性に抵抗がある人、つまりアニメ的な表現に慣れていない人にはなかなか受け入れられにくいです。

 

一方、この作品に登場するキャラの良いところは、親しみやすさの源泉がどこか現実の延長線上にあるという点が上げられます。

 

例えば主人公のアオヤマ君は、小学生にもかかわらず、会話の中で、ウィットに富んだ少し背伸びした台詞を、恥ずかしがらずに誰に対してもまっすぐに伝えていきます。それは、彼自身が常に立派な大人になってやるという信念を持って日々チェスやら相対性理論やら、たくさんの勉強をしながら生きているからです。こんな子が親戚にいたらきっと楽しい。

 

そんな、周りにこういう人がいたら面白いだろうな、と感じさせてくれる、地に足のついたキャラクターは幅広い人に受け入れられる親しみやすさをもっていると感じました。

 

また、キャラクターの役割分担や配置も巧みです。例えば、作中で小学生同士の片思いがすれ違う構図には可笑しみを感じますし、変わり者の息子を優しく導いていくお父さんと暖かく見守るお母さんなど、キャラ同士の関係性も楽しくかつ親しみやすさを感じることの出来る、良い形になっていると思います。

 

物語の鍵を握る「お姉さん」について

小学生から見た、近所にすむ面倒見の良い美人な大人のお姉さんとは・・・この世の謎といっても過言ではないほど、どうしようもなく興味がわいてしまう存在です。

この作品では、そんな、「この世の謎」を見事に「お姉さん」というキャラクターで描ききっています

飄々としながらも面倒見良く主人公の毎日に寄り添ってくれ、時には大人っぽく主人公をたしなめ、時には無邪気な子供のように一緒になって遊んでくれる。

そんな飾らないところが魅力的なお姉さんでありながら、作品の中では、ミステリアスな要素も描かれていく。主人公がお姉さんが気になってしょうがないのも大きく頷いてしまう存在感を持っていました。

 

芸能人声優さんの演技について

「ペンギン・ハイウェイ」では、主人公の「アオヤマ君」役を若手女優でアニメ声優初経験となる「北 香那」さん、ヒロインの「お姉さん」役を女優の「蒼井 優」さんが務めるなど、複数人、芸能人声優さんが起用されています。

この映画では、この起用はズバリ、はまっていると感じました。

特に、主人公の「アオヤマ君」は、これが初とは思えないくらい自然な演技となっており、作品に溶け込んでいました。「お姉さん」についても、少しクセのある声色ですが、これが作品を見続けていく中で存在感を発揮し、むしろこちらを引き込む力を持っていたと思います。

 

賛否両論かも・・・と感じる箇所

シナリオが少し気になりました。

テーマ自体は、「主人公の一夏の成長」を首尾一貫して描ききっており、共感を覚えます。また、夏休みならではのイベントの描き方、謎がだんだんと明らかになっていく面白さ、期待したタイミングで期待通りの活躍をしてくれるキャラクターの動かし方など、シナリオ全体としてはまとまった良い出来だと思います。

一方で、中盤以降、とても大胆に作品の謎が明らかになっていきますが、その結末になるほど・・・と感じつつも、それは少し飛躍しすぎ、伏線あったっけ?と感じる所もありました

ただ、それについては、見た人があとから考察を行っていけば、ある程度解消できると思っているので、考察好きな方にはその謎を含めてこの作品の魅力に繋がっていくのではないでしょうか。

 

総評

・「周りにいたらきっと楽しい」と思わせてくれる親しみやすいキャラクター達が展開する、「世界の謎に迫る」一夏の冒険は心に響く。

・妥協なくアイデアが注ぎ込まれたシーンの数々は強いインパクト有り!また、物語終盤のペンギンたちが縦横無尽に動き回るこの作品ならではのシーンは必見

・キャラデザ、シナリオ、テーマ、声優さんの演技など、どれをとってもクセが強すぎない、人にお勧めしやすい作品。

 

PVを見たときから気になってはいましたが、実際に見に行くまで、これほど完成度の高い作品を見れるとは思っていませんでした。アニメファンにも、そうでない人にも自信を持っておすすめできる良作映画だと思います。

アニメカテゴリの最新記事